自分を見極めに行ってくる 悠里 6
結局、翌日もブカレスト観光に繰り出して、帰国の前日にまた私達はゲオルゲおじ様のお屋敷に私達は集まっている。
「で、悠里は観光を楽しめたのかい?」
「はい、美術品とかよりも、普通の人の暮らしが知れて嬉しかったですよ。おじ様」
「うん、まだ先の話だけど、悠里は、ルーマニア人になるかい?」
「おじ様……私も皆の側にいたいけど、コミュニティーで浮くんじゃない?」
「大丈夫だよ。その頃には皆お婆ちゃんだもの」
「そうだよ。皆で近くに住んで今見たくお茶したくない?」
「うん、凄く楽しかったわ。だから……私はこっちに来たい」
「分かったよ。その時が来たら、皆が準備してあげなさい」
「分かりました。おじ様」
「さあ、年寄りは夜が早くて困るね。僕の部屋は離れているから、ここで騒いでいる分には構わないよ。お休み」
そう言うと、おじ様はダイニングルームから出て行った。
「良かった。老後は皆で暮らせるんだね」
「そっか。おじ様のお屋敷で皆で暮らしてもいいよね?アンジーこの家に一人は寂しくない?」
「その頃には彼がいるけど……部屋が無駄に余っているものね。楽しそう」
「今度はさ、皆のパートナーを連れてここに集まるのってどうよ?」
「それもいいね。それと、結婚式には出席してよ」
「ダリヤ。君にはそんなパートナーがいるの?」
「いるわよ。そうね、三カ月後には式を上げる予定だから、ブルガリアに来てね」
いきなりのダリヤの宣言に私達は目を丸くする。
「実はね……彼との子がここにいるの」
そういってダリヤはお腹に手を当てる。そこには新しい世代の命が宿されていた。
「いいなあ。私達って妊娠しずらいってママから聞いていたのにね。嬉しくって」
「それは俺達も言われている。だから二人で生きて行くことを考えながらのんびりと過ごしなさいってね」
今回の旅行で始めて知らされる事が多いなあと感心する。そうか子供出来辛いのか。一弥さんにもその事を言わないといけないわね。私は戻ってからやらなければならない事を確認する。明日は、彼が成田まで迎えに来てくれる。
「私達の事はともかく、皆はどうなの?」
ダリヤが私達に恋愛状況をふってきたよ。この話って世界どこでも同じなのね。
ただいとこ達の恋愛事情ってのもなんか聞きたい様な聞きたくない様な。
「この中だと一番恋愛を楽しんでいるのは、アウルでしょう?」
「どうかな?どっちかというと僕はコルネと同じスタンスだよ。ちょっとだけ女の子の血を分けて貰えればいいんだ。だから、僕の支配が効く前に分かれる様にしている。そういうふうに考えることができる女の子に会ったことないからね」
「お前は意外に食い散らかしているのかと思った」
「そんなことないって。クリスはどうなのさ?」
「僕は……なるようになるかなって思っている。その前にこの人って人がいないんだと思うよ」
「ふうん、遊んでいるようでそこまでではないんだ」
「ちょっと。悠里、俺達どんだけ遊んでいる設定なのさ?」
何か、コルネ達はなんか釈然としていないみたいだけどね。でも……今までそうやって思っていたんだから仕方ないよね?
「俺としては、悠里の始めての恋が気になるよね」
「うん。あんなに怖いって言ってた奥手すぎる悠里がね」
「俺ね……悠里が嫌じゃなければ、パートナーを前提で付き合ってもいいかなって思ってはいたんだよ」
「コルネ……」
「まあ、今はステディがいるって事だし。これからそういう関係になろうとしているから今は何もしないよ。もしも彼と別れたら……僕が立候補してもいいかい?」
「彼と別れたらね。でも、私には一族の男性の方がいいのかもしれないって今少しだけ思ったかも」
「悠里、その話は私達の前だけにして。若い子達はあなたの血を狙っている可能性もあるからね?」
「ダリヤが言っている事はあながち間違っていないよ。あいつ等は先祖返りの悠里に興味を持っているから。接触を持たない様がいい」
「分かったわ。たまにメールは来るのよ。学校がなければ会えるのにって」
私はこないだ届いた私にとってはとこの子位血縁者?って思えるくらいの子から届いたメールを皆に見せる。
「コレ……絶対に相手にしないことよ」
「していないし、私が返信したのはコレね」
そこには、仕事があまりにも忙しいので来日されても面倒なんて見てあげられません。来ないでくださいと思い切り拒絶している返信メールだった。
「悠里、いいよ。それ」
「こんなに直球で返されたら普通は立ち直れないって」
皆お腹を抱えて笑い転げているけれども、私に仕事は本当に忙しいのだ。
「笑うのはいいんだけどさ、私本当に忙しいんだよ。おじさんの病院に行く位しか休みないんだから」
「それは……本当に忙しいんだね」
「でしょう?休みの日位ゆっくり眠りたいって。滅多に会わない年下のお守はもう嫌よ」
それなりに稼ぎはあるけれども、それ相応のハードな生活なのだ。
「ねえ、のんびりとここで6日も過ごしていいの?半年分以上のんびりした?」
「したよ。暫くはこれであの仕事を頑張れそうよ」
私はにっこりとほほ笑む。久しぶりの皆の再会が私の背中を押してくれる。
大丈夫、一弥さんと別れても私にはこんなにも優しいいとこ達が傍にいてくれる事が通関できる幸せな一週間だった。
