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黒の小冊子  作者: 雨月
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第四十八話:忍び寄る何か

第四十八話

 悪い事第一弾はまぁまぁの結果を残せたそうで、ケンさんはパンツをばらまいて悦んでいた。俺も何故かボーナスだと言われてブルマを一枚もらった。

「どうしろと…」

 部屋に飾っておくかとも思ったけれど、生憎部屋が晃代さんと相部屋になってしまった為(それまでは広間のソファーで寝てた)、女性の部屋でそんな真似は出来ないだろう。

 もっとも、晃代さんはだいぶずぼらな性格のようで下着は脱いだらそのまんま、部屋も俺がやってきたついさっきまでは服が散乱していて掃除が大変だった。

「家政婦雇ってよかったわ―」

 掃除をしている隣で優雅にコーヒーを飲みながらファッション雑誌を読んでいるんだから、色々と言ってやりたくもなった。

 まぁ、居候で借金抱えている身だから何とも言えないんだけどさ。

「どうです?部屋が見違えたでしょう?」

「うんうん、凄いすごい。いやー、よかった。さて、じゃあ買い物に行こうか」

「はい…っと、電話?」

 携帯電話に着信履歴。しかし、非通知だ。

「どうした?」

「あ、いや、なんでもないです。いきましょう」

 ここにきて三週間ほど経つ。俺に支給されたものは服、エプロン、掃除用具一式などだ。お金を扱うときは二人一組と決まっているため基本的に買い物時は俺と誰が一緒に出る。彼女達の血の補給のためでもある。

 悪の組織だ、なんて言われた時は大丈夫だろうかと思ったもんだ。今ではすっかりなじんで…というより、俺が思ったような悪い事なんて殆どしていない。

 奈津美さんいわく『あまり連続でしても基地の場所がばれるし、ピンポイントでしないと意味がないからね』だそうだ。

 本人達に自覚がないから言わせてもらう。チャラい感じのお兄ちゃんや中学生の男子を襲って血を抜いたりするのは立派な悪い行為だと思う。

「今日は何が食べたいですか。最近は肉じゃがを覚えたので作ってみようと思うんですけど」

「任せる。ねーさんとあたしは料理が下手だからね」

 女将を呼べッまではない、でもまずい…そんな味。それらが吸血鬼姉妹の料理の腕である。記憶を失っている俺の方が料理の腕がいいとか何の冗談だと最初は思った。

 日用品や食料を買いそろえて帰路につく。

「そういえば次のスカウトはどう」

「どうって言われても…正直言って場所が分かりません」

 ケンさんだけではなく、次の人物をスカウトしなくてはいけない。しかも次は住所不定だ。

「不安なんで一緒に来てもらう事は出来ないんですか」

「来るだけならねー」

「あの、赤マントなんてほんとうにいるとは思えないんですけど」

 もはや時代遅れの都市伝説だ。今頃赤マントが出たんだなんて言っても誰も信じてくれないだろう。それより幼○愛好家が出たんですっ。そう言ったほうが警察は来てくれる。

「たしか少女を誘拐して殺すんでしたっけ。マジモンのやばい奴じゃないですか」

「多分ただの通り名だから安心していい。花子さんや青い紙赤い紙をお出迎えしたいっていうのなら今から小学校に行くけど?」

「…」

 その二つはどっちかと言うと妖怪じゃなくて幽霊方面じゃないでしょうか。

 基地に帰るともう夕方で、俺は夕飯の準備に取り掛かることにした。

「今日は何?」

「肉じゃがを作ろうかと」

「おお、おふくろの味かぁ…期待しているよ」

「ケンさんは?」

「帰ってる。また今度来るでしょ…あ、私たちも今夜はちょっといないから」

 奈津美さんと晃代さんはたまに居なくなる。夜に居なくなると言う事は…きっと、吸血鬼方面の話だろう。俺が口を出すわけもないし、そういった立場ではない。

 思えばまだこの時俺は余裕だったのだろう。

 この二人が居なくなって、俺はようやく事態の深刻さに気付くのだった。


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