第三話:焔女の調査
第三話
焔女について調べて今日中にでも提出してやろうと考えた。そういう理由で焔女について調査していいかと気焔に尋ねたところあっさりと『構わない』と答えてくれた。
「冷房付けていいか?」
「ここは大地の家だろう?」
「ん、まぁ、そうだが…冷房付けて体調悪くなったりしたら嫌だし」
焔女とは何か…自分なりに結論付けてみるとずばり炎の精霊の類。自分で言っていて寒くなってくるけど、雪女の反対じゃないかな―と思うわけだ。だから寒いところは苦手だろうと結論付けている。
「寒いの大丈夫なの?」
「こう見えて鍛えてるから」
何百年引きこもっていたんだろう…焔女と言うより引きこもりと言う現代を生き抜く妖怪の類なんじゃないだろうか。
引きこもりは家に寄生するらしいからな。座敷わらしの類かと思いきやどちらかと言うと貧乏神よりでしかも個体によっては家主を襲ったりする怖いものらしい。
冷房を付けさせてもらって聞きたかった事を尋ねる。
「焔女って何なんだ」
「………さぁ」
大学生とは実に難しい事を話すのだなと妙に感心された。適当なダメ学生ですんません。
「むぅ、難しいなぁ…あたしはあたしじゃ駄目か?」
「個人としては大丈夫なんだろうけど、それじゃちょっと主観的すぎる」
「……うーん、火を見たり付けることに感じる?」
それは危ない趣味の人だ。
「……違うな。いや、実際そうなんだろうけど作品が出来た時は子供を産むみたいなものだって師匠が言っていたし……あれは筆舌しづらいとも言ってたかな」
つまり作品を作るごとに快楽に襲われると言う事だろうか。いやいやまさかそんなことがあり得るわけがない。
俺が悩んでいる間にどうやら答えが出たようだ。
「いつかあたしが代表して言えるような立場になるまで待ってほしい」
「わかった。えーと、あとは能力って言うか火を操るって言うのがどれくらいか見せてほしいかな」
指を鳴らすだけで火がつく。そう言った物を期待している。もはや問答で本当に妖怪なのか調べるより実際に体験したほうがより明確となるだろう。
「ああ、そっちのほうが得意分野だ。頭を動かすのは苦手だから」
教授の言っていた事は本当だったようだ。
「何か準備する物とかは?」
「そうだな、あのコンロとか言う物があれば十分だ」
コンロを見て凄く驚いていた。風呂を見て凄く驚いていた。テレビを見て…といったらキリがない。まぁ、そうだろう。十年たってみればテレビを必要とせずとも世界を見る事が出来たりする未来に来たら俺だって驚くわい。
コンロの前にたって、火を付ける。
「これでいいのか?」
「えーと、このすてんれす製の包丁でも焔女の力が加わることで……」
変化は瞬時にして起こった。別に火力が凄くなった(想像していたのでは料理に酒をぶっかけるようなもの)わけでもなく、色が金色に変わっただけだ。
ただそれだけの変化で包丁は熱を帯び、白刃へと変わっていった。
「金鎚を貸して」
「え、あー…っと、どこにあったか…特別せいでも何でもない量産体制で作られた…」
「早くっ」
「すんません」
金鎚を見つけてきて渡す。それを思い切りたたくわけもなく軽く調整しているようにも見えた。
「よっと…」
そしてまた火にかざす。まるで子供が鍛冶ごっこの火遊びをしているようにも見える。
その行為を何度か繰り返すと包丁は見違えたかのように…いや、実際妖刀みたいなオーラを纏っていた。
さすがに握り手のプラスチック部分は溶けてしまい木から気焔が作りだしたわけだが…こんな立派な物で何を切れと言うのだろうか。
「どう?わかった?これがあたしの…焔女の力」
「見栄を切っているところ悪いんだが良くわからなかった」
凄く嫌な空気になった。
「嘘」
「いや、本当」
「どこら辺が?」
「全部。説明も加えてもう一回最初からやってくれ」
仕方がないなと辺りを見渡している。
「素材が必要なのか?」
「そりゃあ、あったほうが説明しやすい」
それならと子供のころに使っていた金属バットを手渡す。
「こういうのでも大丈夫なのかい気焔さん?」
「大丈夫。さっきのとはまた違う物作るからちゃんと見ててよ。あと、集中しているから頷いたりするだけにしてね」
釘を刺されたのでしっかりと頷いておいた。
火が何となく変わったところで説明が入る。
「えーっと、力をどばーっと火に流し込むの」
「……」
実にわかりづらかった。
「そして次に火の部分へと金属を当てて…温度が使いやすい温かさになったら力を込める。そうしたら温度が維持されたりするから」
「……」
わからねぇ。
「そして後はただ単に力を込めるだけじゃなくて自分の心を一振り一振りに込めていく。心を具現化する気持ちでね」
「……」
やはり、人間と焔女とは全然違うものらしい。
今回の作業は先ほどよりも長丁場となった。二時間ほど経って金属バットは何だか変な筒になった。
「…出来た」
「出来たって……何だこれ」
鈍く輝く銀の筒。確かに金属バットぐらいの重さはあるわけだ。
「最近のカガクというのは凄いんだな。仮免らいだぁスガーでスガーが持っていた武器をあたしなりにアレンジしてみた。あっちは氷の剣だったけど対抗して炎にしてみたんだ」
グリップ部分を両手で握りしめるとあら不思議。まるで懐中電灯を扱うような手軽さで筒から金色の炎の線が八十センチ程伸びたのだった。
「……特撮見て作っちまう鍛冶職人がいるとはな…」
焔女とは夢を現実にする努力家の妖怪…とでもまとめればいいのか?火の扱いがうまいというのもいまいちわからなかった。




