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182 情報は正確、な筈

 二人が答える前にムニンが髪を啄んでくれて、フギンは頭を摺り寄せてくれる。この子達も一緒に喜んでくれたらしい。超いい子だ。そして、メッチャ可愛い。ありがと。二羽に手を添えて、触れないながらも撫でてあげる。


「いや、発動はネロだし。琥珀要素は少しって言ってただろ。お前は魔法を使ってないからな。魔法不可の呪いは継続中だよ。」


「なんでそんな意地悪を言うの。俺要素も少しあるもん、魔法を使えたもん。」


 二羽と一緒に喜びを分かちあっていたのに、レオさんが突っ込んできた。むっと口を尖らせて言い返すと、レオさんの手が俺の頬に伸びてくる。反射的に口を戻してニコっとしたら、レオさんが頭を撫でてくれた。


 ムニンが俺の頭を撫でるレオさんの腕を靄の翼でペシペシしてくれてる。物理攻撃は0っぽいけど味方してくれたっぽい。超いい子である。レオさんが面白そうに片眉を上げたのが見えた。


「琥珀、詳しく聞いてくれるか?俺では回答が得られないらしい。」


「指示に従わないって事か?」


 レオさんとムニンと戯れる様子を見ていたら、ネロが頼み事をしてきた。詳しくってなんの話だ。首を傾げると、レオさんがネロに聞き返している。そっか、回答が得られないって事は、ネロの指示に従わないってのと同意義になるのか。


「情報の開示はしない。琥珀にのみ認められる。との事だ。」


「どういう事だ。」


 ネロは困惑した様子でレオさんに答えて、対するレオさんも困惑した様子で呟いている。二人の困惑の表情が似ていてちょっと可愛い。猫耳が少し傾いて、猫目が困った感じを演出している。困った猫ちゃんズですよ。


「分からない。魔法としては普通に機能する。指示も可能。情報の開示は無理、らしい。従って、琥珀の魔元素が混じるという情報は開示しない、らしい。」


「ん~、情報取集のお仕事はこなすけど、プライベートは自由にやらせて頂きます。って事かな。」


 ネロの説明を聞いて理解しましたよ。俺なりに分かった事を、口に出して確認を取ってみる。フギンが可愛く嘴を開いた。余りの可愛さにギュッと抱き締める、モーションをしてしまう。触れないからフリだけになっちゃうんだけどね。


「そのようだ。」


 ネロが目を瞠って通訳をしてくれた。正解だったらしい。やっぱり俺は推理の天才だったのかもしれない。少ない情報からもズバッと的中。流石である。ムニンが髪をハムハムしてくれた。フギンも可愛く頭を摺り寄せてくれる。二羽も認めてくれたようである。ありがと、って手を添えて撫でるフリをしてみる。


「マジで。この〈使い魔〉。規格外過ぎないか?どう見ても『理』から外れてるようにしか見えないんだけど、どうなってんだ。」


「君達は『理』から外れてるの?」


 レオさんの驚きを含んだ声が聞こえて、レオさんの言葉を借りてそのまま質問をしてみる。ムニンが俺を覗き込んで嘴を開いた。ヤバい、至近距離で見るこの子は超可愛い。ムニンの頭を撫でているとネロが頷いた。


「外れてはいない、幻とはそういうモノ。と言っている。」


「ん~、どういう事?」


 ネロに通訳して貰ったけど、理解ができなかった。という事で、素直に聞いてみる。フギンが嘴を少し動かした後で、ムニンが交代して嘴を動かした。


「幻は思考。思考は自由。『理』に縛られた思考は自由を奪う。」


「成る程。みんな固定観念に囚われてるのか。そうだよね、自由に考えたら自由に動けるよね。フギンもムニンも偉い、教えてくれてありがと。」 


 今度のネロの通訳は単純明快。今回はスゴク良く分かった。『理』に縛られる、即ち、固定観念に縛られるって事だよね。フギンとムニンに手を添えてわしゃわしゃっと手を動かしてみると、二羽は嬉しそうに翼をパタパタしてくれる。めっちゃ可愛い。


「マジかよ、そんな事があるのか?固定観念で魔法が拘束されてるっての?」


「魔法が拘束される?」


 レオさんが呆然とした様子で疑問の形を取った独り言を呟いている。レオさんの呟きの中の一部が気になって、そのまま口に出して聞いてみた。俺の言葉に反応したのか、フギンが嘴を動かして答えてくれる。


