211 今日のはマジでいい仕事をしてくれた
チーズケーキにフォークを差し込んでちょっとだけ考えを巡らせちゃう。だってね、あんなチャラい行動をしてきたのに、平然としてるレオさんはヤバいんだもん。ってか、レオさんはチャラくて軽く見えちゃってるけど、実はかなりスゴイ人、なんだろうな。
レオさんは変な所で凄く尖った能力を持ってるから、びっくりしちゃうんだよね。主にエロ系やチャラい系っぽく思えちゃうような体術が凄いし、何気に凄い器用で何でもサラッとこなしそう。そして、異常に突出している話術や変な情報網みたいに、完璧なネロより特化してる部分もあったりするから、ヤバい。
更には、ギャップがヤバい。脳筋だと思っていたけど、実は頭がいいっぽいし。エロくてチャラくて軽いだけの人って思っていたけど、実は真面目な時もあるし。雑だと思ってたけど、実はマメだったりする。相反する属性が混在し過ぎていて、カオスになってる感があるけど、そこがレオさんの良さなんだよな。
ネロは流石だよな、こんな人を恋人にしちゃうんだもん。見る目があり過ぎる。全てが完璧で、尚且つ、先見の明まであるとか。ホント、ネロは天に全てを与えられた人だよな。天に見放された俺とは真逆過ぎて、最早、羨ましさを覚える事すらない。ヤバいね。
レオさんのギャップに思いを馳せていたら、レオさんが肩を抱き寄せて頭を撫でてきた。そして、愛し気に優しいキスを頬や髪や首に沢山してくる。えっとね、うん、超チャラい。でもね、キス魔のレオさんに驚かなくなってる自分が怖い。慣れって怖いね。
「お前な。こんな二人でまったりな時にネロの事を考えるなよ。」
レオさんの頭をわしゃわしゃっと撫でて、それは違うよって優しく言い直しあげる。だってね、ネロの事を考えたのなんて一瞬で、レオさんの事しか考えてなかったし。今回のレオさんの勘はポンコツ気味で、詳細までは分からない系だったみたいだ。ただ、ネロを感知するセンサーだけは尖っている事が分かった。
「俺の事って。失礼な事を考えてただろ。」
レオさんがキスをやめて、顔を上げて覗き込んできた。そして、拗ねた口調で文句を続けるレオさんの頬に顔を近付ける。そのまま、宥める意味と慰める意味、両方の意味でレオさんの頬に唇を付けてみた。
だってね、やっぱり詳細は分かってなさそうだったんだもん。ちょっとだけ、レオさんのマイナス面を考えたのは事実だよ。でも、それはレオさんの魅力の一つだって考えの一部だったのに。でも、レオさんが読み取ったのは悪口部分。拗ねちゃうのは当然だよね。だから、お詫びも兼ねたキスをしちゃった。
レオさんはびっくりしたらしく、目を丸くしている。耳はぴんと立って、口は半開き。その顔が可愛くてふふってなっちゃう。ってかね、レオさんの質問自体が可愛かったんだよ。だから、拗ねたレオさんが可愛く見えちゃったのかも。
「レオさんがネロと同じ事を言ったから、びっくりしちゃった。」
「同じ事って何を言ったの。」
嬉しい気持ちを共有して欲しくて、真実を教えちゃう。レオさんが拗ねた口調のままで聞き返してきたから、もう一度レオさんの頬にキスをしてみる。顔を離して、ニコってすると、レオさんは嬉しそうに目を細めてくれた。機嫌は直ってくれたかな。
よくよく考えると、レオさんの拗ねた言葉は、ネロと全く同じ発言だったんだよね。ソコに気が付いてしまったのだよ。ヤバいよね、可愛過ぎるでしょ。ネロはレオさんの事を考えるなって言って、レオさんはネロの事を考えるな、だよ。もうね、可愛過ぎてヤバい。
一瞬、レオさんはネロの真似をしてるのかなって思っちゃったけど、レオさんの反応を見る限りでは偶々っぽい。まぁ、あの時、あの場にレオさんはいなかったから、真似っこなんてできる訳がなかった。偶々で同じ事を言うって凄いね。愛な気がする。
