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黒の小冊子  作者: 雨月
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第七話:焔女の囮

第七話

 本人の居ないところで勝手に承諾したら怒られるだろう。もしくは訴えられるかもしれない。あれ?でも気焔さんって人間じゃないから人権そのもの…とか言いだしたらきりがないので置いておこう。

 とりあえずサークル活動で教授を適当に慰め俺と真白さんは俺の家へと向かっていた。

「詳しくは本人かー。彼女?」

「彼女違う」

「ふーん、ま、いいや。とりあえず気焔さんにも話しておくよ」

 玄関を開けると気焔さんが走ってきた。

「大地、子供がっ」

 たったそれだけの言葉で何かに行きつく真白六花さん。

「……なるほどねぇ、彼女じゃなくて女房か」

 女房は古いだろう…じゃなくてだ。

「こ、子供って…どういうこと?」

 情報とは詳しく知る必要がある。間違いを起こさない為である。いや、何だか起こしちゃった感がある会話だけどな…。

 俺の不安とは別に怒りに染まった気焔さんはいつもよりちょっと大きめの声で言葉を吐いた。

「子供がうるさいっ。近所の子供成敗したいっ」

「ああ、昼寝してたのね」

 創立記念日か何かなのだろう。そういえば午前中から小学生っぽい集団を何度か見た気がする。

 いつもだったらまぁまぁ、子供のする事だからとなだめて終わりのはずだ。残念ながら今日はヒーローの方がおうち訪問をしていた。

「成敗?よしきたっ」

 成敗とか天誅とか叫んで闇討ちしそうな感じである。ヒーローなのに。

「いや、待って。子供だからね?子供は騒ぐのが…」

 二人を落ちつかせるのに十分と一発の時間がかかった。まさか殴られるとは思わなかった。

「それで、真白さんは気焔さんにどういった用事があると?」

 打たれた頬を摩りつつ(殴られた時修正してやるっって聞こえた)、お茶を眺めている相手に尋ねる。

「ぶっちゃけていうと教授を暴くおとりになってもらいたいのね」

「教授?おとり?」

 さっぱり意味がわからないと言った様子だった。俺の方を見られても困る。俺も意味がわからないし、何の囮なのか理解できない。

「順を追って説明してほしいんだけど」

「一、教授はとても怪しい」

「それは異論ないけどさ」

「二、教授は妖怪をさらっては研究している」

「…」

 マジ、だろうか。妖怪なんていないと思っていたが(今でももしかしたら気焔さんは人間じゃないかと思ってる)教授は既に見つけてあれこれしていたと言う事か。

「だからあたしは教授を止めたい。あたしの友達が一人、さらわれてるから」

 俺は無言。気焔さんは立ち上がった。

「…囮になるよ」

「え」

「ありがとう」

「囮ってどういう事か知ってるよね?気焔さんが大丈夫だとは俺思えないんだけど…」

 囮作戦って失敗したら囮の人酷い目みるのはお約束の作戦だ。救出が間にあわず気焔さんが徹底的に調べ上げられること間違いないだろう。

「あのさ、超非日常的な話をされているから見返り求めたいんだけどいいかな?」

 二人で盛り上がっているところに水をさしにいく。

「え?いや仲間外れみたいで悪いんだけど田原君は役に立たなさそうだしむしろ足引っ張りそうだから誘わないから」

 あれ、目から鼻水が…

「……いや、それでもいいから聞いてほしい」

「なぁに?」

「これ終わったら真白さんにも焔女探すの手伝ってほしい」

「え?その程度でいいの?」

「その程度って…」

 もしかして心当たりがあるんだろうか。心の中になんとなーく希望の光がぼやっと現れる。

「はい、焔女」

 そうして指差した先には気焔さんが居た。

「……えーと?」

「だから焔女なんでしょ?武器作ってもらいたいとかゲームのしすぎだよ」

 既に刀がありますとは言えなかった。あと現代科学の粋を集めたような剣もあるとは言えなかった。

「ともかく、気焔さんが心配だから俺もついて行く」

「好きにすれば。日程は今度教えるからじゃあねー」

「はーい」

 手を振る気焔さんの隣で俺はとうとう刀を握るような展開が来た事にちょっとだけわくわくしていたりする。


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