「拘束はされない。自由を齎されるのは基本的には幻だけ。との事だ。」


「基本的には幻ってどういう事?」


 ネロの通訳を聞いて、更に突っ込んで聞いてみる。今度はムニンが嘴を動かして教えてくれた。


「幻は思考。思考は特別。」


「ん~、どういう意味なんだろ。」


 ネロの通訳の言葉は分かる。でも、意味が分からない。首を傾げて疑問を口に出してみたけど、今度は二羽も困ってしまったらしくて、嘴を動かしてくれない。難しい質問だったみたいだ。


「多分だけど、幻は思考の世界だから、他の魔法と違って特別って事じゃね?」


 二羽に代わってレオさんが答えてくれた。先生モードのレオさんはカッコいいですね。レオさんは実は超有能説が浮上してきた。あんなにチャラくて、いい加減で、雑なレオさんなのに。あ、レオさんがジト目になってる。スッと目を逸らすと、レオさんが俺の頬に手を添えてきた。


 ムニンがレオさんの手を嘴でつついて、フギンは頭突きをしてくれてる。超可愛い。俺を守ってくれてるみたいだ。物理的には全く効果はないけど、視覚的にはメッチャ可愛い。レオさんも怯んだらしく手を引いてくれた。


 フギンとムニンが守ってくれた。ありがと。フギンを両手で抱き締めて、ムニンには顔を凭れ掛からせて頬擦りをしてみる。フギンは手に頭を摺り寄せてくれるし、ムニンは髪をハムハムしてくれた。やっぱ可愛い。


「レオさんが言ってるのが正解?」


 二羽へのお礼も済んだトコロで、改めて聞いてみる。二羽とも嘴を開いて可愛くお返事をしてくれた。ヤバい、マジで可愛い。二羽が同じモーションをすると可愛さが倍増した。これはヤバいですね。


「正解。と言っている。」


「じゃぁ。幻属性の魔法だけは、固定観念を取っ払えば相当凄いかもしれないの?」


 レオさんは正解だった模様。って事はですよ。幻属性はヤバいって事だよね。テンションの上がった質問にはフギンが答えてくれた。フギンは結構な長い時間、嘴を動かしてお喋りをしてくれて、理解はできないながらも、ふむふむ、と頷いて聞いてみる。


「思考の自由は効果を増幅も減衰もする。思考の自由は効果を変質させる事もある。幻は思考、従って思考の自由の影響は絶大。思考の自由は幻が作用する一部の他の魔法も影響を受ける。との事だ。」


 ネロの通訳によると、まぁ、強くなる事もあるけど、弱くなる事もあるよ。みたいだね。効果を変質ってのが分からないけど、きっと凄い事になるんでしょう。


 それにしても、幻が作用する他の魔法って言い回しが気になる。スツィが前にちらっと教えてくれたアレかな。複数属性の魔法ってやつ。きっとそういう系の魔法って意味だと思うんだよね。


 何れにしても、幻属性の魔法ってのはイレギュラーな魔法で確定っぽいかな。まぁ、師匠が無機物な可能性もある時点でイレギュラーで間違いないか。納得です。


「成る程。じゃぁ、君達はネロと俺の魔元素でできてるんでしょ。それは、どういう事か教えてくれる?」


 寄り道をしてしまったけど、ネロが聞きたがっていた質問に参りましょう。俺の問いかけに答えて、ムニンが俺を覗き込んで嘴を動かしてくれる。その後で、フギンも俺を見上げて嘴を動かしてくれた。


「俺が琥珀の影響を受けた。魔元素が流れ込んだ。と言っている。」 


「ネロが俺の影響で固定観念が外れた結果、君達がこんなに可愛くなったって事なのかな?」


 ネロの通訳ではちょっと分からなかった。多分こんな感じかな、と言葉を変えて聞き直してみた。フギンが嘴を開いて、覗き込んでいたムニンも嘴を動かしてくれる。


「少し違う。琥珀の魔元素が自由を齎した。と言っている。」


「ん~?ネロが俺の影響を受けると魔元素が自由になるの?」


 フギンとムニンは言い直してくれたけど、余計分からなくなっちゃった。分からないなりに、もうちょっと質問を続けてみた。覗き込んでいるムニンが首を傾げている。フギンも見上げながら首を傾げてしまった。ネロに顔を向けると、ネロも首を傾げていて、ついでにレオさんも首を傾げている。


