第二十七話:事後処理
第二十七話
竜太の家の中は酷く荒らされていた。
荒らしたのは竜太だろう。
真輝ちゃんは竜太が鬼に成った時、部屋にいたらしく、詳しい事情は知らないようだった。とりあえず何かが暴れているのはわかっていたそうで部屋を出なかったのは賢明な判断だと間違いなく言える。
「えと、お兄ちゃんが…どうかしたんですか」
「いや、何も。ちょっとあのきのこがまた発生したからこっちに」
実は鬼に成ってました、なんて当然言えないので黙っておくことにした。宮本教授、真白さんそして竜太も何も言っていなかったからこれでよかったのだろう。
「そうなんですか」
「じゃあそっちの真輝ちゃんとやらは田原君に任せるわ」
「え」
「こっちはこっちで聞きたい事があるからね…ほら、さっさと部屋に連れて行きなさい」
初対面であるはずの真輝ちゃんに向かってそう言うとさっさと行けと言わんばかりに手を動かしている。
「ぐぬぬ…竜太」
「悪い、真輝を連れていってくれ」
「いや、俺もだな…」
色々とお前から話が聞きたいんだけどね。それがどうしてわからないかなぁと思ったわけだ。
それまで黙っていた真白さんがにこりと笑って俺の肩に手を置いた。
「まさか真白さん…」
「空気を読んでね」
その決定的な一言で俺は真輝ちゃんに連れて行かれることとあいなった。
「くそう…」
「き、気を落とさないで下さい」
「いいんだ、俺なんて…はぁ、まぁ、仕方ない」
女の子の部屋に連れていかれて慰められるとかもうお母ちゃんに泣きつきたいレベルである
「…で、俺はいつまでこうしていればいいんだろうか」
「聞きたい事があるんですけど」
「何だい」
用事がすんだら呼ばれるだろう。そう思って俺は腰を下ろす。
「田原先輩は…妖怪を斬る人なんですか」
手に持っている気焔を指差し、真輝ちゃんは俺の目を見ていた。
「は?…あ、いや、違うかな。これは成り行き上俺の手の中にあるだけだよ。いつか、無くなるかもしれない」
最初は売る気満々だったけど、未だにこの手の中にある。たまにオークション用に刀を撮ったりするけれども、結局は売れない。
刀に魅了されているのだろう、それは間違いないし、これに惑わされない人も居ないと思う。
「友達が俺に押し付けた…いや、俺に託している刀だと俺は思ってるよ」
「そうなんですか…あの、今さらですけど…妖怪って信じますか?」
「そりゃあ、まぁ…信じる以前からそういったサークルに入っていたから仕方がないのかな…」
入る前は微妙に信じていなかったし、焔女探しているときはぶつくさ文句も言っていた。そんな俺が今では雪女姉妹と一緒に座敷わらしにさらわれた焔女を助けようとしたり、鬼を倒したりしてきたのだ…。
「じゃ、じゃあ…気をつけてください」
「気を付ける?」
「はい、実は…知り合いに巫女の人がいるんですけど、最近神様が居なくなったとか言って暴れまわっているんです」
「…もしかして苗字が羽津っていう?」
「はい、あ、もしかして知っていましたか?」
確か、羽津民子とか言ったかな。あの子が暴れまわるような性格ではないと…いや、そういえばノヅチを小石で沈めたんだっけ。
あの力がこっちに向けられると思うと足が震えてくる。
「と、とりあえず…仲が悪いとかは無いかな」
今度、菓子折りの一つでも羽津神社に持って行こうかしら…力無きものは力のある人に何かを献上し、生かしてもらうが世の常である。
それ以後、特に会話が花咲く事もなく(仲がいい女友達ってわけじゃないんだ察してくれ!)お互い的外れな会話を続けていると携帯が鳴った。
「じゃ、じゃあ俺行くから」
「は、はい」
何だか最後は浮気がばれたっぽい彼氏とそれを追求しようかどうか悩んでいる彼女みたいなぎくしゃくしたものとなってしまった。
だから、こんなことを言ってしまったのかもしれない。
「あのーさ、もしも…竜太と真輝ちゃんの前に…その、お母さんが現れたらどうする?」
その質問に対する答えはすぐに帰ってきた。
「許しません、絶対」
「そっか…」
鬼を見たはずより鬼のようだった…とは口が裂けても言えない、そんな怖い表情だった。




