第二十一話:限定的な神
第二十一話
「よく来たな」
部屋の中に通され、其処には眼鏡の友人である孝道がいた。案内してくれたおじいさんは部屋から出て行った。
「よく来たな…だって?お前無理やり感満載だぞ。一体俺たち呼んでどうしようって言うんだ」
強引な性格じゃない友人だから何かしら事情はあったのだろう。しかし、そういうことは事前に説明しておかなければ友情が崩壊してしまうかもしれないと言っておこう。
「詳しく説明したいけれどなー…まぁ、とりあえず離れに行こう」
それなりの人数で歩いているのに廊下はもう一人通れるほどあり、途中、お手伝いさんと思しき人とすれ違う。何と言うか、育ちが違うのを見せつけられた気がした。
「問題はここだ」
「問題?化け物でも…いや、座敷わらしって言ってたか」
「本当に座敷わらし…ですって?」
宮本教授が嫌そうな顔をした。心の底からまた面倒な物に引っかかったと言わんばかりの顔だった。
「問題あるんですか?座敷わらしでしょう?別に取って食われるって事は…」
「…座敷わらしはねー…限定的ながら神の力を備わっているのよ」
「は?」
「えーと、この地域の神が気焔ちゃんとするでしょう?」
仮定と言うよりちょっと過去の話か。宮本教授は気焔さんの肩に手を置く。
「それで、この人形を…」
「うわ、良く出来てますねー」
「お姉ちゃん相変わらず好きだね」
そこには手のひらサイズの気焔さんがいた。どうやら宮本教授の手によって作られたものらしい。
「わたしの手のひらがこの家ね。この手のひらの上ではこの小さな気焔さんは神様の力を使えるの…もっとも、その家に住む人の絶え間ない信仰心が必要だけどね。信仰心を得る事によって神様は少しの力を、主に家の繁栄ね…与えるの」
「なるほどー」
ただし、と宮本教授は付け加える。
「神様みたいなものだけれど神様じゃあない。だから、大元の神様が居なくなると不安定になる…」
その時、離れの中から壁を思い切りけったような音が聞こえてきた。
「……マジモンね。ここ、当たりよ」
「当たりって宮本教授…」
ノヅチの頃とは比較にならない地響き…と言うよりは空気を突き抜けてくる、そんな感じ。波動とでもいいのだろうか。
「どうか…したのか?」
「孝道は何も感じないのかよっ」
「あ、ああ…これっぽっちも」
戸惑いながら頷く孝道を見て少々疑問がわいた。
「風避け!」
「風避けっ」
気焔さんと真白さんが孝道の後ろに隠れる。
「…そんなに離れから何か感じるのか?」
孝道は離れに近づいて行く。
「近づいちゃ駄目っ」
「え」
宮本教授の言葉を聞くより先に、孝道は離れの扉を開けた。
「ぐあっ」
「べほっ」
何が起こったのか一瞬理解できない。腹部に重い衝撃、孝道がぶつかってきたのだけは理解できた。
「くっそー…おい、大丈夫か孝道」
「な、何とかな…これだけ女性が居るのに男に当たるとは思わなかった」
「…元気そうだなどいてくれ」
乱暴に放り投げて何とか立ち上がる。真白さんと気焔さんより前に居たはずなのに気付けばブロック塀まで飛ばされていて、離れが見えなくなっている。
「気焔ちゃんっ」
真白さんのそんな声が聞こえてきたので俺と孝道は慌てて元いた場所へと走って向かう。家の影で此処からでは離れの様子が確認できなかった。
「うわ、ちょっと誰か助けてっ」
「き、気焔さんっ」
離れの入り口から赤ん坊の腕をそのまま大きくしたようなそれが気焔さんを掴み、もう一方の手で真白さんと宮本教授を近づけさせないようにしていた。
「な、何だあれ」
孝道にも見えているようで腰を抜かしていた。俺は足が震えているけども何とか立っている。
「座敷わらしよ…」
「うそ、手だけの妖怪だったんですか。俺てっきり幼いおかっぱの女の子かと予想してたんですけど…」
マスコット的立ち位置かと思えばあんな手の妖怪だったとは思わなかった。
「違うわ、本体が肥大化してあの離れに巣くってるの」
「…」
「あー駄目、つ、連れて行かれるーっ」
気焔さんは離れに引き込まれ、もう片方の腕も真白さんをこっちに吹き飛ばして引っ込んだ。
「ぐはっ」
「きゃっ」
真白さんの尻が顔に当たり酷い目に会った。
「あいたた…」
「むぐー」
「あ、ちょ、やめ…何してんのよっ、スケベっ」
「んがーっ…がくり」
わかった事は一つだけ。真白さんは今日白いパンツを履いていた…いや、気焔さんがまた捕らわれてしまったと言う事だ。




