第四十七話:悪い事をしよう!その一!
第四十七話
ケンさんが考えついた悪い事…それは実に簡単なものだった。
「体育館を埋め尽くすほどの下着盗みをしてもらう」
衝撃が走った。主に俺にだけ。
「は」
「了解」
「了解っ」
ケンさんは椅子にお座りをして一つの書類を指差す。ちなみに朝ごはんを食べながら(めだまやき、みそしる、しゃけがおかずだ)ブリーフィングを行っている。
「今回は単純な資金集めだ。大手下着メーカーではなく、中小企業からそれなりの報酬金がある。女性物、男性物問わず盗んできてもらいたい」
「はぁ…」
成績不振に陥っていたが、新商品をいくつか年末に売り出しておいたらしい。それらが今一の売り上げなので起爆剤が欲しいそうだ。
「要は売る為に下着を盗むのよ。悪いわよねー…」
「こっちは悪の組織ですけどね」
もっとも、下着を盗んだぐらいで売り上げにつながるかと言われれば疑問も残る。大手の下着を買っちゃいそうだ。
「ま、女性の下着を盗みたくないって言うなら男物でも構わないわ」
それはそれでどうなのだろうか。勘違いされる恐れがあると思うけどさ。
「ああ、これがサンプルですか…」
「どうよ?」
「どうって、女性物ですからなんとも…」
「男性用もあるわよ」
そういって手渡されたそれの後ろには『Wellcome』と書かれている。わざとだろうか。
「パンツがダサい。女物はともかく男物はどうせ売れないだろうから…男性は別に年齢幅は気にしなくていい。見つけたらとっておけ。女性物は出来るだけ若いもの…とは言わん。こっちも気にせず見つけたら取っておく事」
「アイアイサー…ほら、大地も返事する」
「あ、アイアイサー」
ケンさんは頭に女物のパンツを被っている。そして二人はそれに対して一切突っ込まなかった。
「注意する点は…そうだな、朝食をとり終わった後、すぐに行動を開始すること。十一時半には撤退だ。あとは、警察とスガーだ。あいつは手ごわいから晃代はともかく、大地は逃げろ」
「スガーって…あのスガーですか」
日曜朝にあっている特撮を思い出す。氷の力を使って悪党どもを成敗していくストーリーだ。
「そうだ、とはいわん。あいつとはまた違うテレビの奴のオリジナルだと思われる」
スガーねぇ…どっかのヒーローマニアが変身しているだけだろう。
「とりあえず、顔がばれるとまずいからスーツと、ヘルメット。黒を基調として鼓動をスーツが感知すると緑のラインが体に現れるわ。耐久性はまだプロトタイプだからいまいちだけれど軽自動車にぶつかられても一度くらいは持つから安心してね」
「す、すげぇっす」
結構格好良かった。実際来てみても見た目ほど重くはないし、動きやすい。
「問題はあれね、すごーく目立つ事」
「…ですよねー。あれ?晃代さんはこういったものつけないんですか」
みれば晃代さんはグローブとひざ当て、サングラスを付けただけだったりする。しかもタンクトップにホットパンツだ。立派な双丘を確認できる。
「ああ、邪魔になるから。ねーさんの作った奴にケチをつけるわけじゃないけどもしスガーが出たら全力でやらなきゃやられるから。もし、見つかったらあたしが時間稼ぎするからその間に逃げるんだぞ」
「わ、わかりました」
晃代さんの目がやる気に満ち溢れていた。
「たかだか下着泥棒だからと言って甘く見ないほうがいい…たて笛の先っちょを盗むという悪事とは大違いだ」
「…そこら辺は記憶が無いのでどうとも言えないんですが」
「ともかく、全力を尽くせって言いたいの。お金を盗んで捕まったら『あんたって子は!』と怒られるでしょう…でもね、下着を盗んで『あんたって子は…』と怒られるのよ」
確かにそれは情けない。
「ま、悪い事したくないのならそれはそれで構わないけれど…今すぐお金払ってもらうから。それとも、踏み倒す?」
「そんな、滅相もございません」
悪い事はしたくないとか言いつつお金を払わないで逃げるなんて出来ないだろう。
「じゃあ『ナイスバディ』出撃っ」
「りょーかい、行くよ、大地」
「は、はいっ」
今朝の食器洗いは奈津美さんが名乗り出てくれている。新聞のチェックもケンさんがしてくれるのだった。
順調に、とは言わないまでもそれなりに盗んだ。
「…盗んだパンツはどうなるんだろう」
ケンさんが言うにはブラジャーには夢が詰まっていてパンツには希望が入っているそうな。ちなみに、男のパンツには絶望が詰まっているそうである。別名、パンドラの箱らしい…小さな希望は尻の穴だそうだ。
特にこれと言って問題が起きず結構集めてそろそろ撤収時間となる。我ながらよく集めたと思う…色とりどりの薄い布が何故だか俺を誘惑しているように見えた。
「晃代さん?こっちはきりあげます」
『こっちはスガーと交戦中だ。さっさと撤退しろ』
スガー…本当に出るのだろうか。男の子なら一度は見てみたいもの、しかし、今は悪の組織の構成員…わーいと近づいて行けば蹴られることは間違いないだろう。
今後、出会う事もあるはずだ。そう割り切って俺はパンツを背負ってその場から駆けだしたのであった。




