第三十三話:新たな問題
第三十三話
結局、天音希恵と言う少女を連れて神社にはいかなかった。正確にはいけなかったと言っておくべきか。宮本教授だけが神社に向かい、俺と真白さんは友人、孝道、竜太、真輝ちゃんグループの待っているファミレス(食い逃げしたところとは別)へと向かう。
「これからどうしようか」
「神様見つけた…わけだけど、さすがに嫌がっている女の子を無理やり据えるのはまずいよな」
「そうだね。あたしだったら田原君に正義の鉄槌プレゼントしちゃうかな」
これは流せ、ただの冗談だとおも…冗談言っている人は烏が啼く中、あんなまっすぐした目でシャドーしないか。
「でも、誰もかれも…みんなを助けられるなんて甘い事は言わないよね?」
「それは…」
そうだろう。現に知り合いの教授はあれっきり姿を見せていない。つまりはそういう事なのだ。現実離れした神様なんて存在がいるのだから非現実的な事が起こってもおかしくない。みんなを助けるのは…既に不可能な事なのだ。
「あたしは、出来るよ」
「え?」
「ヒーローだから、みんなを助けられる」
「…真白さん」
「方法はまだ見つかってないけどね。諦めなければ、方法は見つけられるはず。だから、一緒に考えよ」
「そう、だよな」
宮本教授にばかり甘えられないだろう。教授だって忙しい。だから、暇な学生が頑張るだけである。
「こっちは雪女、鬼の関係者、座敷わらしの居る家に住む人がいるんだからなんとかなるでしょ」
真白さんの言うとおりである。まだ色々と聞いていないし、試してない方法もあるかもしれない。
ファミレスへの近道で真白さんが俺を手で制した。
「待って」
「何?」
「何か…いる」
手にモザイクをかけたほうがいい人物が確かに居た。何だかもう、可哀想な何かに変貌してしまった黒いそれはきっと烏だろう。
「ああ、田原先輩」
「民子ちゃん?」
首をぐるりと動かしてこちらに向ける。暗がりで金色に輝く両の眼は蛇か何かを思い出させてくれる。こんな状況でも俺は烏に手を合わせるぐらいの心の余裕は持ち合わせていた。
「…お守り、探しているんですよ」
「お守り?」
「ええ、はぃ。お守り。あれないと体がもたないんで」
真白さんは俺を隠すように前へ立つ。
「…」
「あ、雪女ぁ…ねぇ、わたしの鈴付きのお守り、知らない?この子知らないって。でもね、なんとなく嘘ついてそうだったから…つい」
くっ、と何かを捻る様子を見せた。手に持っていた烏は何の冗談か、薄くなって消えてしまった。まるで蒸発したかのようだ。
「やっちゃった」
そして、凄く良い笑顔を見せてくれる。
「お、お守りを探していたんだよね?」
「はぃ、そうですよ?田原先輩はぁ…知りませんかぁ?」
この時点で四つん這い。四つん這いと言ってもこう、何かそそられるような四つん這いじゃなくて上から見たらXの感じだ。両手両足を伸ばし、まるで蜘蛛のように動いてこちらに寄ってくる。
「こ、怖っ」
「逃げるよっ」
あんなのに立ち向かえるはずがない。真白さんに手を引かれて元来た道を走り抜ける。
「まてぇぇぇぇぇえええい」
「お約束じゃねぇかっ。怖いよママ―ン」
髪を振り乱し、袴のようなものも避けてきているし、乳房も見えている気がしないでもない…確認していないからわからんが、そんなの見ていたらやられること間違いなしだろう。
逃げられるだけ逃げて、辿り着いた場所は天音希恵ちゃんの家。
「うぐっ」
「っと、セーフかな」
背後でうめき声が聞こえる。真白さんとお互い肩で息をしながら振り返ると恨めしそうな顔でこちらを見つめる民子ちゃん。
「一応、神様としての力が残っているだろうから…あてにしたけど正解だったみたい。あれ、多分この土地の暫定的な神様だよ」
指差す先にはうろうろしている神様。
「口惜しや~口惜しや~」
「怖っ、神様何か言ってますけど」
結局、五分後にはまた何かを見つけたのかそちらの方へと飛んでいってしまった。
「うーん、これはまた面倒な事になったねぇ」
「ほのぼのしてられる問題なのか?」
「お姉ちゃんに聞けば詳しい事聞けると思う。他のみんなには今日は解散って伝えたほうがいいかも」
だろうなぁ、さっきの民子ちゃんにまたつけ狙われたら大変だろうし。
その後、携帯電話で解散の旨を伝えることになった。