「レオさんの事を考えるな、って言われた。」
「ネロがそんな事を言ったのか?」
二人の絆の強さが確認できる事態が嬉しくて、ニコニコ笑顔でレオさんの質問に答えてあげる。そうしたら、レオさんの眉が寄ってしまった。そして、低い声で確認を取ってくる。あらら、また、ご機嫌が低下してしまった模様。目付きが鋭くて超怖いんですけど。
ふと思いついて、レオさんの首に腕を絡めて体を持ち上げてみる。レオさんは当然の如く、俺の背中に腕を回して抱き留める形で支えてくれた。ナチュラルにスッと抱き留めるとか、レオさんはホント、ヤバいですね。
顔を寄せてレオさんの眉間にキスをしてみる。キス魔のレオさんの真似をして、唇を何回か付けて離してを繰り返した後で顔を離す。俺の作戦は成功したらしく、レオさんの目尻が下がって嬉しそうな顔になってくれた。
嬉しそうって言葉では足りないね、でれでれなパパさんって表現の方が正しかった。レオさんは子供のキスに弱いのは見破ってるからね。レオさんの攻略は、実はもうかなり進んでるんですよ。俺の手にかかれば、レオさんなんて手の上で転がせる、一歩手前まできてる、かもしれない。
内心でふふんってドヤっていたら、レオさんの視線が鋭くなった事に気が付いてしまった。うん、あのね、そんなに冷たく目を細めたら怖いから。そんな睨む事ないじゃん、気の弱い子なら号泣しちゃう怖さだよ。
ホント、レオさんは怖いですね。そんな顔をしたらダメなんだよ。笑顔の方がレオさんには似合うんだよ。心の声が届いてると信じて、ニコっとしてみる。レオさんもニコって返してくれた。でもね、めっちゃこわ、目が笑ってないんだもん。器用な笑い方ができるレオさんは、ある意味スゴイ。まぁいい、話を戻そう。
「そう、言ったの。で、考えを読まれたと思って、観察しないって約束したのにって文句を言っちゃった。そしたら、ネロが観察じゃなくて勘って言い訳をしてきたんだよ。だから、その勘を証明する為に予言をして貰ったの。でも、凄かったよね、レオさんの行動が全部的中してたんだもん。」
「あ~、成る程ね。それであれだったのか。納得した。ネロが俺の行動を止めなかったのは、その予言に縛られてたって訳か。不可解だったけど、漸く理解できた。」
レオさんの首から腕を離して、座り直し、ネロの発言とその後をゆっくりと説明してみる。レオさんは楽しそうに、ふむふむって頷きながら聞いてくれて、納得してくれたっぽい。でもね、予言に縛られるって何の事なんだろう。小首を傾げて詳しく教えてって主張してみた。
レオさんは嬉しそうに目を細めて頬を撫でてくれた。そして、そのまま顔を寄せて頬へのキスを始めちゃって、答えてくれない。何回もキスをしてくるレオさんの顔を挟んで止めて、早く話してって目で訴えてみた。
「ネロが冷静な顔で俺の行動を見てたから、気になってたんだよ。時々刺すような視線にゾクっときたけど、止めるまではしなかったから不思議だったって事。」
「あ~、確かにテンション高過ぎてヤバかったのに、レオさんを止めなかったね。」
俺の髪を指で摘まんで弄びながら、レオさんが漸く口を開いてくれた。成る程。確かにあのテンションのレオさんの悪乗りなら、直ぐにネロからのストップがかかりそうな事案だった気もする。
ネロ的にはレオさんの行動を全部把握していたから、止めるまでもない事って判断だったのか。セクハラまがいの事案だったのに、ネロが止めてくれなかったのは、そういう事だったんだね。あんなにイヤらしい事をされちゃったのに、止めてくれなかったんだもん。成る程ね~。