 二羽の鴉と二匹の猫が同じモーションをしている。めっちゃ可愛い。ヤバい。スクショ取って保存しておきたい絵面になってる。少しの沈黙の後で、フギンがゆっくり嘴を開いた。ムニンも嘴を動かしてゆっくり答えてくれる。


「琥珀は特別。理由は不明。」


 成る程。この子達でも分からなかったからこその、あの可愛い態度だったのか。超可愛かった。ネロの頭を撫でて、レオさんの頭も撫でて、ムニンとフギンも撫でてあげる。


「待て。何故、俺とネロも撫でた。」


 ぼんやりと撫でられていたレオさんは、はっとしたらしい。レオさんが訝し気な表情で突っ込んできた。ネロはちらっとレオさんに視線を向けた後で、俺と目を合わせてニコっとしてくれた。


「ん?可愛かったから。」


 そんなのは聞くまでもないでしょう、と、サラッと答えてあげる。ってか。訝し気なレオさんも可愛いと言えば可愛い。もうね、猫耳がある時点で可愛く見えちゃうんだよ。その綺麗な緑の猫目も可愛い。ちらっと下に目を向けると、尻尾も先端がパタパタしてて可愛い。


「可愛くはないだろ。可愛い要素がどこにあったよ。今はシリアスな展開だっただろ?」


「レオさんには分からない世界もあるんだよ。ね、可愛かったんだからいいじゃん。」


 レオさんが文句を続けてくる。可愛いんだからいいでしょ。むっとなって強く言い返すと、レオさんが怯んだ気がする。もう一度頭を撫でてあげたら大人しくなってくれたっぽい。ん~、しかし。理由が不明ってのはモヤモヤする回答だったな。


「ネロ的には、フギンとムニンの回答はどうかな。少しは何か分かった?」


「そうだな。理解はできた。」


 俺にはさっぱり分からなかったけど、ネロだったら理解できたかも。ネロに聞いてみると、やっぱり理解できたらしい。流石ネロである。頭脳も最高なネロはまさにパーフェクトと言っていいでしょ。そして、言える事はですよ。通訳としても最高だったでゴザル。


「ってか、通訳が凄かった。ネロは通訳でもやってけるね。」


「いや、この人は凄い護衛だからね、変な職業に引き抜かないで。護衛を束ねる人がいなくなったら困るから。それ以前に、こんな超絶能力の通訳なんて誰が雇うんだよ。」


 ネロは通訳でもいけるねって意見を軽く言ってみたら、レオさんが俺をギュっと抱き締めてきた。何事っと、反射的に腕を突っ張ってレオさんに目を向けてみる。目が合った途端に、レオさんが勢いよく話し出した。成る程ね、引き抜かれたら嫌だよね。分かります。


 色々言葉を並べてたけど、遠くに行っちゃう可能性が怖くなったんだね。ホントにレオさんは可愛いんだから。頭を撫でてあげたら、ムニンもレオさんに向かって翼をふぁさふぁさしてくれてる。慰めてあげてるっぽい。超いい子。フギンは膝の上でレオさんをじっと見つめてる。ネロみたいな冷めた視線だ。超可愛い。


「あ~、えっと。魔物がいっぱいの国のトップの人なら雇ってくれる筈。護衛兼、用心棒兼、参謀兼、通訳。みたいな感じ?」


「通訳要素が低いな、ほぼ護衛じゃねぇか。」


 レオさんの質問っぽいのに答えてみたら、レオさんが苦笑して突っ込んできた。確かに、ほぼ護衛で正しいかも。それにしても、熱く語るレオさんはちょっと可愛かった。エロ要素もないのになんでそんなに熱いんだとは一瞬思ちゃったけどね。


 違う土地にネロが行っちゃったら遠距離恋愛になっちゃう。それは絶対に避けたいって思いが強く出ちゃったんだろうな。離れ離れとか、悲しい結果になっちゃうもん。分ります。


