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黒の小冊子  作者: 雨月
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第三十一話:羽津の神に

第三十一話

 朝目を覚ます。

「…」

 外は晴れているはずなのに、窓から朝日が差し込んでいるはずなのにこの部屋は酷く暗かった。

 決められたように部屋から出て、下に降りる。パパは仕事でもう居ない。ママは食器を洗っている。

「おはよう」

「…」

 ママは言葉を返してくれない。

 冷めたトースト、ぬるくなった牛乳、味のしないサラダ。

 テレビはニュースを流す、ただそれだけ。

 日常の繰り返し。普通の範疇。昨日の続き。

「いって、きます」

 返事のない家。嫌いな青空。人の通らない道。

 いつも通う学校。

 人はいる。

 けど誰も…誰も私に気づいてくれない。

 この世界に人はいる。

 でも私の居場所はどこにもなかった。

 そう、数か月前まで。



――――――



「神様見つけるとか無理っすよ」

 神様捜索一日目。講義を終えた俺たち三人は(友人、古月、竜太、真輝ちゃんも小学校方面にて協力してくれている)中学校がある西方面へと歩き出した。

「何としてでも助けだす、待ってて気焔ちゃんぐらい言えないの?」

「待ってて気焔ちゃん!ヒーローはやっぱり人助けが基本だからっ」

 グッと拳を握りしめてそう宣言する真白さんは久々に格好良かった。

「ま、気楽に行きたいところだけど遅くて三日で何とかしないとね」

「手がかりもなしで三日って無理じゃないですか?羽津神社の人たちだって探していたんでしょう?」

「だよねーだよねー、そうだよね。どうやって探すの。一人一人に神様ですか?って訊ね歩くの?」

「そんな面倒なことしないわよ」

 じゃあどうするんですか?その質問は宮本教授が手にしたものを見て忘れてしまった。

「じゃーん、神様発見機~。結構前にゴキブリ野郎が悪用しようとしていた時に盗ってたの」

「それ、あるならずっと前に使えばよかったんじゃないんですかね」

 見た目、水筒みたいな装置?だ。

「この装置でもうまく見つからないし、外れた時の代償が酷いわよ~なにせ、間違えたら羽津の爺に記憶消されるから」

「きお…え?」

「怪しげな装置に無理やりおさえこまれて脳をシェイクされるの。それだけでもう立派な廃人よ」

「こ、こわっ」

 いや、立派な廃人って…何それ確かに怖いかも。

「宇宙空間でいきなりバイザー開けたりします」

「…」

 ま、まぁ、それは置いておくとして神様がすぐに見つかるならいいんじゃないだろうか。

「当たるも八卦、外れるも八卦」

「早く使おうお姉ちゃん」

「ええ」

 上の部分を捻ると(まるで水筒みたいだ)淡い光が漏れだした。

「ん?あれ」

「…何も起こらないわね」

「は?淡い光が出てますけど。ほら、あっちの方に流れていきますよ」

 不思議がっている二人が俺は不思議でならなかった。淡いとはいえ、圧倒的な存在感がある光だ。虹色に光るそれは曲がり角の向こうへすでに進んでおり、まだ装置の中から漏れ出していた。

 俺の先導で進むこと数分。羽津中学校についた。

「ここに…溜まってます」

「最近いろいろあってるからねー、田原君がここにはいると一発で御縄よ」

「ちょっとあそこのファミレスで様子見しよう」

 真白さんの提案で三人で席に着く。

「まだ見える?」

「はい、そろそろ生徒たちが出てくる時間ですかね」

 ジャンボツインハンバーグセットを頼んだ宮本教授にオムハヤシオムレツ定食を頼んだ真白さん…俺はコーヒーだけにしておいた。

「…」

「ど、どうかしました?」

 野獣のように食ってる宮本教授は俺の方をずっと見ていた。

「何も食ってませんよ?だから会計に負担はかけさせません」

 コーヒーが飲みたいのだろうか?しかし、もう残っていない。

「は?なんでわたしが払う事前提になってるのよ?」

 冗談言うとかお前覚悟しとけよという目をしている。怖い。

「え?違うのっ」

「違うわよっ」

「あ、あの子ですっ」

 淡い光が群がっている一人の生徒。俺はそれだけ言って店を出た。真白さんも後に続く。そして、宮本教授まで追いかけてきた。

「え、ちょっとお金は?」

「ちゃんと英世置いてきたわよ。一人」

「足りねぇ」

 無銭飲食、俗にいう食い逃げになるんじゃないだろうか。いや、成るだろう。

 金額にして英世二人とワンコイン分ぐらいは使ったはずだ。

「気焔さん助けてもおれたち三人が救われないんじゃ意味無いかと…」

「わたしは世界を敵に回しても…自分の道を貫き通すわっ」

「お姉ちゃんかっこいい!」

「やってる事が凄く格好悪いのに…」

 大人になってもあんな人間にはならないと神に誓おう。

 中学生を追い越して走り続ける俺たち三人。徐々に光の濃度は濃くなっていく一方だ。

「…見つけたっ」

 そしてとうとう光が集まる人物に追いついた。


いずれ本編のほうでも改めてやろうかと思います。そう、妖怪と幽霊の定義です。日本人はここら辺が曖昧な人が大変多い。尤も誰もが納得する定義をした人はいないのであくまでこの作品の中での定義としましょう。柳田國男氏も定義していましたが嫌いな人もいるでしょうから。まず触れられる、自然界の影響を受ける、何かしらの特徴を持つ、個体差がある、条件がそろえばだれの目にも明らか、干渉し合う。こんなところでしょうか。幽霊のほうも定義しなくちゃ話にならないでしょうから簡潔にいきます。触れない、以上です。幽霊のほうはいまいち勉強不足なのでこの程度で許してください。神様の定義?う、ううん、勘弁してください。これは定義とはまた違う話になりますが、神様が完璧だと仰る方がいます。しかしまぁ、完璧なお方が作られた割には人間はあれですね、あれ。ピンキリですからまぁ、しょうがない。所詮この世は暇つぶしとも言いますし、今回はここらでドロン。

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