「あーあ。私も日本に行きたい」
「ダリヤは暫くはブルガリアにいなさいね。ママになるんだから」
「分かっているわよ」
「そうね……子供がフライトに耐えられるようになってからいらっしゃいな。温泉旅館でも行こうか?」
「温泉?いいね。ダリヤは暫くは我慢よ。いい?」
「そうよ。全ての幸せはここにいるんだもん?ベイビーちゃん?」
「おじちゃんもおばちゃんも君がちゃんと生まれてくるのを待っているからね」
私達は代わる代わるダリヤのお腹を触れる。まだペッたんこなダリヤのお腹には着実に新しい命が芽生えている。
「おじ様は?」
「喜んでくれたわ。今の時代は血縁結婚する時代じゃないよって言ってくれたわ」
おじ様達は、その事でかなり辛い恋愛をしていたと思う。ひいおじいちゃんたちだって今だからお婆ちゃんは笑いながら話してくれるけど、大変だったと思う。
「ダリヤの身体が大事だから、今夜はお開きにしようか?」
ダイニングに置いてあるおつまみのプレートを私は片づけてから今日の飲み会は解散することになった。
「それじゃあ、また会おうな」
「うん。そうだね」
「悠里、温泉は草津がいいわ」
「エレナ……なぜ草津?」
「恋の病も直してくれるんでしょう?」
「それは例えと言うか、そう言うことないから」
私とエレナは少しだけ言い合いをする。
「ほらっ、悠里。時間だよ。」
コルネに促される。私達はフランクフルトまで一緒に行くことにしていた。フランクフルトで私達は各自の国への直行便にトランジットする事になっている。偶々、アンジーのニューヨーク便も私の成田便もほぼ同じ時刻にフライトがあるのだ。私達が無事に手続きが終わってからコルネは自分の家に戻ると言う。
コルネの今のマンションなフランクフルトの住宅街にあるという。空港からのアクセスも問題はないという。
「それじゃあ、私達は帰るね。また会おうね」
「今度は、ブルガリアじゃないかな?その前にダリヤの結婚式があるよ」
「そうだった。それじゃあまたね」
私達は別れを惜しんでから、出国ゲートに向かって行った。
珍しく定刻のフライトで定刻通りにフランクフルトに着いた。まずはトランジットまでは6時間あるから、まずは通常の手続きを踏む。目に着いたカフェで三人でお茶をする事にした。
「コルネは、暫くはフランクフルト?」
「そう思っていたけど、そのうちルーマニアに戻るかも。悠里のお陰だよ」
「どうして?」
「悠里の博物館巡りをして、刺激は少ないけどルーマニアもいいなあって思ってさ」
「私もそう思った。仕事がひと段落したら、ルーマニアでも今の仕事が出来るかどうかおじ様達の相談して私もなるべく早くルーマニアに戻ろうと思う」
「アンジーも?コルネと同じ理由?」
「私は母国の時間の経過が身体にあっているからね。ニューヨークもいいけどちょっと疲れてきたかも」
アンジーは今は新人の空間デザイナーだ。仕事が軌道に乗ってくれば……ルーマニアでも暮らせるだろう。私の仕事は?ルーマニアでもできるのだろうか?
「悠里の工業デザインならルーマニアでもできるわよ。少しずつしているんでしょう?」
今の部署だと、デザイナーも兼ねているので待遇はかなりいいと思う。
「海外で独立は大変だから、日本で独立して、一定の仕事量を受けるようになってからがいいわ」
アンジーはビジネスでかなり苦労しているようだ。
「仕事は軌道に乗ったの?」
「うん、今ではヨーロッパでの契約もあるから、思い切ってルーマニアに帰ってもいいかなってね」
「成程ね。私ももっと頑張らないと……週明けからの会社が怖いわ」
でも、会社に行く前に私にはする事が残っている。
「その前にやる事があるだろう?」
「うん。分かっているよ。あっ、アンジーそろそろ時間だよ」
「本当だ。コルネボディーガード御苦労さま」
「いいえ。この程度で感謝されるとは嬉しいね」
そう言うと、私の唇を掠め取られた。
「ちょっと、コルネ!!」
「その位いいじゃない。彼氏と別れた時の予約って事で」
「ちょっと不吉なことしないでよ。私達は幸せなの」
「はいはい。飛行機が行っちゃうよ。それじゃあまたな」
私達は慌てて搭乗ゲートに移動した。
実際にはアンジーの方が遅く出発に変更になったので私を見送ってくれた。
「それじゃあね。悠里。休みが出来たら今度は日本に行くわ」
「いいわよ。楽しみに待ってる。それじゃあ先に帰るね」
無事に搭乗手続きを終わらせて、私はタラップを歩き出した。
「悠里!!」
成田に到着して手続きが終わったところで一弥さんが待っていた。
「ただいま。お迎えありがとうございます」
「寂しかった。悠里は?」
「凄く会いたくて、電話したら泣いてしまいそうだから出来ませんでした」
私が本音を吐露したら、痛い位に抱き締められた。
「悠里、可愛すぎ。今夜……どうする?」
「それなんですけど。一弥さん、明日仕事ですか?」
「いいや。違うけど」
「だったら……近くのホテルを取ったので、ゆっくりと旅の話も私の事も話したいんです」
私自身の最初の一歩はここから始まる。明日は一弥さんも休みだって言うから少しは夜更かしをしてもいいですよね?一弥さん?
ここからは先は大人の時間なのです。いずれは挿入で書き込みたいですが、今回はここで終了(ある意味得意な寸止めプレー)