 レオさんも偶には素直になって、ネロに可愛く行かないでって言ってみればいいのに。そしたらネロもぎゅってしてくれる筈だし。ラブラブな展開に突入してハッピーエンドになるのにな。


「琥珀?怒らないから、今考えた事を口に出してみな?」


「ん?何も考えてないよ?気のせいだよ?」


 レオさんの低い声が聞こえる。でも、そんな低い声で威圧的に言われても俺は負けない。そんな怖い目付きにも負けない。そして、引っ掛けには乗らない。レオさんのは、ただの勘だ。俺はもう失敗は繰り返さない。しれっとした態度を貫いて、視線を逸らしつつ恍けて答えてみた


「そう?じゃあ、俺が言ってみるから、答え合わせしてくれる?」


「いいよ?別に何も考えてないし。ね~、フギン、ムニン。」


 精一杯の抵抗をしてみたら、レオさんの声が低くなった気がする。この威圧に耐えきる事ができたら俺の勝ちだ。俺には可愛い味方がいるんだからね。可愛い二羽の頭を撫でながら、レオさんに向かってふふんっと余裕の笑みで許可を出してみた。レオさんの眉がぴくっとなったのが見える。


「まず、何故俺が熱く語りだしたのかが疑問に思っただろ?」


「えっと、あ~、そんな事は無いよ、ね~、ムニン。」


「あとは、エロい事とかないのに何でとか思っただろ?」


「う、ん~。ちょっと合ってるかもしれない。でも、違うかもね。ね~、フギン。」


 ヤバい、レオさんは全部分かってそうな気がしてきた。ただの勘で、俺の考えを全部当てられるとかありえるのかな。ムニンもフギンも心配そうにな視線になってる気がする。超怖い。俺は今、心配される事態に陥ってるって事なのだろうか。


「このまま俺の口から全部言ってしまってもいいんだな。ネロにお前の考えの全てが俺の口から伝わるんだぞ?」


「う~、遠距離になったら、悲しい結果になっちゃう。レオさんも偶には素直になってネロに可愛く行かないでって言えば、ネロがぎゅってしてくれるのに。そして、ラブラブな展開じゃん。って思ったけど、別に普通の事だし。二人のハッピーエンドをイメージしただけだし、いいじゃん。」


 レオさんが言葉を止めて最終通告をしてきた。ニヤッと笑ったレオさんを見て観念する。もういいよ、言えばいいんでしょ。別に今回は変な事は考えてないし、言ってもダメージはないもん。言ってやる。拗ねた口調で話してみると、レオさんが優しく頷きながら聞いてくれた。レオさんは聞く姿勢だけはいいんだよ。


「そうかそうか。ハッピーエンドまで考えてくれていたのか。ホントに琥珀は可愛いな。」


 レオさんの顔は笑顔なんだけど、目は冷たく光ってる。眩しいよ。光が眩し過ぎるんですよ。可愛いな、って優しい言葉を囁く顔付きじゃないじゃん。そんな凶悪な笑顔をする事ないじゃん。


 ってか、今気が付いた。レオさんの口から伝わっても、俺の口から伝わっても同じだった。妄想の内容が漏れる事実には変わりはなかった。超恥ずかしい。顔を覆って、指の隙間からちらっとネロを盗み見てみる。ネロはぼんやりと俺達の遣り取りを眺めていたみたいだ。


 レオさんが俺の手首を掴んだ。いや、って力を込めたのに、レオさんは俺の手を顔からジリジリと引き剥がしていく。因みに、俺は力いっぱい抵抗をしてるのに、なぜか何の圧力もなくレオさんは俺の手をゆっくりと移動させていく。


 どんな力の使い方なんだよ。魔法か?魔法を使ってるのか?もういいや、レオさんには勝てない。力をふっと抜いたら、レオさんが手を離してくれた。


「今は真面目な話をしてるんだから脱線するなよ。」


「脱線したのはレオさんじゃん。」


 レオさんに目を向けると、頭を撫でながら優しく言い聞かせてくれる。ちょっとだけ反発心が芽生えてプイっとそっぽを向いて言い返してみた。


「線路に大きな岩を置いたのは誰だよ。」


「ん?誰なの?」


 レオさんが苦笑交じりに呟くのが聞こえる。顔をレオさんに向けて、ニッコリ笑顔で恍けて聞き返してみた。レオさんは俺の髪を掻き上げながら優しく見つめてくる。


「お前だろ、琥珀。お前が通訳とか言い出すから脱線したんだろ?」


「く、小さな小石じゃん。ちょっと蹴とばしただけだもん。」


 優しい眼差したけど、レオさんの言葉の方は容赦がなかった。レオさんはネロみたいに優しくはしてくれないんだよね。知ってます。拗ねた俺を優しく見守ってくれてるけど、その視線に含まれているのは優しさだけじゃない。


