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181 ちょっとカッコ良くない?

 怖さは今は置いておいて、疑問から片付けよう。魂を引き戻す以外にも、疑似的な魂を入れる手段もあるって言ってた。朽ちた肉体、要するに、肉体自体が機能を停止してるって事だよね。体の方がもう機能してないなら、本来の魂も疑似的な魂も同じじゃないのだろうか。


「ん~。って事は、疑似的な魂でもそうなるんじゃないのかな。肉体は死んでるんだから、同じじゃん。」


「それが、疑似的な魂だと肉体は留まるんだよ。とは言っても、自発的には動かない。単純な指令をこなすだけ、とか命令に反応する人形みたいな感じみたいだけどな。」


 どうしても気になって疑問を挟んでしまった。レオさんは待ってましたと言わんばかりに、即答してくれた。ん~、肉体が留まるってどういう事だ。更なる疑問が出てきちゃったけど、疑似的な魂ヴァージョンの蘇生はネクロマンシー的な感じなのが確定したっぽい。


「体だけを動かす場合も同じ。然るべき措置と魔法を施すと、体は朽ちる事がない。ただ、魂がないから、こっちも単純な指令をこなすだけの、朽ちずに存在するだけの肉体になる。」


 新たな疑問は聞けないままに、レオさんが話を続けていく。でも、レオさんは俺の様子を窺いながら話しているから、疑問に思ったって事は分かっていたらしい。話の中でサラッと補足を加えて疑問に答えてくれた。肉体が留まるってのは、朽ちずに存在するだけの肉体って意味っぽい。


 ってか、こっちの手法も同じくネクロマンシー的な感じだった。単純な指令をこなす上で、魂の有無はどう作用して、どういう差異が生まれてくるんだろう。超気になる。


「因みに、合わせ技になるんだけど。朽ちない体を作った上で、引き戻した本来の魂を注入した場合。残存する時間は少しだけ伸びるけど、最終的には何故か体は朽ちてなくなってしまう。」


 レオさんが追記って感じで合わせ技も説明してくれた。朽ちない体なのに、朽ちてなくなる。それを聞いちゃうと、確かに、本来の魂が原因で肉体が消失するって感じだね。


 これも全て、実験とやらで得られた成果からの情報なんだろうな。かなりエグイ実験なのに、膨大な実験の結果って言ってた。1回や2回じゃないって事だ。そう考えると、普通に怖い。


「そうなんだ。でも、そんなのを実験するとか超怖いね。」


 レオさんの説明が終わったトコロで感想を言ってみた。怖いという言葉に反応したのか、ネロが身を乗り出して頭を撫でてくれる。しかも、心配そうな顔になっちゃってる。大丈夫だよ、って意味でニコってすると、ネロはほっとした顔で元の位置に戻っていった。


「まぁ、ソピアの歴史の数だけ、実験が行われてるみたいだからな。怖いといえば怖い話だよな。怖さが軽減できるかは分からないけど、基本的には寿命の短い生き物での実験がメインらしい。まぁ、人でもある程度の数は試してるだろうけどな。」


 学問の都ソピア。色々な分野の学問を扱っていて、そのほぼ全てが世界のトップクラス。そのソピアでそんな研究がされていて、人道的とは思えない実験すらもしてるんだ。


 ソピアという国は凄い国だって認識だったけど、少しだけ考えが改まってしまった感じがある。その研究の結果、色々な知識や成果が齎されているって分かっていても、やっぱりちょっとだけ拒否感がある、かな。


「で、沢山の事象の観察や実験、統計から、ソピアの学者共がこの世には絶対に侵せない『理』があるって結論付けた訳だよ。さっきの蘇生方法はただの一例で、この世界の事象全てに働く『理』があるって。でな、『理』から外れるという事は即ち消失を意味するって結論だよ。」


「成る程?」


 レオさんは俺の考えが纏まったと判断したのか続きを話し始めてくれた。この世界では、『理』という不可侵の力が全てに働いてる可能性があるって事は理解できた。でも、『理』から外れたら消失というのはどういう事なんだろう。相槌を疑問代わりに使うと、レオさんが頭を撫でてくれる。


