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黒の小冊子  作者: 雨月
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第六十話:女子高の下見

第六十話

 赤マントが捕まって数日の間は特に何も起きなかった。

 気付けば二月の目玉であるバレンタインも終わってしまっていたっ。

 テレビでさんざんあっていたのに忙しくてそれどころではなかったのだ。そろそろ次のあくどい事をするとか、しないとかでその調査を行っていたりする。

「女子高かぁ…」

「目をキラキラと輝かせているな…まさしく、男が望む桃源郷」

 ケンさんと二人で、だ。ちなみに奈津美さんは特殊スーツのバージョンアップ、晃代さんは実行時にスガーが現れた時の闘う場所を下見、メアリーちゃんは関係者のタイムスケジュールを調べている。

「それで、此処で一体何をするんですか」

「ここの屋上階段踊り場トイレにおもしろいもんがあるんだよ」

 ニヒルに笑うケンさん。たとえ、エロ本を読んでいるときもだらしなく笑ったりはしない…クールである。

「もっとも、此処の警備はすげぇもんがあるけどな」

「すげぇって…一体何が?」

「ADSがあるってよ」

 女子高にADSがあるってどういう事だ。余程すごい何かが眠っているんだろうな…。

「嘘か本当か、まだよく調べていないからわからない…ここは戦闘教育が行われているそうだ」

「平和で安全とうたわれている日本の学校に普通に戦闘教育あるんですね…あの、選択体育の剣道とか柔道とかじゃないですよね」

 しかも男子だけだったと思う。

「ここの選択体育は突撃と奇襲だ」

「言葉が出ないです」

「ま、あくまで特別クラスだけだ。安心しろよ。今回の作戦は大地にやってもらおうと思っている」

 無理っす。さっきの言葉を聞く前ならなんとかなったかもしれませんけど、聞いた後じゃどう考えても犬死っすよ。

「ナビゲートは奈津美、おれは全体的な作戦指揮、メアリーは現地からの情報伝達、晃代はスガーが出て来た時の囮、だ」

 うーん、正義の味方が女子高に侵入したぐらいで出てくるものだろうか。

「悪の組織って言うのには常に構成員が必要ってわけじゃあない。首謀者、幹部の顔だっていちいち出す必要だってないしな」

「確かに」

「必要なのは資金力とカリスマ性、そして転覆させた後に必要な根回しだ。これら三つのいずれかがかけたら…其処でおしまいだ。悪い考え持つ連中ばっかりだから仲間割れだって起こるさ」

 しみじみとした口調でそういいながらケンさんは校門前からようやく離れた。

「ケンさんは、悪の組織に入っていますけど…何でですか」

「おれは女性の下着が欲しいだけさ」

 堂々と言ってのけるケンさんが凄いと思った。

「もし、世界を征服出した日には毎日おれのところに海外の女性の履いた下着が来るかと思うとつい身震いしちまう」

「俺はそんなケンさんに身震いしそうです」

「ま、ようは手前の利益を考え、利害の一致で成り立った組織はもろい部分がある…端緒であり長所だ。人は欲望が無ければ生きていけないからな」

「そりゃまぁ、そうですけど」

「それを超越出来たら神様にでもなれるのかねぇ」

 ケンさんは尻尾を振りながら歩く。俺もその隣に並んで首をかしげた。

「神様っているんですかね」

「はは、いるさ…いや、あるのさ」

「ある?」

「在る、矛盾を纏って人の世の上に常に存在している現象なんだろう。権力者の蓑として、狂信の者をひきつれて確かにそこに在るのさ」

 このヒトヅラケンは何を言っているのだろう…。

「ま、ようは人間のいいわけさ」

「いいわけですか」

「神様のいたずらとかな…大地にやってもらう事に神様はいたずらしてくれないだろうが…頑張ってほしい」

「はい、やるからにはしっかりやります」

 秘密基地についた時、ケンさんは『神様なんていなけりゃ良かったんだが』と呟いていた。


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