【054】
クラスメイトはカレンが貴族ではなく――そして、傲慢でもない人柄の良さから、すぐに馴染むことが出来た。
新しいこと知る楽しみや、もともと薬学についての心得もあってか、すぐにクラスにおいて上位の成績を収めるに至った。自分が頑張ることこそが、サンタフェリアの街を復興させることに繋がるのだ。
カレンが頑張らないはずなど無かった。
そして、月日は大きく流れる。
カレンは学園一の優等生として卒業を迎えた。しかし、これはカレンにとって通過点であり、これからが本番であった。カレンは、サンタフェリア復興がグロリアス王国発展にも繋がるとする論文を発表し、王国から正式に資金援助を受けることが決定した。
そう、何もかもこれから始まるのだ。
カレンは、久しぶりにサンタフェリアの村へと下見がてら訪れていた。
さすがに、何も変わらない――と言うには、無理があった。薬草は枯れ果て、それに代わって雑草が生い茂り、少し前まで薬草の村と言われていた村とは、到底思えなかった。
そして、数年ぶりに自宅にも訪れた。
自分の家だと言うのに、苔や蔦に覆われた自宅は、まるで自分の家では無いように思わせた。
扉をぎいっと開く。
一歩中へと入ると、室内は埃っぽく、月日が流れたことをまたしても感じさせられた。そして、二歩目を踏み出すと、足にぶつかる物があった。
「あ……」
それは、スゥのオルゴールだった。
「……スゥちゃん」
カレンは、スゥとの最後のやり取りを思い出す。
なぜ、今の今まで忘れてしまっていたのだろうか。
カレンは、そのオルゴールを拾い上げ、ネジを巻くがその音は鳴り響くことは無かった。落とした時に壊れてしまったのだろうか。その様はまるで、ぽっかりと空いてしまったスゥとの時間のようだった。
そして、オルゴールを胸へ抱き寄せ、カレンは自然と涙を流し、声を上げていた。カレンは、この数年という月日をサンタフェリアの為だけを考えて、必死に駆け抜けた。他のことを何も考えられない程に。
周りの皆に頼り過ぎてしまった自分には、これ以上頼るわけにはいかないと言う気持ちが心の奥にあった。ただ、自分が好きになった相手――スゥには、心の拠り所としても良いのかなと、カレンはそう思った。
そのためには、自分出来ることを精一杯やらなければならない。
まずその第一歩が、サンタフェリアの復興だ。こんな状態では、スゥが遊びに来た時に、ここが自分の生まれ育った村だと胸を張って紹介することだって出来やしない。
今のカレンにとって、スゥとの再会こそが心の拠り所であり、頑張れる源なのだ。
「……よし!」
カレンは、袖で涙を拭い去り、自分自身へと喝を入れたのだった。




