【050】
「気を付けろ、感染の疑いもある」
「了解」
防護服を着た大人達は、カレンを囲みながらも一定以上の距離を保ち、今以上に不用意に近づこうとはして来なかった。まるで、カレンを恐れ、避けている様にも見える。
「あの、この村で何があったんですか!」
カレンの問い掛けに、大人達は顔を見合わせ、何やら困惑していた。
「君は、この村の子供じゃ無いのかい?」
「はい、この村で育ちました」
大人達は首を傾げ、再び顔を見合わせる。
「だったら、どうして何も知らないんだい?」
「何も、知らない?」
「この村は、流行り病で滅びてしまったんだよ」
カレンには、この大人達が何を言っているのか分からなかった。正確には、何を言っているのか分からないわけでは無い。その言葉の意味は理解出来る。しかし、上手くこの状況、その話を理解出来ないでいた。
「だって、遂この間まではお父さんもお母さんも、お爺ちゃんやお婆ちゃん。村の皆だって――」
カレンは、精一杯ホライズンへ行く前のこの村の状況を説明するが、その話を聞く大人達は、終始俯いていた。カレンが必死に説明すればするほど、大人としての責任を果たせなかったことに対して、心を締め付けられるのだ。
「残念だけど、この村の人は誰一人として助けることは出来なかったよ」
「そんな……」
カレンはその言葉に、思わず俯いた。
「今日で捜索は最後だったのだけれど、君一人でも見つけることが出来て本当に良かったよ」
防護服を着た大人の一人が、防具服の頭部を脱ぐ。その行動に他の隊員は動揺を隠せなかったが、その人はそんなことなど気にもしていない。そして、カレンの肩へポンと手を置いた。
「……本当に、良かった」
肩をポンと叩かれ顔を上げたカレンが見たものは、他人であるはずのカレンの為に、惜しみなく涙を浮かべ、心からカレンの生存を祝福するくしゃくしゃの笑顔であった。
「悲しければ泣けばいい。そうして、人は強くなっていくものだ」
その男性の表情に、その言葉に安堵したのか、カレンも思わず涙する。内に溜め込んでいたその思いを受け止めるかのように、男性はカレンを抱き寄せる。カレン自身もなぜだか、見知らぬこの男性へ安心感を覚えていた。
男性はカレンの泣き止むのを待ち、説明を始めた。
「我々は、グロリアス王国の憲兵団で、私は団長のクロイツだ。そして、我々がここへ来たのは調査とここの住人だった者達への弔いの為だ」
「弔い?」
カレンは、小さく首を傾げる。まだ幼いカレンには、弔いと言うその言葉自体の意味が分からなかった。
「ここの村の者達は皆、我がグロリアス王国の犠牲となってしまったのだ」
クロイツは額を手で覆い、苦しそうにそう言った。




