第八話:教授とは
第八話
作戦は次の日決行と言う実に思い立ったが吉日なものだった。
「夕方、教授の研究室に両手両足猿ぐつわ装備の気焔さんを放り込んで教授のアジトを特定。現場を押さえ倒します」
「…」
失敗しそうな匂いしかしない。
「気焔さん、嫌なら辞めたほうがいい」
「大丈夫。何かあったら…」
自信満々の顔で俺を見てくれる。
「スガーさんが助けてくれるっ」
「……うん、そうだね、うん」
期待していたのはちょっとだけ。いいんです、俺は普通の人間だから。
こんな感じで午前中が終わる。結局俺はもしかしたら教授にゲロっちゃうかもしれないからとの理由で詳しい内容は教えてもらえなかった。
どこまで信用されていないんだと傷心を癒やすため、学食へ。
「おや、田原君」
「教授…」
そこには件の教授が居た。いや、いつもいるか。
素うどんを頼んで教授の前の席に失礼する。
「教授ってなんで妖怪とかそう言った物を調べているんですか」
「僕は妖怪が神様の零落した姿だという説に賛成だ。それを実証するため妖怪を探しているんだよ」
答えてもらって悪いけど、よくわからなかった。
「えーと、つまり?」
「つまり…」
教授が呆れる事なんて滅多にない。いつもどこかを見ていて今は俺ではなく遠くの方を見ているようだった。
「…そうだねぇ、神様になりたいって願望があるのかもしれない」
「それとさっきの答えの共通点は?」
呑み込みの悪い俺はさらに質問していた。そんな俺に教授は苦笑している。
「いつもこのぐらい質問してくれれば受け持っている僕としては嬉しいんだけどね」
「今後頑張りますよ」
「そうか…じゃあ答えよう。僕は妖怪を神様に昇華させたい。そしてその過程を知り人が、神様になる可能性を探しているんだ」
「可能性…」
「神は万能じゃあない。でも人よりかは優れているのは間違いない。それを人に認めさせるために僕は探しているんだよ…ここだけの話…」
教授は実に厭らしい笑みを浮かべる。
「…材料はそれなりに手に入っていてね、結構回数を重ねているんだ。徐々に成功に近づいてきている。信じられないかもしれないけど…おっと、僕は昼からの講義の準備があるから失礼するよ」
「あ…はい」
いつもの教授に戻って去って行った。正直、あの人だったら素面で世界征服でもたくらんでいそうだ。
教授の背中を見送っていると白衣の女性が食堂に入ってきた。
「ああ、宮本君」
「げ、ゴキブリ」
そんなやり取りを見ていると相手の女性がどこかで見た事ある人だと気付く。
「あれは…」
「あ…ゴキブリ、わたし待ち人居るからじゃあねー」
そういって俺のところまで綺麗なお姉さんがやってくる。
綺麗なお姉さんにはとげがある。いや、お股に生えたと…いや、何でもない。
少々警戒しつつ相手を見る。
「まさかここの学生だったとはねー」
「…教授…ですよね」
白衣を着ている(いやきていない教授も当然いるが)、食堂のおばちゃんに右手を上げる(これはこの学食に伝わるチキンカツ定食と言う意味だ)、そして何より胸に輝く『羽津大学 宮本雪』という名札。
こんな名札は見た事もないけど教授なのだろう。
「宮本雪よ。よろしく」
「はぁ、よろしく」
差し出された右手を掴み軽く握手する。
「ふーん…三点かな」
「は?」
「面、性格、頭のよさの総合点。一生彼女ができず女の事も話せず最終的に猫を助けようとして失敗し死ぬようなそんな人生」
「……」
なるほど、教授の知り合いだけあって変な人っぽそうだ。いや、変な人だ。
「でも大丈夫、今日わたしのお昼代を肩代わりしてくれるだけで女の子、ついでに男の子にも囲まれてうはうはになれるから」
「……いっぺん詐欺にあうといいですよ」
息子なんかから電話がかかってきてもお金を振り込んではいけません。それは詐欺の疑いがあります……なんてよくニュースでやっているけど嘘っぽく聞こえる。
さて、この後はどうしようか…。




