第三十四話:自己犠牲という提案
第三十四話
どうも神様を探していると民子ちゃんに出会うようだと彼女の祖父は言った。
「つまり、俺らはすでにやばいということですか」
「ああ、そうじゃな。お守りを見つけても駄目じゃ。あくまであれは仮の神様。男神か女神のどちらかが見つからなければ無理じゃよ」
「男神?女神?」
初めて聞く事だった。
羽津神社で合流した宮本教授がこちらを見ずに説明してくれる。
「羽津市には男神と女神がいてね、男神は今までいなかったみたい。元はいたはずだけど、今では女神だけで色々できるみたいだから、男神でも見つかればいいの。どこに出て行ったのかは分からないから羽津市じゃなくて日本全国から見つけださないといけなくなるわ」
いつ居なくなったのかもわからない男神を探すのは骨が折れそうだ。
「手っ取り早い方法はないんですか?」
「…この前言った通り、元神様を連れてくればよい。あとはわしが元の鞘に戻してやるからの」
「…とはいってもねぇ」
俺の方をちらりと見てくる宮本教授に首を振る。
「まだこっちも見つけてないのよ。あの化け物のおかげでね」
化け物、つまり…民子ちゃんの事だろう。しかし、宮本教授も知っていると言う事は遭遇したんだろうな。
「神様の条件って何があるの?」
それまで黙っていた真白さんは怖気づくことなく目の前の老人にそう尋ねた。
「それは神様じゃなければわからんのぅ」
「ふーん」
「まぁ、条件わかってクリアすれば誰でも神様…」
神様に昇華する装置を使えばいいんじゃないんだろうか?作った人は宮本教授の知り合いみたいだし、何とかなるだろう。
「あ」
「ん?どうしたのよ」
装置が出来ても、結局は誰が神様になるのか…そこで詰まるからあまり意味がないのか。
「いや、何でもないです」
「変な声を出さない事、いいわね?」
「はい…」
「ふむ…」
民子ちゃんのおじいさんは俺を見て頷いていた。
結局、誰ひとりとして案を出す事もなく時間も遅くなってきたのでお開きとなった。
宮本教授と真白さんが話しながら出ていく。
「坊主」
「はい?」
「お前さん、もしかして雪女の血が流れておらんか?」
「雪女の血?」
立ち止まり、おじいさんを見る。
「いや、ちょっとわからないです」
「ほぉ?何故じゃ」
「俺、今の親とは血が繋がって無いみたいなんで。記憶がどっかの幼稚園と言うか、施設と言うか…そこら辺から始まっているんですよ」
「ふむ、そうか。だったら神様になる条件を一応は満たしておるな」
俺はそこまで鈍感じゃないのでこの流れを断ち切りたかった。
「俺に神様になれと?」
「そうは言っておらん。お前さん達にいっておるのは…神様を連れて来いじゃったろう?」
実にいやらしく、爺は笑っていた。
「…」
「見つかっておらんなら仕方がないがな。このまま行くとこの町には問題が出てくるぞ。いや、実際に見ておらんならまだ何とかなると考えるじゃろう。お前はどうじゃ?わしは町のいたるところで色々見たぞ」
わかっていて聞いているようだ。この爺さん、民子ちゃんを放っておくことはあるな。そもそも、俺たちが座敷わらしに気焔さんを拉致されている事を知っている。今更だろう。
「決めるのはお前さん自身じゃ。もっとも、坊主に務まるかどうかはわからないが…これだけは保証しておこう。あの焔女はどう転ぼうと絶対に助かる」
「…そう、ですか」
嘘はついていないようだった。
その後、一人で家に帰る途中…真白さんの言葉を思い出した。
「…ヒーローだから、みんなを助けられる…」
つまり、それは…どういう事だろうか。
みんなのなかに自分は入っていないのだろうか。




