第105話 帰る竜
春、返還と除隊が始まった。
徴用を解かれた竜たちが、街道を南へ下っていく。来たときと同じ道を、来たときより減った数で。
カヤたちは、最後の仕事として、帰る竜の全頭に「除隊検診」を行った。傷の経過。火の状態。今後の注意。一頭ごとに書き付けを作り、飼い主に渡す紙と、団に残す控えを取った。
湯気班が軍火を抜いた竜は、通算五十三頭になっていた。全頭が、並の火で、生きて帰る。
「五十三頭」ハギが、控えの束を数え直して言った。「先生。これ、多いんですか。少ないんですか」
「植えられたのは、二百頭を超える」カヤは言った。「だから、少ない。……でも、四年前はゼロだった。だから、多い」
「どっちなんですか」
「両方覚えておくの」カヤは、束を鞄に仕舞った。「少ないと思わないと、次の手を探さなくなる。多いと思わないと、続かなくなる」
カルナ砦を発つ日、カジと、司令代行と、竜兵たちが門まで見送りに出た。
ソラは、荷車の上の籠に収まった。ゲンが牽き、ハギが手綱を持つ。灰色の仔竜は、南へ向かう道中、初めて見るものすべてに、きゅうきゅうと鳴いた。
王都まで、十二日の道だった。
道中、ソラは籠から首を出して、南へ下る竜の列を飽きずに眺めた。列の竜たちも、時々、荷車の上の灰色の仔を見た。帰る竜と、初めて世界を見る仔と。街道の春は、そのどちらにも同じ速さで、芽を出し始めていた。