「『理』から外れて、過ぎた力を望んだとする。禁忌を犯して、自身には扱えない程の絶大な効果の及ぶスキルや魔法を取得したとするでしょ。」


 レオさんは口に出さなくても俺の疑問に答えてくれるらしい。ちょっと楽だけど、どうやって分かってるんだろ不思議だ。話し始めたレオさんにコクっと頷いてみる。


 レオさんは優しく目を細めて頬を撫でてくれた。今のレオさんは先生モードで優しいからいいですね。意地悪レオさんの2倍はいいかもしれない。


「禁忌を犯せば一時的には強大な力が身に宿る、らしいんだよ。でも、それは本当に一時的な事。最終的には自身に宿る全ての能力、魔法やスキル、特性すらも消失する。」


 うぁ、マジか。超強力なブーストをしたら、効果が切れるのと同時に廃人になっちゃいますよ的な感じだよね。そもそも、抜け道として、禁忌的な超ブーストが可能になってるって事実がもう怖いんだけど。そりゃ、自分は大丈夫でしょ、って手を出しちゃう輩もいるかもしれない、かな。


 レオさんは話し終わってネロに目を向けた。俺もつられてネロに目を向けてみる。ネロは穏やかな微笑みを浮かべて見守っていた。レオさんがネロを見つめながら俺の髪を撫で始めた。ネロの眉がぴくっと反応したのが見える。


 微妙な緊張感が二人を包み込んでいるんだけど、どうしたんだ。緊張感の中で、ネロがクラッカーを1つ取って渡してくれた。マッシュした卵の上にカットされたゆで卵まで乗っていて美味しそう。ニコっとしながら受け取ると、ネロもニコっと笑顔を返してくれた。


「さっき話した蘇生では、『理』から外れた魂は消失する。発動した魔法が『理』から外れる事があれば、魔法の効果は消失する、筈なんだよね。」


 ハムハムと食べていたら、レオさんが話を再開してくれた。ふむふむ、と頷いて聞いていたら、クラッカーからゆで卵がぽろっと落ちてしまった。丁度話し終えたレオさんが、俺の胸の上に落ちた卵を摘まんで口の中に放り込んでいる。


 取っておいたゆで卵を食べられてしまって、むぅっと不満な顔になってしまった。途端に、レオさんが超デレデレな顔になった。さっきのネロ並みにデレデレなんだけど。二人は絶賛親モードなのだろうか。ネロは分かるけど、レオさんもかなり親モードが板についてきちゃった気がする。


 でも、大体理解した。ネロの魔法がネロ以外の指示で動いた。それは『理』から外れているから、本来なら魔法の効果は消失する筈だった。そういう事ですよね。


「ん~、ホントはネロの指示じゃないと動かない筈のムニンとフギンが俺の指示で動いた。本当はその時点で消える筈だったって事?」


「イヤ、お前のトコに自分の意思で飛んで行こうとした時点で消えた筈、なんだよな。」


 俺の分かった範囲で確認を取ってみた。レオさんは少し困った顔で、訂正をしてきた。自分の意志で飛んでいこうとって、ネロが呼び出した直後じゃん。フギンが俺の肩に飛んできてくれた時でしょ。


 少し考えて分かっちゃった。分かったよ、って満面の笑みを浮かべてみたら、レオさんが首を傾げて疑問を伝えてきた。ネロもちょっとだけ首を傾げている。今回の二人は俺の考えを読めなかった模様。しょうがないな、教えてあげよう。


「ネロは規格外だから、魔元素も規格外なんだと思う。応用が利く魔元素なんだよ。」


「まぁね、それも否定はできないのが怖い。そもそも、お前を思っただけで湯を適温で沸かせるってのがヤバい。そう考えると、その可能性も大いにありうる気がしてくる。」


 ニコニコで名推理を披露してみた。レオさんは少し唖然としたみたいだ。この口を半開きで驚くレオさんの顔は結構好き。でも、直ぐに口を閉じちゃって悲しい。そして、立ち直ったレオさんは俺の考えに同調してくれる。レオさんの呆れと溜息と諦めが混じった口調からは、ネロが相当凄いって事だけは伝わってきた。


「ネロは凄いね。高性能魔元素搭載型ネロ。ちょっとカッコ良くない?」


 ニコニコでネロを表すカッコいいワードを作ってみた。ネロは微妙な顔になって、少し考えた後で微かに頷いてくれた。ネロはそんな微妙な顔ができるんだ。ちょっと可愛い。ネロの可愛さに和んでいたら、レオさんが慰めるようにネロの髪を撫でてあげてる。


