第六十二話:トイレの875さん
第六十二話
女子高に潜入してからADS四体、選択体育の女子二桁を倒した。当然、こっちもそれなりにダメージを喰らっている。もっとも、ダメージを喰らっているのは俺ではなくスーツの方だが。
あと、精神的にもダメージをもらった。無抵抗…じゃないけれども、やっぱり女の子に電流流すなんて心が痛む。途中、見周りのおっちゃんもやっちゃけど不思議と心は痛まなかった。
「メアリーちゃん、ここからどうすればいい?階段がないんだけど」
とりあえず上がれるだけあがってみたものの、途中で階段が無くなってしまった。目的地までは何か隠し階段的なものがあるのだろうか。潜入物にはよくあるけどさ。
『そっちはA棟なの。そこの東端からB棟に向かってB棟四階からA棟にいけるの。そうしたら目的の場所に辿り着けるはずなの』
「なんて面倒な建物なんだ」
一階ごとに女子男子女子男子…と、トイレを作ったりする駄目な校舎並みじゃないか!
『増改築を続けた結果なの』
「迷路にならなかっただけましということかい…」
『そうなのっ。でも普通は立ち入り禁止なの』
歩いて五分程度、ようやくB棟に続く通路が見えてきた。
「歩いて五分ってどれだけかかっているんだ…」
邪魔をしていた荷物をどけるのに時間がかかったわけだけどさ。
「しかし、このスーツが一般販売されたらお年寄りの介護なんて楽ちんほいになるんじゃないだろうか」
『確かにそうなの』
戻ってみたら奈津美さんにかけあって一般販売してもらおうかしら…。
『敵襲なのっ。気を付けるのっ』
「っと?」
B棟への通路はそれなりに広かったわけだ。広いと言う事は見通しもいいのに俺はどこに敵がいるのかわからなかった。
荷物を退かしている間にとっくに襲われているだろうし、ここから見える範囲にはそれらしい何かはいなかった。ステルス機能があるなら話は別だが。
「いないよ、メアリーちゃん」
『大地ちゃんの頭上なのっ』
バイザーに『WANNING!』なんて赤字が(WARNINGじゃないのか)いきなり出てくるもんだからびっくりした。慌てて前方に転がると、先ほどまで居た場所に二股の槍をもった女性が立っているではないか。一切音がせず、天井も穴が開いているのに音すらしなかった。
『警告します。それ以上の侵入行為は……ガガガガガ』
「何あの人っ」
怖い。
目とかどこを見ているのかわからない。首も奇妙に揺れながらびくっと動いている。
『大地、そいつが今回の目的物だ』
突如ケンさんの声が鳴り響く。
「プレゼントって…」
『目の前の相手を破壊するか、回収しろ』
『ちぇ、チェチェチェチェチェンジ、どりるもーど』
「右手がドリルになりましたよっ。左手なんてパイルバンカー付けられてます」
目が赤く光り輝いている為、かなり怖い。う、うーん、見た目は普通の女の子っぽい(動きは完全に別モノ)のに何であんなに怖そうなんだ…。
『高起動モード』
「足がタンクになった!なんか遅そうっ」
『タンクを舐めちゃ駄目なの!直線だから逃げるしかないのっ』
『Assault Assist System起動』
何かを射出する音が聞こえてくる。つーか、どっからあんなタンクが生えるんだよっ。
「背面からハチが!」
『むぅ、ハナコの暴走はここまで進んでいたのか』
ケンさんが何か言っているけれどもそれより逃げることに徹しなければ。
B棟へと慌てて移動する。危うく相手に撥ねられるところだった。ハチもまっすぐ進んでいって窓に刺さって動かなくなった。
「脱出していいですか?」
『いいわけないだろう』
ケンさんの言葉に心の中でですよねーと言っておいた。どこに逃げられるのかもわからない。下手すると下の階で気絶している女の子が襲われそうだ。
「ケンさん、ハナコって一体何ですか」
『それについては私が答えるわ』
「奈津美さんが?」
『女子高を守る機械が欲しいって言われたから作ったのよ。どうやら過剰だったみたいで今の女子高OG達が視力を振り絞って封印したわ…A棟最上階三番目のトイレにね。別名、トイレのハナコさん…』
「そういう落ちですか」
綺麗に落ちてないけどさ。
『だから、回収に来たの。ああ、今回途中で倒してきた連中は練習と言うわけで大地を襲わせたから』
酷い。なるほど、演習とかだと聞いていれば誰もためらいなく襲ってきただろう…。
「練習の割には殺す気で襲われたような気がするんですけど」
『そりゃあ、向こうには本気で相手しないと襲われるって言っておいたからね』
「奈津美さん…」
危なかった。あそこで太股見る程度で我慢しておいて本当に良かった…。
「っと、またきたっ」
ハナコと呼ばれるADSが階段を穿って出てきた。足元にパイルバンカーが突き刺さり爆発を起こす。
「ぐうっ」
『大地ちゃんっ』
何とか盾でふさいだものの、盾はもうただの板きれになっていた。