「お前な。俺が読む可能性を考慮しての、その思考なのか?」
「え、あ、ん~。そんな事ないよ。レオさんは全然読めてなくて、えっと、あ。不正解だったから平気だよ。」
レオさんの突っ込みでギクってなっちゃった。本心じゃないんだよ。ニコニコ笑顔を頑張って作りながら、ちゃんと言い繕ってこれで一安心。えっと、あ~、そうなの。あれなの、今のはレオさんを試す為の思考であって、レオさんが読んだのはダミーの方だからね。全然平気だったの。
「へぇ。」
レオさんがスッと目を細めたのが見える。そして、低い声で呟いたのが聞こえる。口元だけ笑みを浮かべた、冷ややかな目付き。えっとね、その感じは怖いから。ゾクってなるヤツなの。うん、こんな時は誤魔化しの一手を実行して、速やかに事態を打開してみようかな。
レオさんの首に腕を絡めて体を持ち上げたのと同時に、レオさんの片眉が上ったのが見えた。あのね、背中をしっかりと抱えて抱き留めてくれるのは嬉しいんだけど、引き寄せなくてもいいと思うんだ。めっちゃ近いから、ってか、密着し過ぎだから。そして、その冷めた視線がヤバい。そんな鋭い視線は良くないと思うの。
レオさんの迫力に負けて、誤魔化しを断念する事にする。レオさんの首から手を離すと、レオさんも腕をパッと離してくれた。大人しく座り直すと、レオさんが頭をポンポンと撫でてくれた。残念でした、って言ってる感じだ。あ~あ、レオさんの弱点を攻める作戦だったのに、失敗しちゃった。悲しい。
「で、ネロといる時に俺の事を考えてくれたの?」
しょぼんとしていたら、レオさんがさっきの話題に戻してきた。メチャクチャ嬉しそうな笑顔になってるんだけど、どしたの。キラキラのエフェクトが足されてる錯覚がヤバい。ってか、緑の猫目がキラキラしてるから、そのせいなのかも。
「ん~、考えてたのかな。どうだろ、よく覚えてない。でも、ネロが言ったって事は考えてたのかも。」
「そっか。」
ちょっと思い出してみたけど、当時、俺は何を考えていたのだろうか。でも、ネロに言われたって事はそうなんだろうな。正直に、覚えてない事とネロの言葉的にはそうかもって答えてみる。レオさんは嬉しそうに目を細めて、満足そうに相槌を打ってくれた。
レオさんが眩し過ぎる程のいい笑顔になってる事から、分かってしまった。どうやら、レオさんがいない状況で、ネロがレオさんの話題を口にした事実が嬉しいらしい。そうだよね、分かります。自分がいない時も、ネロが自分を思っていてくれてるとか、そりゃ嬉しいよね。
そして、レオさんは俺がネロの事をちょっと考えただけなのに、嫉妬しちゃった。これは、例え空想や想像の中だとしても、他人がネロを思うだけで嫌。俺のネロを勝手に想像に出演させるんじゃねぇ。ネロは俺の物。的な心理が働いたんだと思うんだよ。
おまけに、ネロが同じ事を言った、要するに、自分と同じ感覚での嫉妬をした事を喜んでる、って事だ。ネロもあの時、俺がレオさんの事を考えたから、レオさんを盗られちゃった感覚になっちゃったのかな。きっとそうだよね。レオさんのおかげで色々と理解できちゃった。
じゃあ、ネロにも是非教えてあげないとだ。レオさんがネロと同じ事を言ってきたんだよって。ネロとレオさんは似てるから、きっと今のレオさんみたいに喜んでくれそう。とは言っても、まぁ、ネロの事だから、レオさん程の喜びは表現してくれないかもだけどね。
「まぁ、これが琥珀の可愛いトコロだよな。」
溜息交じりに小さく呟く声が聞こえて、レオさんに目を向けてみた。レオさんはニッコリ優しい笑顔で頭を撫でてくれる。俺の可愛いトコロ、って、何だろう。