 レオさんのこの感じがスゴイ好きだ。ちゃんと注意とか、文句とか、叱ってくれる感じが凄く好き。ネロは安心するけど、レオさんも安心する。流石ネロの恋人だ。安心感が半端ない。


「小石でも大事故に繋がるからな、気を付けろよ?」


「そうなんだって、フギン、ムニン。レオさんは凄いね。物知りだね。」


 俺の髪を撫でながらレオさんが呟いた。言い聞かせるような優しい口調だ。素直にウンとは言えなくて、フギンとムニンにレオさんの凄さを報告してみる。嘴を動かしたムニンに覗き込まれて、可愛くて頭を撫でちゃう。


「レオの知識量は多い。と言っている。」


 冗談を言っただけなのに、ムニンは俺に答えてくれていたらしい。しかも、レオさんの事について教えてくれた。多分だけど、情報収集が主な仕事の子だから正確な情報なんだと思う。


「マジで?レオさんはホントに頭がいい系の人だったんだ。スゴイね。知らなかった。」


 なんとなくそうじゃないかな、とは思ってはいたんだよ。でも、やっぱりレオさんは物知りだったらしい。真実を知る事ができたのが嬉しくて、ニコっと笑顔で呟いてしまった。俺を見上げたフギンも嘴を動かして話してくれる。


「知力も高い。と言っている。」


 ネロが通訳してくれた言葉を聞いて、目を丸くしてしまった。知力も高いのか、レオさんは知力も高いんだ。マジか。俺は知力が1だというのに、レオさんは体格だけじゃなくて知力にまで恵まれているのか。羨ましい。


 頭いい系って言葉を出しちゃったから、それに答えてくれた形になったんだ。この子達はスゴイですね。ムニンとフギンの情報は正確だとは思う。でも、まだお世辞な可能性も少しだけ残されている、筈。


「フギン、ムニン。お世辞はいいんだよ?正直に言ってくれていいからね。」


 フギンとムニンを交互に見ながら、真実を言うように強要してみた。二羽は首を可愛く傾げて見つめ返してくれる。超可愛い。この可愛さはヤバい。ギュってしてあげたくなる。


「待て、こら。俺だって人並みにやってんだよ。専属の護衛だし、普通に知力は平均以上はある。当たり前の話だ。」


「それで何であんな際どい本ばっかり読んでるの。悲しくなってきた。」


 二羽と話をしてたのに、レオさんの不満そうな声が割って入ってきた。顔を上げて、溜息交じりに悲しさを伝えてみる。フギンがふぁさッと翼を動かしてアピールしてきた。顔を向けると、フギンは首を傾げて嘴を動かしている。


「性欲も強い。と言ってる。」


 フギンが話し掛けてくれたのは分かったよ。そして、ネロの通訳を聞いて、意味を理解して顔を覆ってしまった。やっぱりレオさんはレオさんだった。フギンに断定されたって事は確実じゃん。ネロは全然恥ずかしくなさそうだったけど、聞いてる俺は恥ずかしい。


「待て、丸裸にするつもりか?そいつらはヤバい。ネロ、マジでヤバい。」


「情報収集が主な魔法。情報は正確、な筈。」


 俺も恥ずかしかったけど、レオさんも恥ずかしかったらしい。超焦った声が聞こえる。対するネロはメッチャ冷静だ。クールさしかない。恥ずかしいのは俺とレオさんだけらしい。ネロも恥ずかしくなればいい。そんな意地悪な考えが浮かんで、顔の覆いを外してみる。


「じゃぁ、ネロもレオさんも変態なのは正しいの?」


「マジで待って。お前は何て事を聞き出すんだよ、今直ぐ止めろ。」


 考えた末にネロも関係する事を聞いた質問で、レオさんの焦りが最高潮になっちゃった。止めてくるけど、止まらないの。しょうがないんだよ。ネロも恥ずかしくなる為には、レオさんは犠牲になるしかなかったの。


