第四十一話:白の小冊子
第四十一話
神様になって出来るようになった事、手に入れたもの。
好きな場所(自分の土地でだが)へ瞬間的に移動。圧倒的な力。たとえ四肢が無くなろうと瞬時に復活する治癒能力。寝なくていい。髪の毛切らなくていい。爪とか自由自在、指パッチンするだけで料理が出てくる…などなどだ。
そして、一番すごい事が全裸でいられるということ。
「今日は水族館に全裸で行ってみるか」
これほどスタイリッシュに水族館を攻められる奴もおるまい。
「イルカと全裸で戯れる…最高じゃあないか」
「待ちなさいっ」
水族館に向かおうとしたところで邪魔が入る。
「また宮本教授たちですか」
俺の前に立ちはだかったのはかつての友人たちだった。
「まず服を着て」
「お姉ちゃん、ノーパンでもいいの?」
「大地、服着て頭にパンツかぶって…これでノーパンじゃない」
「いや、とりあえず服を着なさい」
「嫌です。せっかく脱いだのに…脱いだ時にふぅって誰しも言いますよね。人間は脱皮しませんからわかり辛いかもしれないですけど…脱ぐと言う行為がそれと同じだと俺は思うんですよ。考えても見てください。なぜ、ふぅ、と言うのか…それは服を脱いだ時に束縛していた物を取り去る安心感からその言葉が出るんです。しかし、普通の人間は服を脱ぐと怪我をしやすくなります。肌をさらしますからね。その点、俺は大丈夫です。みたでしょう?これで、ヒーローである真白さんの、スガーの渾身の蹴りを受け止めて見せました…。そう、これでね」
「指を指すな、変態っ」
「変態?変態…ああ、そうですね。なかなかいい響きです。そう言われると何処か心地いい」
「変態…」
「大変、大地が変態に…」
「お姉ちゃん、何か言ってやってよ」
「そ、そうね…あーっと、駄目、無理。変態だもん。六花がいってよ」
「頑張って」
宮本教授達は誰が言うかでもめているらしい。
「あのね、大地君」
「真白さん?何さ」
「焔ノ御神ノ末っていたでしょう?」
「ああ、いたね。気焔さんが成りそこなった神様だろう?」
「あの人は別に全裸至上主義者じゃなかったでしょう?」
「…何よ、全裸至上主義者って…」
宮本教授は頭を押さえていた。気分でも悪いのだろうか。
「全裸を唱える人?」
「いやそのぐらいはわかるけどさ」
「え?理解できるんですか」
「出来るわけないでしょ!」
「…そろそろ、其処をどいてくれないかな」
水族館に行くのなら早い方がいいだろう。瞬間にどうでもいいけど、それでは意味がない。
「それは出来ないわ。気焔ちゃん、あれを」
「はい」
気焔さん達はどうやら準備をしてきたらしい。しかし、それは刀の柄だけだった。刃の無い、子供だって振り回さないだろう代物。それが二つあった。
「この町の、想いを、そして願いを元に作ってもらったものよ」
「想いと願いを?はは、馬鹿らしいですね。何もないじゃないですか」
「本当に見えないの?」
「うん、見えないね」
気焔さんが両手でそれらを握りしめる。
「…大地、目を覚ましてよ。斬りたくないの」
「わけのわからないことを…刃が無ければ斬れないよ。ましてや、今の俺を斬るのは…」
「ちぇすとーっ」
不可能ですよ、そう言おうとしたところで俺は気焔さんではなく…いきなり刀を奪った真白さんに斬られたのだった。
「ぐふぁあっ…」
「どう?これがこの町の願い…そして想い。田原君の心に届いたかな?」
「もろ心臓までいっちゃってるでしょ」
「だ、大地―っ」
胸部を押さえ、崩れ落ちる。両足に一切力がこもらなかった。
「あ…ああ…ああああ…か、身体が…体が消えていくっ」
「ちょ、ちょっと大変な事になったじゃない」
「想定外です。ヒーローにだって…出来ないことだってあるんだよお姉ちゃんっ」
「言い訳してないで何とかしなさいよ」
俺が消えていく。そうだというのになんだかこのまま消えれば人間に戻れる気がした。裸でいる事、それは獣からの進化なのかもしれない。
投げっぱなしの羽津神様編。今回で一旦終わりです。次回からはまた別なアプローチで行きたいと思います。