じっと見つめて答えを求めてみたけど、レオさんはニコニコ笑顔で髪を撫でてくれるだけで口を開かない。まぁ、いいか。可愛いはレオさんの口癖みたいなものだから、きっと深い意味はない筈。
お茶を一口飲んで、デザートの残りを楽しむ事にする。見守ってくれるレオさんの温かな視線を感じながら、ゆっくりとチーズケーキを楽しむ。ねっとり濃厚なチーズケーキは食べ進んでも、美味しい感動が持続する気がする。
チーズケーキの合間にシュークリームを食べたら、生クリームがはみ出て大変な事になっちゃった。顔と指に生クリームが広がって大惨事ですよ。フードを外して食べて大正解だった。指に付いた生クリームを舐め取って、口の端に付いたのは舌で頑張って舐め取って。何とかピンチを脱却できた。
手を洗う為に立ち上がったら、何故かレオさんも一緒に立ち上がった。そして、後ろから俺を抱き締めて、背後霊の如く背中にくっついて一緒に移動してくる。めっちゃ動き辛いんですけど。そして、明らかに、絶対、どう見ても、揶揄われてる気がする。
だってね、生クリームで大惨事な様子を、レオさんは間近で俺の髪を撫でながら優しく見守ってたんだもん。そう、ただ見守ってた。めっちゃ優しい、慈愛溢れる眼差しでただ眺めていた。一切助けるそぶりはなかった。きっと、俺が慌てる様子を間近で眺めて楽しんでたんだよ。だって、レオさんはドSだからね。
今はレオさんの存在を気にするのはやめよう。黙々と流しに移動して、淡々と手と顔を洗う。洗い終わったトコロで、すかさずレオさんが差し出してくれたタオルで拭いて、ソファに戻ろうとして、気が付いた。
今のこの、レオさんが後ろから抱っこしている状態。これは客観的に見ると、めっちゃ親子っぽい気がする。モコモコの着ぐるみはこげ茶色だし、レオさんの尻尾も髪もこげ茶色。ちょっとだけ色が違ってるトコロがなんとなく親子っぽい。
顔を下に向けて、自分の着ている着ぐるみの尻尾を持ってみる。レオさんの尻尾と自分の尻尾を一緒の画角で見たかったんだよ。それなのに、レオさんは腕を解いて体を離しちゃった。
「なんという反則級の可愛さ。ヤバいな。」
少し距離を取ったと思ったら、レオさんが俺の全身を舐めまわすように見てくる。そして、ほぅっと息を吐き出して、感動を伝える口調で言葉を出してきた。全く言っている意味が分からない上に、視線がイヤらしかった。
それに、レオさんと俺の尻尾の共演が見られなかった。色々な不満から、プイっとそっぽを向いて、尻尾から手を離しちゃう。レオさんは溜息を吐いて戻ってきた上で、また後ろから抱き締めてきた。
戻ってくるなら親子の尻尾が見たい。もう一度、尻尾の共演を見るべくチャレンジしてみる。レオさんが密着しているんだけど、問答無用でレオさんと俺の間の自分の腰辺りに手を差し入れる。そうしたら、耳に息を吹きかけられてしまった。熱い息がかかってゾクッとなって手を引っ込めちゃう。
「お前は可愛いな。尻尾が気に入ったの?」
耳元で囁いてくるレオさんの声にコクっと頷いちゃう。尻尾は勿論気に入ってるんだよ。でもね、レオさんと親子っぽく感じたいから尻尾が重要だったの。心の中では言えたけど、素直に口からは出てくれない。なんでレオさんには素直になれない時があるんだろう。不思議だ。
レオさんが優しく髪にキスしてくるのは放置して、ソファに戻る。床に座る直前で、レオさんが名残惜しそうに、首の後ろに唇を押し当てた後で離してくれた。床に座り込むと、レオさんも隣に座ってきて、幸せそうな顔で俺の髪に手を伸ばしてくる。
ってか、レオさんのお皿はいつの間にか空っぽだ。いつの間に食べ切ってたんだろ。まぁ、いいか。何はともあれ、レオさんが優しく髪を撫でながら見守ってくれる中で、ゆっくりまったりと、シュークリームを美味しく頂いて、チーズケーキも堪能して完食。めっちゃ満足のスイーツタイムでした、ご馳走様でした。