 レオさんがネロの頭を撫でている。もうその事実が嬉しい。感動でウルウルとしてしまいますよ。だって、あのレオさんが。あの恥ずかしがり屋さんのレオさんが、ネロの頭を恥ずかしがらずに撫でているんだよ。しかも、エロさ0%で撫でている。この事実が感動的だ。


 俺が感激している事に気が付いたのか、レオさんが真顔になってしまった。しかも、ネロの頭からも手を離してしまった。悲しい。やっぱり、見ないフリをしておくべきだった。チラ見が重要になってくるとか、次からは気を付けよう。でもな、いざその場面になるとガン見しちゃうよね。


「お前はホントに可愛いな。でもな、そんな軽い内容じゃないのだけは覚えておけ。これがばれたらソピアの奴らがヤバい事になる。絶対に知られるなよ?」


 悲しさを堪えているのに、レオさんは真顔のままでクドクドと注意事項を言い渡してきた。知られるな、って俺じゃなくてネロに言おうよ。俺は関係ないじゃん。


「後な、呼び出した魔法の形が自分の意思で変わるのもおかしいからな。ネロの魔元素で作られてるんだから、如何なる影響も受けない、筈なんだよ。呼び出した後の形状変化はない、筈だったんだよ。」


 レオさんは真顔をキープして話を続けていく。ふむふむ、と頷いて聞いていたけど、何が言いたかったのかが分からなかった。あの子達は形なんて変わってなかった気がするもん。


「筈、が多いね。ってか、形は変わってないじゃん。可愛い鴉のままだったでしょ?あ、ちょっと煙っぽかったから、形が変わったといえば変わってたかも。もしかすると触っちゃ駄目だったのかな。」


 分からない事は直ぐに聞いてしまおう。幸い、レオさんは今、先生モードだ。質問には答えてくれるスタンスっぽいからね。やっぱり、意地悪レオさんの2倍くらいはいいですね。


 溜息を吐いたレオさんが優しく目を細めた。そして、一瞬だけど意地悪な目にもなった。もしかすると、今考えた事を読まれてしまったのかもしれない。えっとね、意地悪レオさんも少しはいいよ。嫌いではないんだよ。ってか、虐められるのも時々は刺激的で好きかも。さぁ、読んでみたまえ。


 レオさんの目がイヤらしく細められた。ヤバい。確実にばれてる気しかしない。何かを喋り出しそうなレオさんの口を両手で塞いでしまう。えへっと誤魔化し笑いをしてみると、優しい目に戻ってくれた。


 髪を優しく掻き上げてくれるレオさんはもう平気な気がする。そろそろっとレオさんの口から手を離すと、レオさんが天井を見上げて息を吐き出した。俺も天井を見上げてみる。雨粒がキラキラしていて、ちょっと綺麗かも。


「変わってただろ。自分達の意思で目の色を変えてた。それも形状変化に含まれる。」


「あ~、お願いしたらできたね。アレはヤバかった。可愛さが倍増になったよね。」


 レオさんが話し始めた優しい声が聞こえて、レオさんに視線を戻して、にこっとなっちゃう。色の変化も形状変化なんだ。成る程。確かに、あの子達にお願いしてみたら変えてくれた。あの時のあの子達は超可愛かった。ニコニコで、感想を伝えるとレオさんがスッと目を細めた。真剣な眼差しだ。


 イキナリのレオさんの真剣モードにびくっとなってしまう。レオさんが俺の頬に手を添えてきた。唐突な行動にびっくりして、レオさんの手首を掴んで顔を離してみる。


 レオさんはもう片手も俺の頬に添えて、両手で俺の顔を固定してきた。レオさんがグイっと顔を近付けて、目を合わせてくる。間近で真剣な眼差しで見つめられてちょっと困ってしまった。


「本来はそんな事は起こらないんだよ。間近で観察できる位置で、自分の発動した魔法が消失もせずに『理』から外れまくるのは、結構な恐怖なんだぞ。」


 レオさんが静かな口調でゆっくりと言い聞かせてくる。真剣な表情のレオさんの言葉は、魔法に疎い俺でも良く理解できた。魔法に疎くても、この世界の情報に疎くても、十分に理解できた。


 恐怖する程の事態を俺が引き起こしていた事も理解できた。冷静なネロが動揺する程の異常事態だった事も理解できた。ネロですら落ち込む程の恐怖体験だった事も十分に理解できた。スゴク時間をかけて説明をされて漸く理解できた。


