第五十七話:赤マントを捜せ
第五十七話
俺は悪の組織に所属している構成員Aだ。仕事は主にスカウトである。
「…赤マントか」
「だるいなー」
晃代さんを連れて赤マントを探すことになった。基本開店休業状態の俺らは前回の『誘拐』でそれなりの評価をどっかの企業からもらったらしい…もっとも、評価は要らん、金を出せと言う事でかなりの額をせしめたらしい。
「血の飲みすぎなんじゃないですか」
「んー、そうかも…そうだ、今度大地の血を吸わせて欲しいんだけど」
「えー…本気で言っているんですか、それ」
「そうそう、本気。あたし思うんだけど、結構いい線言っているんだよね。冷たくておいしいし」
「血ってどんな味がするんですかね」
「フライパン」
じゃあ俺の血なんて飲まずにフライパンかじっていればいい。そんな言葉を吐けばきっとフライパンで顔面が平らになってしまう事だろう。
「嘘、うーそ。喉越しさわやかなものからねっとりとした濃い~物まで色々ある」
「へぇ…晃代さんはどういったものが好きなんですか?」
「ん~若人の血かな。出来るだけ、若い方がいい感じ…うちでいうと大地は…ぎりオーケー、メアリーちゃん直球ど真ん中かな」
もしかして、晃代さんは小さい女の子が好きなんだろうか。
「あ、ちょっと変な想像しているみたいだけれどメアリーちゃんに対して変な感情は持ってないから。血が、美味しいだけ」
「俺から見たらそれもいまいち理解できませんけど」
「わからないやつにはわからないままのほうがいいよ。自分の好物を他人に押し付ける真似なんてしないから…暮らしていくうえじゃ、他人との協調性は必要不可欠。この世に生まれてきた時点で他人と接点持っているからね」
晃代さんが年上だからか、妙に説得感のある言葉だった。この人も苦労しているのだろう。
「っと、血の話はどうでもいいんだ。で、青マントを探しているんだっけ?」
「赤マント、です」
「そっかそっか…三倍スピード?」
「はぁ?」
二人で目撃証言をもとにうろついていると住宅街につく。
「ここは行きすぎ?」
「どうでしょう。見たことないですから」
「あたしもないしなー…もうそろそろ小学生が帰ってくる時間だから買い物に言ったほうがいいんじゃないの」
「それもそうですね」
スーパーは混むから今から行ってタイムセールを狙ったほうがいい。
スカウトから買い物へ移行しようとすると晃代さんが俺の手を掴んだ。
「どうかしたんですか?」
「悲鳴、推定八歳の女児が恐怖時に出すような声だ」
「は…って、ちょっとー」
何でそんなことわかるんですか…とか成人男性を小脇に抱えてすっごい速さで走れるんですか…最後に、胸が当たってどきどきしちゃう…は、言わなくていいか。
「この屋上」
「屋上…っすか。って、えええっ」
なんと、壁を昇って行った。もう、文字通り窓枠に足かけてどんどん昇って行ったのだ。
「うへへへっ」
「いやあっ」
そして、屋上では晃代さんが言ったように女児が嫌がっており、指をいやらしく動かしている赤マントの変態が、いた。タコみたいな仮面を被っている為素顔は不明だ。
「こんのっ、くらえっ」
「え、ちょっとーっ…ぐはっ」
「うわばらっ」
信じられない事に晃代さんは俺を放り投げて赤マントにぶつけたのであった。仲良く、屋上の壁にぶつけられる。
しかしまぁ、相手はタフなもので上に乗っかっている俺を器用にも晃代さんに投げ返す。
「よっと、大丈夫か大地?」
「一瞬よけようとしてませんでした?」
「してないヨ」
「ぐぬぬ…僕の邪魔をよくもしてくれたね」
恨めしそうな目が俺たち二人を…そして、いやらしい目つきで八歳女児を見やる。
「何しようとしてたんだ。嫌がってたように見えた」
晃代さんはそういって相手に人差し指を向ける。
「なんだい、正義の味方気取りかい?」
「はは、あんな事を言われてますよ」
「笑うねぇ、ほんと…で、あんたは何をしていたんだ」
「いやぁ、僕はただこのブルマをあの子に履かせようとしていただけさ。それ以上はしない…無論、パンツを脱がせようなんて微塵も思っちゃいないそのまま吐いてもらえさえすればいいんだ」
はぁはぁ言っている。女児を慌てて後ろに隠す…当然、見えないように目をつぶっておくよう言った。
「変態に変わりないっすね」
「ああ、こいつはあたしが片づける。大地は警察に連絡してほしい」
「はい」
「おっと、そいつは御免だ」
地面に何かを叩きつけると、あっという間に辺りが見えなくなった。
「あ、待てっ」
「大地、カラーボールっ」
「はいっ」
下に逃げていった赤マントに一発何とかぶつける事が出来た。晃代さんが持っている事も驚きだけれども…。
「あんなに目立つ服装だから別に当てなくてもよかったかな」
警察を一応呼ぶも、顔を覚えられる恐れがある為すぐに逃げることにした。
「おにいちゃんたちありがとう!せいぎのみかたなんだね!」
「…子供に嘘は…」
どうしたものかと思っていると晃代さんがすわりこんで子供の目をしっかりと見ていた。
「そうだよ、お姉ちゃんたちは正義の味方だ。だから、もう行かなきゃいけない…じゃあね、お譲ちゃん」
「うんっ」
晃代さんは俺を残して歩き始めた為、俺も慌てて隣に並ぶ。
彼女はまるで奥歯に苦虫でもかみつぶした顔をしていた。
「どうしたんですか?」
「だから言っただろう、あたしが一緒に行くと良くない事が起こるんだ…あいつを味方にしていれば結構色んな事が出来たはず」
そう言って彼女は肩を落とした。
「俺、あの人は駄目だと思います。もし、スカウトが成功しても奈津美さんやメアリーちゃん…晃代さんに何かあったらどうすればいいんですか。組織ですから、そう言ったものも大切ですよ」
「…そうだね」
晃代さんの手が俺の頭にのせられくしゃくしゃされた。




