第102話 二重の火
処置は、賭けの連続だった。
軍火だけなら、燃やし切らせて継げばいい。だが十七号の嚢では、軍火の下に王家の株が敷かれていた。軍火を燃やし切らせる灰の餌は、王家の株も一緒に煽ってしまう。二つの火を同時に強くすれば、五月の仔竜の体は、一晩ももたない。
カヤは、三日、手控えとシラスの手帖を往復した。
答えは、手帖の古い頁にあった。〈株は、群れの弱った側から燃え尽きる〉。二つの群れが争っているなら──弱いほうから、先に落ちる。
「軍火のほうが強い。なら、餌を絞ります」カヤは言った。「燃やし切らせるんじゃなく、飢えさせる。争ってる二つの群れを、両方、飢えさせる。先に落ちるのは、たぶん、土台にされて弱ってる王家の株。軍火が勝ち残って、単独になったところを──いつもの逆継ぎ火で、燃やし切らせて、継ぐ」
「王家の株を、見殺しにするのか」カジが低く訊いた。
「はい」カヤは、迷いを見せずに言った。迷いは、三日ぶん、もう使い切っていた。「あたしが救うのは、株じゃなくて、この仔です」
処置は、九日かかった。
餌を絞り、二重の熱が一重に細るのを待ち、灰の湯気で軍火を焼き切らせ、ミゾレの株を植えた。
十日目の朝、仔竜の喉に、覚えのある熱が立った。強すぎず、細すぎない、並の火の熱だった。
仔竜は、初めて自分の足で立ち、天幕の外の空を見上げて、きゅう、と鳴いた。
九日の間、天幕には交代の番が絶えなかった。カヤが数え、カジが支え、ハギが記録し、ゲンが夜ごと隣に伏せた。誰も口にしなかったが、全員が同じことを考えていた。一号から十六号には、この天幕がなかった。だからこの十七号だけは、と。




