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最果てのホライズン  作者: 椎名乃奈
第御章 ばんがい
51/60

【051】


「もともと、流行り病が拡大したのはグロリアス王国だった。王国の学者達による研究と解析によって治療に何が必要かが分かり、憲兵団が派遣された先がここサンタフェリアだったのだ」


 カレンは、なぜ憲兵団の派遣先がサンタフェリアだったのか、それを直ぐに理解出来た。


「サンタフェリアの薬草……」

「ああ、そうだ。グロリアス王国は、サンタフェリアの薬草に目を付け、そして――それらを全て残さず奪い去って行ったのだ」

「でも、どうしてサンタフェリアの村が!」


 カレンは、声を荒げる。


「如何せん、感染力が非常に高い。派遣された憲兵団の中に流行り病を患って者が居たのだろう。直ぐに適切な処置さえ行えれば、ここまでの被害を被ることは無かったはずだった。しかし、この有様では……」


 クロイツは、そこで言葉を詰まらせ、周囲を見渡した。そこは、以前であれば生い茂る程の薬草が栽培されていたのだが、その全てが刈り取られ、無残にも土だけが剥き出しになっていた。


「そんな……」


 カレンの家族や村が壊滅してしまったその真実は、私利私欲にまみれた大人達の自分勝手な行動だった。


 真実とは時に残酷なものである。


 その真実が酷なものであるならば、尚更だ。嘘も方便として、真実を伝えない方法もあったのかもしれないが、クロイツはそれを選ばなかった。それが優しさとなったのか、本人の為になったのか――今は、それは分からない。


 しかし、クロイツは包み隠すことをせず、全て伝えたのだった。


 まだ、幼いカレンを対等な人間として見て。


「私の留守の隙をついて、国王の独断で憲兵団を動かしていたのだ。私が居れば、そんなことなど決してさせはしなかった。これは、団長である私の責任だ」


 クロイツは、地面へ思い切り拳を落とす。何度も、何度も――その拳からは、血が滲み出てるほどであった。


「もう止めて、クロイツさん」


 そんな姿を見て、カレンはクロイツを止めた。クロイツがどれだけ悔しい思いだったのか――自分とその気持ちは同じであると、それを理解出来たからだ。


「クロイツさんの気持ちは分かりました。だけど、今は受け入れることはまだ、心の整理が付かなくて出来ません。でも……」


 その時のことだった。


 カレンは、ふわりとどこか遠くへ飛んで行くかの様に、クロイツの体へもたれ掛かり、意識を失ってしまった。


「大丈夫かっ!」


 クロイツの声に反応は無い。カレンの額に手を当ててみると、ひどい高熱であった。クロイツの嫌な予感は的中した。カレンは、流行り病を患っていたのだ。ただどういうわけか、他の者達よりも発症が遅れていた。


 もしも、この村の者と同じ時期に発症していようものなら、この子供も同じように被害に遭っていたと思うとクロイツは、この子にとって今発症したと言うことは救いだったのかもしれない――そう思っていた。


「至急、荷馬車まで戻るぞ。そこに予備の薬があるから治療をする」

「しかしっ!」

「いい、行くぞっ!」


 部下の声を振り切るように遮り、クロイツの声で現場はピリリと引き締まる。同じ過ちは犯すまいという気持ちは、皆同じだった。


 カレンが目を覚ますのは、それから数日経ってのことだった。



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