 俺をギュっと抱き締めてくるレオさんの腕をポンポンしてみたけど、力を緩めてくれなかった。俺を覗き込んだムニンが嘴を動かしている。何かしらを答えてくれてるみたいだ。なんて言ったのかな。ネロに顔を向けると、ネロは片眉を上げて目を逸らしてしまった。


 ほぉ、恥じらってる気がする。ネロもちゃんと恥ずかしがってくれた。ってか、ネロが恥ずかしがる返答だったんだ。なんて答えてくれたんだろう。超気になる。


「何て言ったの?教えて。」


 目を逸らして答えてくれないネロに通訳を要求してみた。ムニンとフギンが飛び立ってネロの肩の上に移動する。二羽が両脇からネロに向かってお喋りしてる。無音だけど、めっちゃ賑やかに喋ってる感じがある。


「正しい。と言っている。」


 ネロは天井を見上げて、小さな声でぽつりと呟いた。正しい、要するに二人は変態で間違いない。自分で聞いておいて、恥ずかしくてまた顔を覆ってしまった。二人が変態なのが確定した瞬間である。レオさんが俺の頭をポンポンと撫でてくれる。


「また、みんなにダメージだったな。恐ろしい攻撃だった。」


「俺はダメージを受けてない。ちゃんと回避した。」


 優しいレオさんの声が慰めてくれる。でもね、俺は違う。俺は何もダメージはなかったんです。ちょっと恥ずかしいだけだもん。二人は変態の汚名を着せられたけど、俺は平気だし。


「じゃあ、顔上げて見ろよ。ん?」


 レオさんの低くて楽しそうな揶揄う声が聞こえる。レオさんの手が俺の両手の手首を掴んだ。イヤって首を振るけど、優しい力なのにじわじわと引き剥がされてしまう。このままじゃ、真っ赤になった顔を見られちゃう。


「レオさん、無理遣りはイヤ。止めて。」


「ん~、無理遣りか。俺は変態なのが確定しちゃったし。そう言われると興奮しちゃうんだよね。ごめんね。」


 レオさんを止められる可能性に掛けて、ぶりっ子で嫌がってみる。レオさんがふっと笑ったのが聞こえた。そして、レオさんは耳元に口を寄せて、低くて少しだけ甘さを含ませた声でゆっくりと答えてくれる。


「ズルい、ソレを言い訳にするのはズルい。」


「そうだよ?俺は実はズルいんだ。ごめんね。」


 ぶりっ子は効かなかった。って事は、駄々っ子スタイルに変更だ。首を振りながら文句を言うと、レオさんがまたクスッと笑ってきた。耳元で笑うと息がかかるからやめて欲しい。ゾクゾクするんだよ。そして、演技がかった甘い声で囁かないで欲しい。マジでレオさんらしい手段で攻めてくるじゃん。


 言葉での抵抗の合間にも、じりじりと手は外されていて、もうだめだ。力を抜いたのに、レオさんは両手首から手を離してくれない。両手をレオさんに拘束された状態で、レオさんが覗き込んでくる。


 マジで、恥ずかしいから、そんなまじまじと見ないで欲しい。助けを求めてネロに目を向けてみる。ネロは目が合って、ほぅっと息を吐いて目を細めた。どんな溜息だよ。ってか、なんでそんな恍惚とした顔なんだよ。


 くそぉ、今回もネロは助けてくれないらしい。どうすればいい、考えろ。ネロから視線をレオさんに戻す。にっこり笑顔のレオさんは超楽しそうだ。泣きそうな顔を作って睨むと、レオさんが怯んでくれた。


 よし、行ける。レオさんはやっぱりこの涙目戦法に弱い。レオさんの弱点はもう知ってるんですよ。レオさんを涙目で睨み続けたら、手首から手を離してくれた。と、同時に抱き締められていた。


「その顔をするのは卑怯。」


 レオさんが小さく呟く声が耳元で聞こえる。レオさんは首筋に顔を埋めてしまったらしい。俺を虐める事で精一杯強がっていたレオさんだけど、恥ずかしさは継続していたみたいだ。


