第四十話:比類なき存在
第四十話
生まれてこのかたこれほど清々しい気持ちになれた事は一度たりともなかっただろう。
全てのしがらみから解き放たれた…そう思わせてくれる要因とは何だろう。
俺がこの羽津という土地の神様になったからだろうか。
それとも、助けたいと思っていた妖怪の、焔女の気焔さんを助けたと言う達成感?
いいや、どれも違うだろう。
答えは一つ。
「全裸になったからだ。そうだ、そうに違いない…ああ、何故俺はこれまで早く全裸にならなかったんだ」
服を着ると言う事は、何かから自分を守ると言う事。そう、最早この土地で恐れる相手なんて存在しない。
「おい、君」
「はい?」
「服を着ていないじゃないか」
「神様ですから」
「そ、そうでしたか…」
K察官がそう言って俺の隣を歩いて行く。さすが、神。ここまでのぼりつめればこんな事容易いのだ。
何故、神様になったのだろう?多分、裸になるためだ。
「ん?これは可愛い子猫だ」
「ふしゃー」
「おっと、何を恐れる事がある?俺はこの土地の神だ。怪我をしているね?ふむふむ、これでよい、これで良いのだ」
手をかざすだけで子猫の怪我は治る。さすが神様。さすが俺。
「…神様だから、もっと偉大な事をしよう」
さて、では神様になったからには何が偉大か。それは、神様がしたもの全てが偉大だと言う事で認識してもらおうじゃないか。
「よし、羽津商店街をこのまま走りぬけよう」
裸になる、いや、すでになっている。だから、このまま一気に駆け抜ける!
「うおおおおおおおおおお」
想像してもらいたい。裸になって商店街を駆け抜けたらどうなるだろうか?決まっている。K察に追われるだろう。そう、変装して逃げても、だ。何故なら首から下は何もつけていない為、一発でばれるのだ。
「我一陣の風成り。駆け抜ける嵐の如し、マッパの領域に辿り着けしモノの頂。何恐れる事があろうか…」
生まれたままの俺はみんなの目にどのように映るのだろうか。
やはり、角度とか必要だろうか。
最高の見栄え、刹那を納める為にシャッターを切る人たちだっているのだ。
もう少しで、ゴール。道行く人々は俺をちらりと見ただけで慌てて逃げていく。さすが神様だ。
「大地っ」
「おっやぁ?」
障壁なんぞ存在しない、そう思っていた俺の目の前に大の字で立ちはだかる人が、居た。
「気焔さんじゃないか。良かった、助かったのか」
「…あんたねぇ、全裸になって何してるのよ」
頬を真っ赤に染めて宮本教授は俺の方を見ていなかった。
「あれ?どうかしましたか?顔が赤いんですけど」
「隙あり―っ」
ビルの上から飛び降り、俺の懐に入ってきたスガー、真白六花さんは俺の局部を蹴りあげた
「か、固いっ」
「ふっふっふ、その程度の蹴りじゃあ、駄目だよ。真白さん」
軽く相手をはねのける。二人の元へと転がって行った。
「田原大地君、もうこんな事はやめなさい」
「こんな事?どんな事ですか」
「そう言う事よ、そう言う」
腰に手を当てて胸を張るのがいけない事なのだろうか。
「別に悪い事はしていないでしょう?」
「裸になる事はいけない事よ!」
イケないことする時も脱ぎますからね…いや、そうじゃなくてだ。
「…ふっ、そもそも俺は田原大地ではありません。改名しました。今後は全テヲ解放セシモノもしくは全裸万象を極めし無着衣系勇者、ゼンラーと呼んでください」
「…ゼンラー」
「勇者?」
また会いましょう、そう言って俺はテレポートするのだった。
次回「全裸王大地」こうご期待。冗談ですよ、冗談。たまにパンツを履き忘れたとかブラジャーつけ忘れたなんて人がいますけどまぁ、いっかとなるでしょう。パンツなんてズボン脱がなきゃ履いてないのわかりませんがね。そんな友人の話から思いつきました。ここから軌道修正して一つ目小僧の話に行きたいのですが厳しそうです。このまま終わりそうで怖い…ではまた。




