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黒の小冊子  作者: 雨月
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第二十八話:語る語る

第二十八話

「これまでのあらすじ。焔女気焔が神へと昇華することに憤りを感じながら何もできないへたれ、田原大地。彼女じゃないとか成り行きで…などと言いつつ同居してるし実は部屋が一緒で寝るのも布団を並べていたりするのに色っぽい話もしゃべらない玉無し野郎。この町を守るため、神様へと変わりつつある焔女気焔を追いかけて腕を掴み『最後の一晩は忘れらない夜にするよ、だから待ってほしい』と口説き始めるっ」

「…宮本教授-っ窓から半身出しながら外に手を振るのやめてくださいっ。恥ずかしいですよっ」

「お姉ちゃん、あたしもやるーっ」

 大学生にもなって(片方はいい年した大人)何をしているんだろう、この人たちは。

「だってぇ、子供の頃は危ないからやっちゃ駄目って言われたでしょ?」

「そりゃあ…言われましたけど」

「つまり、大人ならオーケーだと」

「…すごい理屈っすね」

 車に乗って俺の自宅へ、部屋までついてこられた。本人たちは一刻も早く気焔さんを助けてあげたいとか言っていた。

「へー、これが男の部屋なんだ」

「えちぃ本はどこかな」

「家探しとかやめてくださいっ」

「ブラジャー…え、何これ付けてるの?」

「それは気焔さんのですっ」

 十分程度騒いでから部屋の床に一枚の図面が敷かれる。

「…あの、これは」

「察しの通り、気焔ちゃんが連れ込まれたあの家の間取り図ね」

 古月家の間取り図はなるほど、俺の家との格の違いを見せてくれる。

「それで次は縦の方ね」

「縦?」

「六花」

「はいさ」

 真白さんが見せてくれたのは地下三階に及ぶ縦の図面だった。そして、地下一階、地下二階、地下三階の間取り図も鞄から取り出した。

「…この黒く塗りつぶされているところは?」

「十八歳以上は立ち入っちゃいけない場所。もといお仕置き部屋」

「…」

 深くは、聞かないでおこう。孝道の奴もお手伝いの娘といろいろあったとかなんとか酔っぱらうと喋っていたからな。

「いや、それはいいとして…間取り図見たところでどうするんですか」

「ちゃんと見てないわねー、ここよ、ここ」

「ここ?」

 一階の入り口から入り隣の部屋へ…其処の一室の押し入れから地下へと向かっている。

「Now Loading」

「…」

 それで、地下一階の目の前には階段があった。

「この階段が関係しているんですか?」

「そうね、だけどこの階段はまず地下二階に下りて其処から地上一階に行き、専用通路を経て地下三階まで下りてから地上一階である離れに行きつくの。ややこしいでしょう?」

「…なんで、こんなにややこしいんでしょう」

「知らないわよ。作った奴に聞きなさい」

 それは誰だろう。もはや生きてはいないだろうな。

「…昔は迷宮だったとか」

「迷宮?」

 真白さんの突然の発言に俺は固まった。宮本教授は棚にあるマンガ本を見開いて笑っている。

「そう、何でも牛の化け物を閉じ込めているとか…」

「いや、それは…」

 外国のお話だろう?神話か何かで見た牛頭の化け物だった気がする。

「…座敷わらし、かもね」

「はい?」

「いや、何も。じゃあ今晩はここで酒盛りよ!」

「いぇーい」

 突如、宮本教授がそういいだして真白さんが右手を突き上げる。

「ノリが悪い」

「い、いえぇーい!」

「よろしい…明日朝一で羽津神社に行くから覚悟しておきなさいよ」

「…民子ちゃんに協力を仰ぐんですか?」

「まさか…あっちはあっちで神様探しているからそれどころじゃあないわね」

 では何をするために行くのだろう。必勝祈願とかだろうか?

 その日の晩、気焔さんがいなくなり何となく暗くなっていた我が家が久しぶりにうるさかった。

 珍しく父が家に居たものだから『騒がしいな』とぼそりと俺にこぼしたりもした。基本的に無口な人だから相当うるさかったようである。

「あの、宮本教授」

 酔っ払った時、人間と言うのは色々と吐いてくれるときがある。

「ん?」

「…竜太からどんな話を聞いていたんですか」

「…んんーこういう話はね、ガキには教えたくないの」

 額を突っつかれて笑われてしまった。

「子供はねー知らなくていいのよ」

 酔いつぶれている真白さんにもそういうと客間に行ってしまった。

「…ガキ、ねぇ」

 不思議と起こる気持ちにもなれず、それなら聞かないでおこう…とも思えなかった。まぁ、機会を見て真白さんか竜太にでも聞いておこうと思う。


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