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黒の小冊子  作者: 雨月
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第四十九話:Hi! I'm Mary nice to meet you.

第四十九話

 この歳にもなってお小遣い制…とはいっても、はっきりとした自分の年齢がわかるはずもない。誕生日だってわかりっこない。だから、これでいいのだ。

 月のお小遣い五千円。バイトでもすればいいじゃないかと言う人もいるだろう。でも無理だ。悪の組織に所属しているし、何より戸籍がないんじゃないかと…役場に行って自分の変える場所が見つかっても余程の金持ちでなければ俺の借金を返してはくれないだろうな。

 そのお小遣いの中で買ったグラビアアイドルの写真集を眺めていると電話が鳴った。

「…奈津美さんじゃない、晃代さんでもないな」

 登録していない電話番号(いや、非通知だ)だ。ケンさんは自宅に帰っているし、二人とも夜中は基本的に居ない。

 とりあえず出てみることにした。

「もしもし…?」

『わたし、メリーさん。今北海道に居るの』

 そこできれた。

「…」

 メリー…Melly?それともMaryという発音だろうか。

 どっちにせよ可愛らしい間違い電話だ。ほほえましくなった。

「そういえばここは日本地図で言うとどこらへんだ」

 隣羽津市は日本のどこに位置するのか乳を見ながら位置を確認することにしよう。

 次の日の朝食時、携帯電話が鳴り響いた。

「…鳴ってるわ」

 うるさそうに奈津美さんが納豆を混ぜながら呟く。

「あ、はい…また非通知だ」

「またぁ?『表でろ糞野郎!』って叫びなさいよ」

 目をぎらつかせながら晃代さんがそういうけど、無理だ。そんな事が出来るはずもない。

「もしもし?」

『わたし、メリーさん。今沖縄に居るの』

 そこでまた切れた。

「間違い電話みたいです、また」

「またぁ?『かかってこいよ、相手になってやる』って言いなさいよ」

「無理っす…多分、女の子が悪戯しているんですよ。前電話がかかってきたときは『北海道に居る』って言っていました」

「…ふむ」

「で、今日は?」

「沖縄です」

 日本横断でもしてるのかねと晃代さんは馬鹿らしそうにそう言って味噌汁をすすっている。

「…向こうは苗字とか名乗ってたの?」

「はい。メリーって名乗ってました」

「ぶほっ、げほげほ、超有名なメリーさんじゃん。ねーさん、どうする?」

 俺の言葉に晃代さんが味噌汁を吐きだしていた。作った本人からすれば非常にショックである。

「………放っておきましょう。北海道から沖縄まで移動しているんだもん。会おうと言う努力が感じられないわ」

「それもそうか」

 晃代さんが味噌汁のお代わりを要求したので俺は大人しくお椀に注ぐ。定位置について食事を再開したので俺は聞いてみることにした。

「あの、メリーさんって何ですかね」

「…え、知らない?」

「知らないです。記憶喪失中ですから」

「女性専用車両が開始されたのはいつ?」

「平成十二年ですか」

「…まぁ、厳密に言うならもっと前にあったでしょうけど。そんな事はどうでもいいわ。メリーさん知らなくてそんな事を覚えているんだから変な話ね」

 まったくだ。

「それで、そのメリーちゃんとは?」

「説明しよー。メリーさんとはあたし~○○にいるの、から始まり徐々に自分の近くによってきて最終的には背後を取る都市伝説であるっ。ちなみに、話の多くは体験者がどうなるか不明のままで終わり、他者に伝えるような形式ではない事が多い…以上」

「あたしは突っ込みどころが多い話だと思うけどねー」

 メリーさんねぇ。

「…声は幼い感じがしましたけどさん付けなんですね」

「そりゃもう声だけ幼い感じだけど実際あったらばばあかもよ?」

 その時、電話が鳴り響いた。

『覚悟しておいてね。きゃはっはあははは』

 がくぶるしている俺の肩に手を当てて奈津美さんは一言。

「こりゃあ気にいられたね」

「奈津美さんのせいですよっ」

 どうなるんだろうか。


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