第四十五話:吸血鬼二人の後を追って
第四十五話
今に始まったことではないだろうけど、大学四年生と言うものは内定を取るのに苦心する。内定を撮ってやったと思っても其処が終わりではないのだ。いざ働き始めて自分の想像していた物と違う等と結論付けて辞めてしまうものも少なからず、いる。
ようはその企業についてどれだけ知っていて自分がやりたいと思っている事と合致するのかちゃんと決めなくてはいけない。
何が言いたいかと言うと、俺は選択肢すらない状況下で悪の組織に就職したわけだ。やはり、其処の人たちの事をもっと詳しく知ったほうがいいだろう。
そう言う理由で、朝目を覚ましてから観察することにした。
三食飯付き月一でお小遣いと言う破格の待遇なので、俺が家事担当である。
二人を起こし、朝食を作って、週のゴミ捨てを行い、洗濯物を回し、洗濯物を干し、掃除を…とまぁ、実に色々とあるそうだ。
それに加えて悪の組織で働く人たちをリストアップされているとはいえ、交渉しに行かなくてはいけない。莫大な借金があるとはいえ、大人しく従うより逃亡したほうがいいのかもしれないと思ったり、思わなかったり…。
とりあえず、この二人の様子を見る為に(いまいち吸血鬼と言うのも信じられないので)ウォッチングしようと決めたのである。
さて、ここで一つ問題が浮上してくる。
それは、この事を相手に伝えるかどうかである。黙ってやる分はまぁ、ばれなければ問題はないだろう。事前に知らせていなかった分だけ酷い目にあいそうだが。
教えたら教えたで面倒そうだ。結局、調べないという選択肢にしない限りはそれなりに面倒な事にはなるのである。
結局、黙って二人の後を(当然ながら常に一緒にいるわけじゃあない)追う事にした。
まずは姉の奈津美さんの方から行くことにする。
「おっと、イケメンはっけーん」
電柱の影から(最近めっきり電柱見なくなりましたね)奈津美さんを盗み見る。
「…服をはだけさせて男を誘惑してる…」
まぁ、なんというか…男はほいほいと奈津美さんの誘惑に乗って人気のないところへと連れて行かれた。
「…どうなったんだろ」
ほんのちょっと、ほんのちょっとだけみることにしよう。九割の予想と一割のスケベ心が俺を突き動かす。
「そーっと、そーっと…」
「ぎゃあああああ」
俺の目に入ってきたのはいい感じの血しぶきだった。飛び散り方が半端なかった。
「あ、あああああ……」
血の海が形成されている。
いや、いたって冷静にそう言っちゃったけどこれは本当。血だまりにさっきのイケメンが沈んでいるし、その首元には奈津美さんが噛みついているしでなんじゃこりゃあ状態なわけですね、はい。
「あ、大地じゃないの」
「こ、これは一体…」
「栄養補給」
なるほど、吸血鬼だからそれは仕方がないですね、納得納得。
「じゃなくて、です」
「はい?」
「この人、死んでませんか?ミイラになっているように見えるんですけど」
「別に、死んでないよ。仮死状態」
不穏な響きである。
「ちょっと派手にやるのが私の好み。文句あるなら吸い取っちゃうぞ」
そんな可愛らしく言われても、嫌である。
「まー、私らの唾液はちょっと特殊みたいでね。派手に血しぶき上げさせた方が興奮して気持ちよくなるの。あ、普通に血を飲む分には其処まで興奮しないけど、月一でやっぱりこういった感じで飲んだ方がストレス発散にもいいわけよー」
これからは大地がいるから楽になりそうだわ―と、言われた。
奈津美さんの調査はやめておいた。怖い。
Aが駄目ならBだ。そうだろう、もうそれしかない。選択肢は多くなく、残りは当然晃代さん。
「しかしねぇ、晃代さんは戦闘員とか何とか言っていたからそっちの方が危ないんじゃないだろうか」
イヤホンして露出の高い服を着た晃代さんが街を歩く。俺はその後をばれないようについて回る。
「ヒュ~そこの彼女~」
「ああ…」
この後の展開はすごく読めそうだけれど、俺は黙っておくことにした。
九割の絶望と一割の希望を胸に、男について行った晃代さんを追いかける。気のせいだろうか、両者とも『カモを見つけた』と言わんばかりの顔をしていた。
裏路地には複数の男が、晃代さんの事を待っていたはずだった…今現在、立っている男は俺一人だ。
「よし、材料確保。血は冷蔵庫に入れて体の方はねーさんの好きに改造か。よかったな、お前ら」
良くないだろう。
心の中で突っ込みを入れ、俺はその場を静かに去った。
きっとあの男たちは心をちょっといじられていい人になって社会復帰するのさ、きっと、間違いない。




