第六十四話:大地の問題
第六十四話
俺とハナコが晃代さんによって回収された後、花子は奈津美さんの手によってバージョンアップしたのだった。
「ハナコシータ寒冷地仕様っ」
「……ここら辺、雪滅多に降らない地方だと思いますけど」
人命救助にでも使うんだろうか。
「んーん、そんな事無いよ。外見てみれば?」
そう言われて窓の外を見る。
「嘘…」
豪雪地帯のそれと変わらない量降っていた。ぼたゆきだ。手のひらに落ちてきた雪は解けなかった…なるほど、これなら積もるだろう。
「天気予報じゃずっと晴れですって言ってたのに」
「予報だからね。だから外れたからって文句言っちゃ駄目だよ」
これは外れたとか言うレベルじゃないでしょ。
「いっくぞメアリー」
「かかって来いなのっ」
外では晃代さんとメアリーが雪合戦をしている。メアリーちゃんはともかく晃代さんはもういい大人だろうに…。雪が降らない地方だとわくわくしちゃうのかねぇ。
「俺が入ると三人になってパワーバランス悪いだろうから雪だるま作ってきます!ヒャッハー」
「いってらっしゃい」
着の身着のまま雪に突っ込む。
「うむ、冬はやっぱり雪だね」
記憶がないのが恨めしい…きっと子供の頃はこんな感じで遊んでいた事だろう。
「あ、敵発見なの!」
「メアリー、攻撃開始っ」
「オーケーなの」
雪玉が恐ろしい速さで飛んでくるものの、いきなり俺の前ではじけ飛んでしまった。
「げ、迎撃されたなのっ」
「大地が?あり得ない」
「…酷い言われようですけど、別に俺が落としたわけじゃないですよ」
女々しくきゃ、あぶな~いとか思ってました。
「これはさすがに無理なのっ。いけ雪だるま君ボディーっ」
「あいあいさー」
どうやったらそんな元○玉サイズの雪だるまを作れるんだろうか。そして、それを投げられるなんてどんな筋肉しているんですか…。
迫りくる質量にリアルな生き埋めを想像しているとこれまた雪玉がはじけ飛んだ。
はじけ飛んだ雪玉は半分がメアリーちゃんと晃代さんに降り注いだのだった。
「へぶっ」
「ぬあっ」
「ふ、二人とも大丈夫?」
何とか二人を助け出し、三人で首をかしげていると奈津美さんが出てきた。
「はい、撤収。ほら、いつまでも雪で遊ばない」
「ねーさん、何だか大地がおかしいんだ」
晃代さんがそう言って俺に雪玉を投げた…が、すぐにそれは晃代さんの顔を白く染める。
「美白なの?」
「冷たいわっ…ほら、ね?」
奈津美さんの顔がぽけーっとではなく真剣な顔になった。
「……そういえばそうだったわねー…面倒だけど、仕方ないかな」
「一体これは何なんですか」
「後で詳しく話す。今は部屋に戻るわよ?寒いでしょ?」
「寒いの」
「確かにちょっと冷えたかも」
「そうですか?」
気付けば俺は部屋着だけしか来ていなかった。
部屋に入り、炬燵に入る。
「…うーん、やっぱり大地は雪女の家系みたいね。実際、以前体をいじくったときに雪女と同じ反応をしたし」
「そういえば…そうだった」
晃代さんと奈津美さんが初期設定をようやく思い出した作家みたいな顔になる。
「え、大地ちゃん実は女の子なの?」
「いや、男だけれど…雪女ですか?」
雪女といえば悲恋が有名だ。基本、溶けるか家から飛び出すかしか知らない。
「あくまでその家系と言うだけで…実際はどうだか知らないけど。女が代々力を受け継ぐものだし、稀にこう言った事もあるでしょうけどね」
「なるほど、特異ってわけか」
晃代さんが滾ったヤカンをもってくる。
「…これは、さすがに危ないか」
「な、何をしようとしたんですかっ」
「というわけで、代わりに抱きついてあげよう」
そう言われて晃代さんに抱きつかれる。
「これで溶ける?」
「と、溶けませんよっ」
抱きつかれてラッキーとか思ってないんだからね!肩に当たる柔らかなそれを堪能なんてしてないんだからね!
「…この前の電気ショックで力が戻ったのか、それとも覚醒したのか…」
奈津美さんは真面目に色々と調べてくれていた。
「うーん、大地ちゃんは結局どうなるの?」
「さぁ?最終的には溶けるんじゃない?」
「え」
「これまで力なんて制御していなかっただろうし、夏までに何とかしないと暑さに負けて溶けると思う」
崖から突き落とされた気持ちになった…。奈津美さんの顔は冗談を言っているようではなさそうだ。
「じゃあある程度溶けたらシロップかけてかき氷にしようか、ねーさん」
「ええっ…」
「そうね、血をかけて食べましょう」
「わたしもかき氷好きなのっ!」
「でも何だか女の人に食べられると思うとちょっと嬉しい…」
とは口が裂けても言えないな。
「いや、言っているから…とりあえず、知り合いの雪女に聞いてみるわ。晃代とメアリーちゃんも何か調べておいて。大地は家事をやって」
後日、俺を助ける作戦と言う事で『大地を美味しくかき氷にするにはどうしたらいいか』という会議が開催された。すごく、不安である。




