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黒の小冊子  作者: 雨月
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第六十七話:悪の組織『ナイスバディ』

第六十七話

「おらーっ、雪女一族で役立たずの男を人質に取ってやったぞー」

「悪の組織のナイスバディじゃーいなの」

 俺はただ今悪の組織にとらわれている人質である。晃代さんの小脇に抱えられている為、時折当たる胸の感触が嬉しかった…もう、あんなの飲んだ後だから恥ずかしくなる事もない。

「里長をさっさと出しなさい。さもないとこいつに酷い事をするわ」

 雪女達が恨めしそうな顔をして(全員綺麗で、白い着物をきている)こっちを見ている。やっぱり無断で立ち入ったりすると問題があるんだろうな。男性を見かけないし、男子禁制なんだろう。

「…なかなかいい男じゃない」

「里長もさっさと男を入れていいって決めてくれればいいのに」

「いぢめがいのありそうな子ね…いじりたい…」

 何だろう、もし、置いて行かれたら俺は大変な事になりそうだ。

「わたしが、里長です」

 そう言って出てきたのは若い感じの女性だった。綺麗…と言うよりは妖艶と言っていい…見られただけで背筋がぞくぞくする感じの人だ。

「じゃ、早速だけれどこの書類にサインして頂戴。うちで保管している特異点を今後襲わないとね…変な事を考えるとこいつにケンさんの特濃ミルクを直に飲ませるわよ」

「だ、誰か助けてーっ」

「くっ、卑怯な…」

 その演技素晴らしいと言う顔をしないで、晃代さん。演技じゃないんです、マジです。ケンさん、頬を染めないで下さい。

 こうして、こちらが優勢で書類にサインをさせたのであった。いつの間に入れられていたのか、俺のポケットには携帯電話の番号が書かれたメモがいくつも忍び込まされていた。

「ね、やろうと思えば相手は一流だからいつでも襲えるのよ」

「でも、人質がいるから手を出せなかった…と?」

「そう」

 晃代さんがそういっていくつかメモを捨てるのであった。

 サインをもらってこの場に長居は無用とばかりにすぐさま離陸する。メアリーちゃんは観光がしたいと言っていたけれど里長が『夏にゆきじょ検定試験があるからまた夏においでください』等と言っていた。

「今回…やたら撤収早かったですね」

 晃代さんとメアリーちゃんは肩を寄せ合い眠っている。

「ええ、サインを書かせたけれどいつ襲ってくるかわからないからね…それに安心するのはまだ早いわ。羽津市には神様を殺す刀をもった人間とそれを鍛えた焔女って言う妖怪がいるのよ」

「神様って殺せるんですか」

「殺すと言う表現より消し去る、が正しいわ」

 神様って絶対的存在じゃないのね。

「…俺が神様になっていれば楽に世界征服出来ていたんじゃないんですかね」

「そうねぇ、確かにそうかもしれないけれどそれは無理でしょ。降雪一つ、操れないんだから」

 それもそうだ。

 しょげる俺をどう思ったのか奈津美さんは抱擁してくれた。

「どう?お姉さんの胸は」

「え、えー…気持ちいいです。でもどうして?」

「んー、このぐらいしてあげないと心の傷は直せないかなと思ってね」

 その一言で苦い事を思い出した。

「このまま胸で泣きますっ」

「うんうん、泣きなさい。ついでに私はこのまま血を吸うわ」

「え、ちょっとまっ…あんっ」

 こうして、俺はただの雪女(これもどうかと思うが)になったのであった。




「あ、おはようございますケンさん」

「ああ、おはよう…」

 家に帰ってからケンさんが目を合わせてくれなくなったと言う事も付け加えておこう。


(終)


いったん終了!これまで読んでくれた方々ありがとうございました。次回からは『メタルチョコレート』が始まります(嘘)!

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