 ネロが小さく溜息を吐いたのが聞こえて顔を向けてみる。ネロが顔を逸らしてしまった。ネロも疲れちゃったらしい、そして、俺にもやっぱりダメージはあった。


 ああいう質問が良くないって事が良く分かった。俺が恥ずかしくなった。レオさんの肩をぽんぽんとしてみたけど、レオさんはイヤだって首を振って答えてくる。ごめんねって意味で、レオさんの頭を撫でてあげる。レオさんの恥ずかしさは伝わってるし、みんながダメージを受けちゃった。


「レオさん、俺が悪かった。みんな平等にダメージだった。」


「お前のダメージは軽微だろ、俺とネロは瀕死だよ。」


 優しい声で自分の非を認めて謝ってみると、レオさんが拗ねた声で言い返してきた。俺だって恥ずかしさは相当なモノだったから、軽微じゃない。それに、ネロは兎も角、レオさんは変態と断定されたくらいでは瀕死にはならないでしょ。


「レオさんは普段から変態なんだから、確定されたくらいで瀕死とか。ねぇ。」


「ねぇってなんだよ。お前の前で真実を曝される事がどれだけ恥ずかしいか、分かってんのか。」


 心の声をそのまま呟いてみたら、レオさんが抱き締める腕に力を込めてしまった。そして、少し顔をあげたのか、耳元で囁いてくる。超怖い囁きなんですけど。レオさんの冷たい視線が目で見えるような怖さがあるんですけど。


「だって、レオさんは想像通りだったもん。全然、想像通りだから、ね。寸分違わず想像のど真ん中だったから恥ずかしくないよ?」


 レオさんが恥ずかしいのは理解できたよ。でもね、全然恥ずかしくないんだよ。想像通りだからね。優しく話しながらレオさんの頭を撫でてあげる。


「今、お前は同じ説明を繰り返してただけだからな。俺の傷心した心は癒されない。」


 レオさんが首元でぼそぼそと呟く声が聞こえた。解放してくれないレオさんを宥める手段を考えて結論に辿りつく。要するに、同じ質問を自分にすればいいじゃん。


「じゃあ、いいよ。フギン、ムニン。俺は変態?」


「マジ、お前は何て事を聞くんだよ。」


 レオさんが抱き締めていた腕を離して、ばっと覗き込んできた。ネロの肩の上で二羽が交互に嘴を動かしてるのが見える。二羽の答えを聞いたネロが頬を緩ませてクスっと笑った。面白い事を言った模様。何て言ったの。超気になる。笑える答えなのかな。俺へのダメージはどうなの。


「琥珀は耳と尻尾への執着が凄い。可愛い変態。と言っている。」


「可愛い変態ってなんだよ。でも、まぁ、可愛いのは間違いない。」


 ネロの通訳を聞いてネロが笑った理由が分かった。耳と尻尾への執着がスゴイって断定されちゃった。まぁ、二人にはもうばれてるからいいけどね。レオさんが笑いを噛み殺しながら突っ込んでる。ネロ同様にレオさんにも笑われてしまった。


「どう?イメージ通りの俺だった?」


「そうだな。そのまんまお前だ。」


 レオさんを見上げて聞いてみる。レオさんは目を細めて頷いてくれた。そのまんま俺って断定されちゃった。成る程ね、さっきのレオさんはこんな気分で聞いてたのか。


「では、そろそろ帰していいか?」


「あ、待って。フギン、ムニンおいで。」


 ネロが二羽を帰しちゃうらしい。帰る前に触れ合いたくて、二羽を呼んでみた。直ぐに俺の胸の上に飛んできてくれたフギンとムニンをギュっと抱き締める。


 腕を離すと、ムニンは肩に移動してきた。頭を摺り寄せてくれるフギンを優しく撫でて、髪を嘴で啄んでくれるムニンに顔を寄せて頬擦りしてみる。別れの挨拶が終わった後で、二羽が嘴を少しだけ動かして何かを言ってくれた。


「またね、だそうだ。」


 通訳をしてくれたネロに頷くと、二羽の鴉は空気に溶けるように消えてしまった。二羽が消えた途端に、ネロとレオさんの深くて長い溜息が重なった。二人共、魂が抜けかかっている気がする。ぐったりと背もたれに寄り掛かって、ぼんやりと虚空を見上げる角度も似ている、気がする。

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