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黒の小冊子  作者: 雨月
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第六十六話:神の零落

第六十六話

 そして作戦決行。ヘリコプターに改造されたハナコに乗り込み、雪女の里を目指す。ちなみに運転しているのはまさかのケンさんだ。

「無理」

「免許ないの」

「普通車のペーパードライバーだけど?」

「俺は無理っす」

「わかった、任せろ」

 正直これで良かったのかわからない。みんなきっと不安を抱えているに違いないと思ったら実にほのぼのとしていたりする。

「あ、あたしおかか入ってた」

「わたしはシャケなのっ」

「ちなみに私は牛カルビよ」

「お、当たりですねー。一個だけそれ入れていたんですよ」

 俺は梅だった。

 昼飯が初めてのフライト、しかも自分の行き先を決める大事な作戦だ。

「ちなみに駄目だったらどうするんですかね」

「何を?」

「協定を結ぶのです」

 おにぎりをほおばりながら奈津美さんは考えているようだ。

「そうね、単純に里で大地を爆発させようと思ってるわ」

「それは本人に言うような事じゃありませんよねっ」

「安心しろ、大地。ねーさんはそういう事は得意だから肉片…じゃなくて雪の欠片になっても多分何かに戻してくれる」

 その言葉を肯定するように奈津美さんが優しく俺の肩に手を置いてくれた。

「大地、私…ハンバーグは得意じゃないけど頑張ってみるわ」

「今晩は俺ハンバーグですか!?メアリーちゃんはこの人たちどう思う?」

「…大地ちゃんは美味しくなさそうなの」

 そんなあからさまに嫌そうな顔をしなくてもいいと思う…いや、食べられたいと思ってないけどさ。

「でも意外とあれかもよ…そのハンバーグ食べたらお腹痛くなって腹を裂いて大地が出てくるの」

 晃代さんがそう言うと奈津美さんは心底真面目な顔になった。

「あり得るわね…ああ、ハンバーグにするならあんな薬を大地復活させるときに使わなければよかった」

「な、何を…何を使ったんですか奈津美さんっ」

「うーん…大地ちゃんがお腹から出るのはちょっと嫌なの」

 くだらない会話をしつつ、途中から奈津美さんが地図を広げた事によってブリーフィングが始まった。

「まず里に降りたら急いで公民館に向かうわ」

「雪女の里に公民館って在るんですね」

「ええ、もちろんね。隣には役場が建ってて『雪女の隠れ里にようこそ』の看板もあるわ」

「おみやげも売っているから」

 どういう立ち位置で売り込もうとしているんだろう。

「話が逸れたけど、里長に『特異点を襲いません』と書かせて終わりよ。悪の組織に居ると言う事はわかっているけれど大地がそれだとは知らないから。書類見てみる?」

「どれどれ…ん?」

 見せてもらった書類の欄外に小さく『今後雪女の里に悪の組織ナイスバディを無条件で迎え入れます』と書かれていた。

「やる事、酷いっすね」

「そりゃあね」

「あたしらは悪の組織だからな」

「そうなの」

「ま、今更言いませんけど…でもどうやってサインをもらうんですか」

 奈津美さんはそれも考えてあると言わんばかりに白濁とした液体を俺に渡した。

「はい、飲んで」

「これは一体何ですか?」

「効果で言うなら『神様を妖怪に落とす薬』で、原材料は『主にケンさんのピーッ(自主規制)』かな」

 晃代さんとメアリーちゃんが頬を染めていた。

「そ、そんなもんを飲ませるんですかっ」

「そんなものとは何だ!」

 操縦席から初めてケンさんの怒声が飛んできた。

「いやいや、だって『ピーッ』でしょ?」

「お前だって出すだろ」

「だ、出せますけどそんな…よりにもよってそんなものを…」

「じゃあ要らないと?」

 出来るなら飲みたくない。いや、絶対にのみたくない。

「飲まないとメアリーちゃんが飲むことになるわ」

「聞いてないのっ」

「晃代、押さえて」

 嫌なのーっと叫びながらも晃代さんが相手ではどうしようもない。

「悪いなメアリー。飲んだら大地を恨むんだ」

「責任とってもらうの!」

「さぁ、どうする?」

 にやーっと笑っている奈津美さんに俺は屈するしかなかった。

「男なら~♪」

「ぐっといけ~♪」

「いくの~♪」

「えーい、ままよっ」

 拝啓お母さま、大地はもうお婿にいけません。


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