「まじで?」


「まじで。」 


 一応足掻きとして、もう一度確認を取ってみた。レオさんは真剣な口調と表情で、俺の言葉をそっくりそのまま返してくる。冗談や嘘ではなく、純然たる事実な事は、レオさんの真剣な瞳を見れば分かる。


 レオさんが両手を頬から離してくれたから、少しだけ居住まいを正してネロに向かってペコっと頭を下げる。レオさんの膝の上で頭を下げる、という、しまらない体勢だ。


「ネロ、ごめんなさい。動揺して当然の事態だったね。知らないって事で片付けていい事じゃなかった。レオさんもありがとう。」


 ネロに向かって頭を下げてしっかりと謝る。本当にレオさんの言う通り、理解して謝らなければいけない事だった。顔を上げると、ネロが優しく頷いてくれる。レオさんに顔を向けて、レオさんには感謝を伝える。レオさんも優しく頷いて頭を撫でてくれた。


「問題無い。魔元素には意思が反映される事もある、との情報を目にした記憶がある。思い直すと、レオの言った心の投影は強ち間違いではない、かも。」


 レオさんの手がなくなると、ネロも頭を撫でてくれる。ネロは優しい声でいつも通り、問題無いって言ってくれた。そして、あの事象は起こりえた事態だった可能性も示唆している。心の投影って何の話だろう。レオさんが言ったって言葉から察するに、内緒話の時の言葉かな。


 ってか、そっか。あの時、二人は既に動揺してたのか。でも、俺を気遣って普通のフリをしてくれてたんだ。俺は何も知らずに、フギンとムニンの可愛さでテンションが上っちゃって、はしゃいじゃってた。


 あの何も知らない状態でレオさんにキツク言われたら、反発してたかもしれない。説明をここまで引き延ばしたのはある意味正解だったのかも。二人は俺の性格をよく知っているから、あの時説明するって選択肢を選ばなかったんだろうな。


「どういう事だよ。」


「俺の意思は琥珀に従えと命じていた、かもしれない。」


 レオさんがネロに対してきつい口調で問い質して、ネロは静かに説明している。ネロは本当に優しい。色々な可能性を考慮して、俺のせいじゃなかったって結論に持っていこうとしてるみたいだ。明らかに俺のせいなのに、庇ってくれてる。


「そう言われるとそうかもしれない。けどな、勝手に動いて、遊んで、色が変わったのはどう説明するんだよ。」


「それは、分からない。」


 レオさんは更にきつい口調でネロを問い詰めて、ネロが力なく答える声が聞こえた。レオさんはさっきまで優しく話してたのに、なんでネロにはそんなキツイ言い方になっちゃったの。ネロがしょんぼりしちゃったじゃん。


 レオさんの頬を両手で挟んで俺の方に向けてみる。きつい口調と同様に、きつい目付きで睨んでいたレオさんの目力が緩んで優しく変わってくれた。でも、許しません。レオさんを睨んでみると、レオさんは少しだけ怯んでくれた感がある。あんな風に詰問口調はネロが可哀想でしょ。


 レオさんが神妙な顔付きになったから、手を離してあげる事にした。自由になったのに、レオさんは俺を見つめ続けている。あ~、そうだね。ネロに強く当たって、ネロを凹ませちゃったから、きまり悪くてネロを見られないんだね。レオさんは可愛いですね。


 レオさんの頭を撫でてみる。レオさんが気持ち良さそうに目を細めた。でも、そっか、ネロでも分からない事もあるんだね。ネロは万能型だから、全てを知っているのかと思ってた。


「ネロにも分からない事あるんだね。じゃぁ、ムニンとフギンに直接聞いてみればいいじゃん。」


 ネロが分からないのであれば、本人達に直接聞いたらいい。疑問も解消されて、俺もあの子達にまた会える。ニコニコで提案をしてみると、ネロが驚いた顔になっちゃった。なんでそんな顔になったの。


「えっ、聞けるの?ってか、魔法なんだから意思なんてないだろ。だから、聞けないだろ?」


 ネロが何に驚いたのかを知りたくて首を傾げる横で、レオさんが口を挟んできた。聞けないだろって、普通に聞けるでしょ。あの子達はちゃんとお話をしてたし、ネロもあの子達のお話の通訳をしてくれた。