お茶を飲みながらレオさんの様子を眺める。スイーツを食べている間もずっと髪を撫でられていたけど、今は髪を摘まんでは緩く捩じるという、非常に擽ったい作業に勤しんでいる。レオさんはデレデレな幸せいっぱいな顔で、俺の髪を弄って楽しんでいるみたいだ。子供との触れ合いを楽しむパパさんの図、ですね。分かります。
「今日のも大満足。超美味しかった。」
「そうだな。今日のはマジでいい仕事をしてくれた。かなり楽しめた。」
美味しいスイーツを堪能した満足感を笑顔と言葉で表現してみた。レオさんが更にでれでれな感じで嬉しそうに答えてくれる。更には、顔を寄せて髪にキスをしまくってくる。リラックスした時のレオさんはキス魔になるっぽいから放置しておこう。
それより、いい仕事って言葉の響きがいい。ユリアさんのスイーツを褒める以外にも、満足気な響きに色々な思いが込められている気がする。なんとなくだけど、スイーツの味を堪能しての褒め言葉、というより、違う目線で言ってるような感じがするんだよね。
ん~、レオさんは変態仲間の裁縫の職人さんとお知り合い。それに、何気に変なトコで器用。しかも、変な拘りを持っていて、変に尖っている。総合して考えると、レオさんは変なトコロに突出した技能を持ってそうなんだよな。例えば職人さんのような凄い技術も持ってそう、な気がしてきた。
「いい仕事、とか職人さんっぽい台詞だね。レオさんはもしかして職人さん系の護衛さんだったりするのかな。スゴイね、何の職人さんなんだろ。えっちぃ道具?」
髪にキスを続けているレオさんの頭を両手で挟んで止めて、目を合わせる。そして、テンションを上げて聞いてみると、レオさんがちょっとだけ呆れた顔になっちゃった。
「お前はナニを言い出したんだ。俺はただの護衛だと言ってるだろ。職人じゃねぇ。あ、でも、えっちぃ道具とか、ヤバいな。そうだな、琥珀が望むなら、えっちぃ道具を作る職人になってもいいかもしれん。ちょっと頑張ってみるか。」
レオさんが溜息交じりに静かに言い返してきた。ただね、前半は冷静な口調だったのに、後半は俺以上にテンションが上っちゃってる感がある。興奮が目の光からも伝わってきてるんですけど。ヤバいね。
まぁ、俺にも変な単語を出しちゃった責任はあるかもしれない。でもね、冗談の単語にここまで喰い付くレオさんはホントに、アレだと思うんです。ってか、ノリが冗談じゃなくて本気に見えるのが怖いんですけど。
そもそも、えっちぃ道具なんてモノも、この世界には存在しているのだろうか。そして、存在してないとしたら、レオさんは1から作り上げる気なのだろうか。レオさんならやりかねないって思えちゃうところが怖い。
「あ、そうですか。俺は望まないけど、レオさんなら色々なニーズに応えられるいい職人さんになれると思います。頑張って下さい。」
「誘導しておいてドン引きとか。ゾクゾクし過ぎてヤバい。特に、その視線がヤバ過ぎて、非常にヤバい状況に陥りそう。お前はホントヤバいな。」
レオさんのテンションが上ったら、俺のテンションが下がっちゃった感がある。ジト目で多少棒読みになりつつレオさんを応援してあげると、レオさんが目を丸くした後で、ほぅっと息を吐き出した。そして、うっとりした顔で何かを言い出した。
えっとね、俺は何もヤバくない。ヤバいのはレオさんだから。むっとして睨んじゃうと、レオさんが吐息とも思えるような息を短く吐き出した。目の光も増している気がする。なんでこれで興奮するんだよ。マジで、レオさんは。あ、分かった。成る程ね、そういう事だったのか。
