【041】
その少女には、生まれつき翼が生えていた。
鳥の様に、普通の人間では見渡すことの出来ないであろう景色を見渡せる――そんな翼を幼い少女は背中に生やしていた。
その性か。
そんな少女を皆忌み嫌った。
少女の容姿が人間とも、動物とも似つかない、どっち付かずの存在であったから。
人間の住む街に行けば、
「お前みたいな翼を生やした奴は、森で動物とでも一緒に暮らすんだな」
と、追い返される。
動物の住む森に行けば、
「お前みたいな身体をした奴は、街で人間とでも一緒に暮らすんだな」
と、追い返される。
少女には、どこにも居場所が無かった。人間としても、動物としても。それは、同時にこの世界において、自分と言う存在が必要ではないと言うことを示していた。
それでも。
少女は、その歩を止めることをしなかった。
もっと遠くに行けばきっと、自分の居場所がある――そう信じていたから。
しかし。
少女のその気持ちとは裏腹に他者と接すると言うことに臆病になっていた。口を開けば追い返され、喋らずともその場に居るだけで石を投げられる。それは、まだ幼い少女にとって辛い現実であった。
だからこそ。
少女は、求めたのかもしれない。
自分の居られる、自分を認めて貰える――そんな居場所を。
すると。
どこからか、音が聞こえて来た。
どこかで聞き覚えのある音だった。
確か。
汽車が鳴らす汽笛と言う音。
少女は、いくつかの街を渡る時にそれを見聞きしていた。その乗り物に乗るとどこか見知らぬ遠くの地へと行けるらしい。だが、それに乗るにはお金と言う通貨が必要だと言われ、追い返されたのを覚えている。
それなら。
今度は、こっそりと忍び込めば良い。
汽笛の鳴る方へ、少女は歩く。
汽笛の音が近くなるにつれ、次第にその歩は早まり、気付けば高鳴る鼓動を抑えながら、駆け出していた。
そして。
少女は、その光景に目を奪われた。
汽車自体は、少女が街で見かけたモノとそう変わりは無かったが、明らかに普通ではない光景がそこにはあった。
通常。
汽車は、線路と言う陸路に敷かれたレールの上を走り、次の目的地を目指す乗り物である。
しかし。
それこそが普通では無かった。
それは。
その線路の行先が天へと続いていたから。