「ネロはあの子達の言葉を理解してたじゃん。あの子達も何か話すモーションをしてたし。お話ができるならネロが教えてくれるでしょ。ネロ、あの子達を呼んで欲しいな。」


 ネロは俺を凝視して止まっているけど、お願いって意味を込めてニッコリしてみる。ネロがふっと頬を緩めてくれた。そして、目を細めて頷いてくれる。


「おい、大丈夫か?平気か?やめてもいいんだぞ?琥珀は俺が抑えるから、無理をするな。」


 レオさんが心配そうにネロを覗き込んでいる。掛けてる声も言葉も超心配そう。レオさんが超優しい。これはぐっとくるものがある。普段はそっけない態度なのに、いざという時にはこんなに心配してくれるとかヤバい。


 レオさんの顔はネロに向けられていて、後頭部が見える。猫耳が真っ直ぐネロに向いていて、めっちゃ心配してるって良く分かる。レオさんは、マジでキュンキュンさせてくるから困る。


 レオさんにはどきっとさせられるシーンが多いけど、今回のもかなり良かった。レオさんには心の中で、彼氏にしたいナンバーワンを贈呈してあげよう。暫定一位だ。ネロが惚れるのも間違いないかっこ良さですね。


「さて、問題です。今、琥珀が考えた内容を俺の口から言うのと、琥珀が自ら言うの、どちらが被害が少なく済むでしょうか。」


 レオさんがネロの方を向いたままで、低い声で出題してきた。くそぉ、勘が良過ぎる。顔が見えなくても読んでくるじゃん。卑怯だ。


「誰も口に出さないのが一番被害は少ないと思います。」


 誰も口にする必要なんてないじゃん。沈黙が一番なんだよ。レオさんは俺の回答を聞いて、クスッと笑った気がする。こっちを見ないのは卑怯だ。表情が見えないじゃん。


「成る程ね~。じゃあ、確認の為に両方試してみるか。まず俺から言うね。」


 レオさんが静かな声で提案をしてきた。なんとも言えない迫力のあるぞくっとした響きだ。表情が見えないのが超怖い。この沈黙が訪れてる空間がもう怖い。レオさんに言われるなら自分で言うよ。


「待って。レオさんは彼氏にしたいナンバーワン。暫定一位で、ネロが惚れるのも間違いないかっこ良さって思っただけです。」


 早口で言い切って二人を眺める。ぎぎぃっと音がしそうな程、ぎこちなくゆっくりとレオさんが俺の方に向き直ってきた。レオさんは唖然としているし、ネロは呆然としている。


 この組み合わせはもういいよ。やっぱりダメージがあったじゃん。ネロとレオさんだけじゃなくて本人までがも喰らっちゃったじゃん。みんな攻撃を喰らった感じになっちゃった。ヤバい攻撃だったのは確かだ。


「やっぱり、正解が沈黙だったじゃん。みんなにダメージとか、恐ろしい全体攻撃だった。」


「それな、色々な意味でショックを受ける攻撃だった。真面目に話をしてる時に、お前は何を考えてるんだ。」


 レオさんのせいで変な空気になっちゃったじゃん。文句を言うと、レオさんも静かに言い返してくる。まぁ、確かに真面目な最中に変な思考になっちゃったのは否めない。何も言い返せません。


 レオさんと目を合わせて頷き合っていたら、ネロの詠唱が聞こえてきた。詠唱が終わるのと同時に、黒い靄が出現する。ネロの太腿の上に置かれた俺の脛に二羽の揺らめく鴉が留まっていた。


 二羽の鴉はネロを見上げて視線を交わしている。そして、俺の脚を伝ってトコトコとこっちに歩いてきてくれた。胸の上まで移動してきた所で薄緑色の瞳の鴉が俺の肩に飛び乗った。水色の瞳の鴉は胸の上で蹲って、俺を見つめて首を傾げている。ヤバい、超可愛い。


「さっきぶりだね。デザートを教えてくれてありがとね。」


 肩のムニンが髪を啄む感じで可愛さをアピールしてきたから撫でてあげる。実際には触れないけど、モーションだけで満足してくれたっぽい。胸の上のフギンが頭を摺り寄せて構ってアピールをしてきた。フギンも勿論撫でてあげる。


 どう見ても、自分の意志で構ってアピールをしてるようにしか見えない。ネロとレオさんに目を向けると、二人は目を丸くしていた。同じ驚きの表情だ。めっちゃ可愛い。鳥も猫もみんな可愛い。結論、この世界は可愛い世界。


