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黒の小冊子  作者: 雨月
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第五十六話:悪い事をしよう!その二

第五十六話

 ケンさんの作戦にて悪い事第二弾が決まった。

「ずばり、誘拐だ」

「本格的だ」

「以前より調査していたこのルートを通り…(マジで本格的なのでお見せできません)……ざっとこんなものだ。今は街の至る所にカメラがあるからな。見られる事を各自想定しておくように」

 こんな感じで俺の今回の役割は夕飯作りだ。

「…当然ながら作戦からはずされてしまった」

 女児誘拐と言う事もあって外された。色々とぎりぎりだそうだ。

「まーでも、あまり大人数で行っても危ないから仕方がないか―…うん、まぁこんなものだろう」

 場所は良くドラマで見かける使われていない倉庫だ。職長室らしき場所でみんなの帰りを待つ。

「…そろそろかなぁ」

「よーっす」

「あ、おかえりなさ…」

 ぐったりとしたおっさんとガムテと猿ぐつわ、ロープで巻かれた少女を晃代さんが連れてくる。

「あのー、そちらの男性の方は?奈津美さん」

「え?その子のお父さんじゃないの?」

「うん、本人も『娘に何をする―』とか言ってたから間違いないね。うざいからぼこって連れてきたよ」

「…一体だれが身代金を払うんですか」

 一同の間を冬の風が通り抜ける。

「…わたし?」

「メアリーちゃんが!?」

「えと、沈黙は嫌いなの」

「じゃあ騒ぐか」

「どんどん」

「ぱふはぷ」

「ちーん」

「…」

 また変な間が…。

「と、とりあえず返してきたほうがいいですよ」

「え?こっちの子を?苦労したのに?」

「おっさんのほうですっ」

「まぁ、それはそうかもしれないけど…」

「ここは任せなさい」

 ごそごそと何かを取り出す奈津美さん。

「なんです、これ」

「ロケットよ。これでおっさんうちあげる」

「で、どうするんですか」

「花火なの?」

「メアリーちゃんが無垢な顔をしてすげぇ恐ろしい事言ってる」

 その時、微かながら窓から何かが入ってくる音がした。

「だ、誰か入ってきましたよ」

「上へ、逃げるわよ」

 階段を急いで駆け上がる…っと、すぐ足もとで発砲音がした。

「うおっ」

「おら、誘拐犯の変質者め。さっさと御縄をちょうだいしろい。幼子がかかわる事件は僕が解決してみせるさ。誘拐された子の匂いだって完璧に覚えているっ」

「凄いのが来たわね」

「ねーさん、大地、メアリー、脱出だ」

「あいつだ、ぜったいあの警官だっ」

 晃代さんに殿を任せて屋根を伝って逃げる…が、どうやら遅かったようだ。進行方向に弾丸がめりこんだ。

「大人しく観念しろい」

「くっ、どうしましょうか」

「どうするも何も…こうするだけよ」

 下に向かって奈津美さんが何かを投げる。

「ん、一体…あれはっ…うおおおおおおおおっ」

 なんと、警官がいきなり飛び降りやがったのだ。

「…え、何で」

「何でも何も、考えればわかるでしょ」

「スースーする」

「え」

 一体何が起こったのか俺にはよくわからなかった。

 しかし、今回の作戦は見事に失敗に終わってしまった(とはいうものの奈津美さんがおっさんの懐から色々と盗んでいた)。

「ふむ、なかなか手ごわい相手のようだな」

「顔色一つ変えずに話を淡々と聞き入れるケンさん、すごいっすね」

「何、年の功ってやつさ。次の手を考えないといけないがな…」

 ケンさんはたばこを吸わない。犬用の受け皿にコーヒーを入れて飲む人だ。


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