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黒の小冊子  作者: 雨月
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第五十一話:本当に怖いのは…

第五十一話

「…それで、メリーさんを家の中に連れ込んだと?」

「はい、決して下心からくるものじゃあ御座いません」

 謎の誘拐犯の魔の手から救ってあげようと言う唯の正義感からなんです。悪いおっさんはいませんでしたけど…正義の味方よりも世の中悪い人の方がはびこっているよね。まぁ、正義の味方の数のほうが悪より多かったら圧倒的だけどさ。

「ちなみに聞くけど大地はどっちが好きなの?年上?年下?」

「年下…嘘嘘、嘘ですよ、年上に決まっているじゃないですか。やだなぁ、心底晃代さんとか奈津美さんに拾われてほっとしています。だから、その手に持っている受話器を元の場所に戻してください」

 ちなみに、この前の下着泥棒の結果は圧倒的に小中学生の下着を盗んでいました。勘違いしてもらっては困る。取るのが簡単だったからだ。

 女尊男卑が強い世の中…痴漢じゃ絶対勝てず、夜道をブスの後ろを歩いているだけで叫ばれ逃げられるのだ。

「こ、ここはメリーちゃんにも話を聞いてください。俺の潔白は其処で証明されるんです」

「ふむ、一理あるわね」

「どうだかねー」

 俺からメリーちゃんへと視線が向けられる。

 まるで西洋人形のような見た目で、きっと『お人形のように可愛いね』と見た人はいうだろう。どうでもいいけど、この言葉を最初に言ったやつはフィギュアフェチだったと思うんだ。

 金髪ドリルな髪型、緑色の瞳、雪を連想させる白い肌…触ったらきっとキメが細やかでしっとりと肌に吸いつくのだろうな。

「…ちょっと触ってみたいかも」

「ねーさん、変質者っぽい奴がいる」

「え、どこどこ、俺じゃありませんよね」

「晃代、話進まないから」

「ふぅ、あぶねぇ…」

 改めて俺と奈津美さん、晃代さんは目の前の少女へ視線を向ける。

「名前は?」

「わたし、メリーさ…」

 奈津美さんが飯台を思い切りたたいた。

「わかってるわよ、本名よ、本名」

 まるで竜を殺すような目をしている。俺と晃代さんは抱き合って震えていたりする。

「こ、こえぇ…」

「ね、ねーさんはいきなり起こる類だからな…スイッチがどこにあるか全然わからない」

「怒らせないよう善処します」

 震えながら事の成り行きを見守ることにしよう。

「で、名前は?」

「メ、メアリー・メリーです!」

「メメアリー?」

「メアリー・メリーです。十七歳で、代々メリーさんやってます」

 メアリー・メリーちゃんか。とても十七歳には見えない。十四歳ぐらい死に勝見えなかった。

「で、メアリーちゃんは…このけだものに襲われたと?」

「は、はいっ。襲おうと思ったらいきなり全裸になったんです。わたし、そう言ったものを見たことなくて…びっくりして、悲鳴をあげたんです」

 晃代さんが責めるような口調で俺を見る。いや、そんな…まさか見られているなんて思わなかったんですよ。だから脱いだというか何と言うか…そもそも外では脱いだらダメと言うのは知っているが、家の中で脱いで捕まるのもどうかと思う。

「ほぉ、それから?」

「どうやら悲鳴で場所がわれちゃったみたいで…いきなりだ、抱きついてきたんですっ」

「無罪だ!俺はやってないですっ」

「黙りなさい」

「は、はいっ」

 睨まれてつい裏声になってしまった。

「まぁ、いいわ。今回の件は不慮の事故ね…晃代、縄」

「あいよ、ねーさん」

 晃代さんから縄を受け取った奈津美さんはてっきり俺を拘束するもんだと思っていた。しかし、メアリーちゃんをぐるぐる巻きにしたのである。

「な、何を…」

「事件ってどうして起こると思う?完全犯罪って犯罪だと気付かれた時点で失敗なのよ」

 ぞっとするほど美しい顔だった。隣で晃代さんが真似しているけど似てなかった。

「えーと?」

「死体って隠すの超大変よね。ばらして外に埋めると獣がほじくり返してばれるし、海に沈めても色んな事で浮かんでくる…ミキサーにかけて水道で流しても何故か詰まるわ」

「…おえ、や、やったんですか」

「聞いちゃ駄目よ」

「あ、あわわわ…」

 そう言ったものを想像して吐きそうになった。ああ、この前の吸血シーンが脳内で再生されてしまう。

「だからね、私は気付いたの…料理して食べちゃえばいいんじゃないかって」

「ひっ」

 その結論は如何なものかと…そう言おうとしたら食べられちゃいそうで辞めておいた。

「大地、行くぞ」

「え」

 その後何が起こったのかは知らない。俺は晃代さんに引っ張られて部屋に戻ったから。

 次の日、メアリー・メリーちゃんが悪の組織『ナイスバディ』の構成員になったということしかわからなかった。

「き、金髪が銀髪に…」

「可哀想に…昨晩すっごいめにあったんだろうね」

 晃代さんと俺がひそひそと話をしていてもメアリーちゃんはそれから三日間魂の抜けたような感じだった。



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