あれでしょ。冷めた視線や、淡々とした口調や、冷たい態度でネロを思い出しちゃったんだよね。うん、レオさんはネロに誘導されてドン引きされるって言ってたし。きっとそれを思い出しちゃったんだ。ある意味、代償行動の一環、か。レオさんはこう言うトコロが可愛いんだよな。
全てが理解できて、ニマニマしていたら、レオさんの目から光が消え去ってしまった。うん、全ての光を吸収して閉じ込めちゃったみたいに、目から一切の光のエフェクトが消えちゃったんだけど。どんな器用な事をすればこんな事ができるんだろう。超気になる。
暫くの間、光を閉ざした無の目だったレオさんだったけど、瞬きをした後で光の反射が復活してくれた。そして、俺の肩を抱き寄せて、指を髪に絡めてくる。ん~、まぁ、毛繕いは精神安定に効果がありそうだし、好きにさせてあげようかな。
ネロも落ち着く為に俺の髪を撫でてるっぽい時もあったし、きっと効果がある筈。目から光が消える程に、恥ずかしさが究極まで到達しちゃった感じだと思うからね。レオさんも俺の髪を撫でる事で落ち着いてくれればいい。
「まぁ、いいや。じゃあ、始めるか。」
少しして、レオさんが気を取り直してって感じで、何かの開始を示唆してきた。何かを始めるらしい事は分かったけど、何を始める気なんだろう。
小首を傾げて、何の事って疑問を動作で伝えると、レオさんはニコっとした後で、頬にキスをしてくれた。そして、スッと立ち上がったレオさんを目で追いかけてみたけど、答えてくれない。
疑問のままで見上げていたら、レオさんが優しく抱き上げてきた。ゆったりした動作だったのに、優しい笑顔と優しい瞳、そして、唐突な行動だったから、逃げるのを忘れちゃってた。
ぼんやりとレオさんを目を合わせ続けていると、いつも通りに、ソファに座ったレオさんの太腿の上で向かい合わせに座らせられちゃった。視線の先で、レオさんが嬉しそうに目を細めたのが見える。
「あのね、一つ言いたい事があるの。」
「じゃあ、始めるか。」
冷静さを心掛けて静かに言葉を出してみる。でも、レオさんは俺の言葉を完全にスルーして、何かの始まりを宣言してきた。えっとね、レオさんがめっちゃ爽やかな笑顔になってるんだけど、何のつもりなんだ。その爽やかイケメンスマイルはろくなことを考えてない証拠って分かってるんだよ。
これは逃げた方が得策な気がしてきた。自身の予感に突き動かされて、レオさんの膝の上から下りようと体を捩ってみる。でも、レオさんの腕が両脇から腰に掛けて回されていて、かっちりと固定しているから動けない。
「攻守切り替えの拷問ごっこ、楽しみだね。」
逃げようと足掻いていたら、楽しそうなちょっと低い声と共にレオさんがニッコリ笑顔になっちゃった。凄く迫力のある笑顔なんですけど。それ以前に、言葉の響きが怖いから。それは冗談なのかと思ってたんです。隠している事なんて何もない、筈だよ、ね。白状させられる事なんて何もない、筈だよね。
「冗談じゃ、ないよ。」
レオさんがきゅっと抱き寄せてきた。そして、体が密着した状態で、レオさんの甘さを含ませた優しい囁きが耳に吹き込まれて、ぞくっとなってしまう。更には、熱い唇が微かに耳にあたってゾクゾクとなっちゃった。
ってか、今更ながら疑問に思ってしまった事がある。レオさんは俺の思考を結構な頻度で読んでくるし、さっきから口に出してない疑問に対して、普通に答えてくるんだけど。
勘ってそんなに凄いモノなのかな。この世界では勘というモノもスキルとか能力的な何かだったりするのだろうか。こんなに考えている事が的中するとか、ヤバ過ぎだと思うんだけど、どうなんだろう。
