第112話 五人の合議
御番医の合議は、三日続いた。
カヤは「外の目」として陪席し、所見を求められて、用意してきた紙を読み上げた。
「道は三つです。一、灰の餌を続けて、自然に尽きるのを待つ。火が消えたあと、空いた嚢に別の火を入れ直す──ただし、尽き方は選べません。最後の日々に株が暴れれば、弱った体がもちません。二、何もせず、最後まで支える。四百年の火と共に、アサヒ様を看取る。三──」
カヤは、一度息を入れた。
「三。継ぎ火です。尽きかけた王家の株を見極めて、強い外の株に入れ替える。アサヒ様は、確実に生きます」
「それは」御番医の一人が、低く言った。「四百年の火を、こちらの手で終わらせるということだぞ」
「はい」カヤは、逃げずに言った。「そういうことです」
合議は割れた。一は博打ち、二は見殺し、三は国の柱を折る。誰も、どの判も押せなかった。
責める気には、なれなかった。五人はそれぞれに誠実で、誠実であるほど、動けなかった。四百年の誓いを守る誠実と、目の前の竜を守る誠実が、同じ胸の中で押し合っている。カヤにそれが見えるのは、外の目だからだ。外の目は、そのためにある。
帰り際、スバルが石段まで送ってきた。
「揉めたときは、ちゃんと揉めよう──前に、そう言ったな」御番医は言った。「……私は、三に反対だ。今は、まだ」
「はい。存分に言い合いましょう」カヤは言った。「時間は、冬までですけど」