「超可愛い。やっぱり、ちゃんと意思を持ってそうだよ。ネロが命令をしたんじゃないんでしょ?」


「違う。」


 ネロも驚き中っぽいけど、一応聞いてみる。ネロは瞬きをした後で真顔になって否定してきた。まぁね、今の驚き顔を見ちゃったら聞くまでもなかったね。


「ムニン、フギン。教えて欲しいんだけど、自分達で考えて行動ができるの?」


 二羽を交互に見て、質問をしてみる。胸の上のフギンが嘴を可愛く動かして何かを主張している。何かを答えてくれてるのは分かるけど、言葉は分からない。


「できる。と言っている。」


 ネロが通訳をしてくれたでゴザル。ネロは万能だ。超カッコいい。マジで、レオさんの言う通り、10倍はカッコいい。レオさんなんか足元にも及ばない程のカッコ良さ。流石ネロだ。そして、レオさんも的確に表現できてたから、ちょっとだけ流石と言っておこう。


「だから、ネロの魔法だと言ってるだろう。通訳じゃねぇよ、自分の魔法なの。10倍なのは強さだよ。俺が彼氏ナンバーワンじゃねぇのかよ。」


「覗きをするとか良くないと思います。」


 目を輝かせながらネロの凄さを心中で称えていたら、レオさんが口を出してきた。勝手に俺の心を読んだ上に、文句まで言ってくるレオさんは何なの。ジト目でレオさんを非難してしまう。


 フギンとムニンも何かを訴えるみたいに、レオさんに向かって嘴を動かしてる。超可愛い。ネロがクスっと笑ったのが見えた。何を言ってたんだろう。首を傾げて通訳をお願いしたけど、ネロが首を横に振ってしまった。教えてくれないらしい。


「じゃぁ、君達はネロの魔元素でできてるの?」


 一部邪魔が入ったけど、気を取り直して質問を続けてみた。肩の上のムニンが俺を覗き込んで嘴を動かしている。可愛らしく話し掛けてくるムニンの言葉は分からないけど、うんうん、って頷いてみる。


「俺と、少し琥珀。らしい。」


「少しって、どういう事なんだろ。」


 ネロが困った感じで通訳してくれた。ネロの困った顔は理解ができてないって事なのか、それとも異常事態って事なのか。どっちの意味なんだろう。それに、少しっていうのが曖昧な表現で良く分からない。


「魔法って、混ざり合って発動する事なんてあるの?そんなの初耳なんだけど。」


 レオさんがネロに質問を始めた。俺の疑問より遥かに高度な事を聞いてる気がするけど、分かってますよ風を装ってニコニコしておこう。混ざり合って発動って何の話だよ。でも、全く理解が及んでなかったって事は気付かれてない筈。


 レオさんがジト目で見ている気がするけど気にしない。ね、ネロの答えを待っているんだよ。レオさんが聞きたがってるんだから、早く教えて。ネロを見つめてニコっとしてみる。ネロは戸惑った様子でちらっとレオさんに目を向けた。


「無い事は無い。効果が異常に高い魔法、或いは広範囲に及ぶ大規模な魔法は複数人で構築、発動する事もあったと文献に記されていた。どちらにしても、古い魔法の話。今では、合成の際に多少見られる程度。」


 レオさんと目を合わせる事でネロの戸惑いが消えて、静かに淡々と説明を始めてくれた。文献レベルの凄い魔法だと複数人で発動する事もあったんだ。古い魔法って事は、今は誰もやらないって事だよね。魔法で合成ってのは、前に聞いた、魔法でアイテムを作るって事なのかな。


 でも、複数人で発動、か。ある意味、共同で魔法を発動って意味に取れるよね。俺の魔元素が二羽の構築に使われているのであれば、俺の魔法って事にもなってくるのではないだろうか。だって、魔法を使う際の必須な項目の一部を俺の魔元素が担ってるんだもん。


「成る程~。って事は、ネロと俺の共同魔法になる訳ですね。つまり。実質的に、俺が魔法を使ってると言ってもいいのではないだろうか。ね、凄くない?魔法を使えない呪いに掛けられた俺が、魔法を使えるとか。ヤバくない?」


 目がキラッキラになってる自身がある。だって、俺がこの子達を呼び出したと言っても過言ではない気がしてきたんだもん。ヤバいね。テンション高めで二人に報告をしちゃった。

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