(レオ様は固有特性《天運の勘》を所持しています。その為、驚異的な『勘』を発揮しているようです。尚、通常の勘に関しては、スキルでも能力でも御座いません。琥珀様のイメージ通りの、ただの勘となります。)
マジか。レオさんの『勘』は普通の勘じゃなくて、特性に裏付けられた『勘』って事か。そりゃ的中する筈だよな。ってか、レオさんはあんまり読めないって言ってたけど、バリバリ読んでくるじゃん。ネロと同等じゃん。それどころか、そんな特性があるなら、下手したらネロより上かもじゃん。
「レオさん、禁止で。」
スツィに教えて貰った情報で状況が理解できて、低い声で呟いてしまう。その途端に、レオさんがぴくっと反応したのが分かった。レオさんが腕を緩めて体を離し、覗き込んでくる。心配そうに見つめてくる緑の猫目にゆっくりと視線を合わせて見据えてみた。
「レオさんの『勘』の発動は本日、この時を持って禁止と致します。」
レオさんが小首を傾げて疑問を伝えてきたから、レオさんの目を真っ直ぐに見つめて、静かにはっきりと禁止を言い渡してみた。レオさんは不思議そうに眉を寄せた後で、理解できたのか、驚きの顔に変わっていく。このコロコロ変わるレオさんの表情が見ていて楽しいんだよ。
「ちょっと待て、一体どうしてそうなった。今から楽しい拷問ごっこ、だろ?」
「レオさんが楽しいだけじゃん。」
レオさんが静かな口調で抗議してきたけど、ツーンとした態度で言い返しちゃう。素気無い態度で返したのに、何故かレオさんの眼差しが楽しそうに変わっていく。どうやら、喜んじゃったらしい。
「ん~、少しだけいいだろ?ちょっとしかしないし、絶対良くしてあげる。優しくするし、琥珀も楽しめる筈。だから、ちょっとだけしよ。」
レオさんが顔を寄せてきた。そして、頬にキスをして、髪にもキスをしてくる。優しいキスの後は、優しい声と言い聞かせる口調で、なんというか、変な連想をさせる言い回しで誘ってくる。深い緑の瞳は優しさに溢れているのに、表情も優しいのに、言葉だけがイヤらしい感じがマジでレオさんだ。
いや、もしかすると普通の言い回しなのかもしれない。でも、レオさんが言うとヤバさしか感じないのは、やっぱり、レオさんの特殊能力なのだろうか。こんな優しい顔と目なのに、なんでレオさんはイヤらしいんだろう。悲しくなっちゃう。
「発言が限りなく卑猥。レオさん、アウト。」
「あんなに楽しみにしてたのに。俺は暗殺者だと疑われて、怯えられただけだった。スイーツの後のこれだけが楽しみだったのに。」
キラキラの緑の瞳を見つめて、ジト目でアウトを言い渡しちゃう。そうしたら、レオさんが急にシュンとなっちゃって、悲しそうな声で言い返してきた。こんな悲しそうなのに、流石レオさんだ。的確なトコロを突いてかなり心を抉ってくる。
それに、猫耳をそんな風に悲しそうな表現の小道具に使わないで頂きたい。めっちゃ可愛いから。釘付けになっちゃう程可愛いからね。伏せてぷるぷるさせる猫耳で心が揺れない人がいたら見てみたい、って程、ヤバいから。でも、猫耳はまぁ、今は置いておこう。
確かに暗殺者として疑っちゃったよ。ただ、それっぽい態度をしていたレオさんにもちょっとだけ責任があると思うの。だって、冷たくて鋭い目だったし、殺しそうな視線だったし、極悪な顔だったし。でも、俺の勘違いだったのは確かで、俺に否があった。うん、言い訳は潔くない。心の中に秘めておこう。
「じゃあ、ちょっとだけ。」
結局はレオさんの猫耳に屈してしまった。少し譲歩する形で許可を出してみると、レオさんの猫耳が少しだけ立ち上がった。でも、まだ不安げにぷるぷる震えてる。完全にペタンってしてない状態でのぷるぷるも超可愛い。この可愛さは、ホント卑怯だと思います。




