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黒の小冊子  作者: 雨月
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第六十五話:神様

第六十五話

 悪の組織『ナイスバディ』炬燵にて(作戦本部)一同真剣な顔をしている。

「ワラジ、タンスを漢字で書け」

「出来ました!」

「…出来ない」

「出来ないのー」

 漢字の書きとりをこの歳でするとは思わなんだ。ちなみに草鞋、箪笥が正解である。昨今の若者はPCやケータイに頼ってばかりでちゃんとした漢字をうんぬんとかいう話題からこんな事になった。

「ところで、俺の体はどうなるんでしょうか」

「今年の夏までに間に合わせればいいんだから大丈夫なんじゃないの」

「明日からがんばるの」

 その明日はちゃんと来るんでしょうか。

「あすが見えない…」

「不幸な大地にお勧めの壺が!」

「晃代さん、どこからそんなツボを取りだしたんですか」

 壺をかって幸せになれるのなら今頃漬物屋は全員幸せに違いない。

「お客さまからのお手紙です。『この壺を買ってから一人暮らしなのに人の歩きまわる音が聞こえて寂しくなくなった』、『壺を部屋に置いてから誰かに見られているような気がして気持ちが引き締まった』、『カーナビから時折聞いた事もない女性の声がしてむらむらしています』等と言った言葉をもらっていたりする」

 どうやら嘘の壺じゃないらしい…それにしたってポジティブすぎる意見が多いよ。

「よぉ、集まったか」

 ここでケンさんがやってきた。個人的には俺の体について調べてほしいんだけれどそうもいかない。悪の組織と言うからには個人より集団を重んじないといけないからな。

「次は雪女の里に圧力をかける…ここ一週間降り続いている雪のせいでこの町はピンチだ」「あー、夏を待つまでもなかったかな」

 奈津美さんが天を仰いだ。

「あ、あのシミ…人の顔っぽい」

「奈津美…」

「はいはい。じゃあ詳しく経緯を説明します。今回、以上に降り続いている雪は隣羽津の特異点が原因だと雪女の里、他多数の団体が結論を出しています」

「特異点ですか」

「そう、それが大地。このまま放っておくと甚大な被害が出ると言われています。雪女の里、他団体はこの特異点の討伐、あるいは無力化を検討しているとのことです」

「えーっと、それって…」

「だ、大地が殺されるかもしれないって事!?」

 晃代さんが驚いていた。

「簡単に言うとそうね」

「ほ、本当なの?大地ちゃん…」

「いや、俺に聞かれてもわからない」

「あのね、問題ならとっくに襲われているから。連中はどうも手が出せないみたいなのよ」

 奈津美さんがそう言って立ち上がった。

「なーんと、大地はどうも羽津市の神様の力を持っているみたいなのよっ」

「え」

「は?」

「嘘…なの」

 メアリーちゃんの言葉に反応したのか、ケンさんがため息をついた。

「これは本当だ。だから、連中は影響を恐れ手が出せずにいる」

「あくまで仮定だけどね。全部が全部、神様と言うわけじゃないからちゃんとした自我も持っているんだけど…力の制御が出来ていないと言うことね。だから、雪女の力を神様の力で増幅させて無意識のうちに使っていると言うわけ」

「解決する手段はないんですか」

「無くはない。奈津美は神様を無力化させる薬をもっているからな」

 成るほど、だから投げやりと言うかいつでも大丈夫みたいなことを言っていたのか。

「だが、問題がある。そうなったら雪女どもが始末しに来る可能性がある」

「何で?力無くなったからもういいんじゃないの?」

 晃代さんが首をかしげているとメアリーちゃんがぽんと手を叩いた。

「そういえば雪女は人間と共生しているって話を良く聞くの。代々の決めごとで…一族が人間に無駄な迷惑をかけた場合はたとえ問題が収まっても罰するらしいの」

 ごくり、と息を飲み込む。

「こういう理由があるから先手を取るわけだ。手を出させないように、今後優位に事を運ぶために協定を取りつける。作戦は本日午後に決行。全員で乗りこむ」

 ケンさんはそう言ってコーヒーに口を付けるのだった。


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