第十九話:わらしの始まりは酒飲み
第十九話
「座敷わらしだって?」
「おうともよ」
夏休みも終わり後期の講義が始まったある日、俺は友人と飲みに行っていた。
「こいつの家に出るってさ」
「ほー」
「僕の家、すごいのいるでしょ?」
焔女なんてローカルすぎる妖怪が居る土地に座敷わらしがいるとはある意味驚きである。
「田原のサークルは妖怪研究してただろ?」
「まーしてたかな。今じゃ宮本教授んところに居るよ」
「あの教授怖くね?」
「それなり、若いし見る分には羨ましい…田原的にはどうよ?」
「そうさなーやるときはやる、やらないときはだらけているようなスイッチのオンオフが激しい人かな」
酒もすすみ、そろそろお開きにするかと立ち上がると眼鏡をかけた友人、古月孝道がさきに立ちあがった。
「今度サークルのみんなで僕の家に来るといいよ。検証して欲しかったからさ」
「はは、うちはそういう検証とかはやってねぇよ」
「でもツチノコ売りさばいたって噂になってるぜ?」
「…噂は噂だろ」
「いーんだよ、それっぽいのでうちの爺ちゃんがうるさいから嘘でもいい、認定が欲しいんだ。今日は僕がおごるよ」
比較的けちで有名な孝道がそう言ってお会計を済ませに行く。
「…一体、あいつどうしたんだ?」
「さーなーずーっと一緒に居るわけじゃないんだ。いきなりおかしくなってもわからん。ま、酔っぱらってるんだから有り難く払っておいてもらおうや」
酔っ払っているようには思えなかった。そもそも一杯程度で酔うような奴ではなかったはずだし、そんな人間のほうが稀だ。
別れ際、孝道はまた俺に言った。
「来る時は僕に連絡してくれればいい」
「…考えておく」
次の日、宮本教授のところに行くと頭を抱えていた。気焔さんが首をかしげる。
「どうかしたんですか?」
「頭が痛い」
「飲みすぎたんですか」
やれやれ、困った人だ。
「どうしてそっちに行くかな?風邪、昨日下着で寝てたの」
「いっつも白衣の下は下着じゃないですか」
白衣の前をきっちり止めている為に露出の高い服を着ているだけだと(さすがに谷間は隠れない)思われているからなー。でも部屋じゃ前開けてるしどれみればいいか悩んじまう。
「…目がやらしいよ」
「存在がいやらしい。神様探して消してもらおう」
「恐ろしい事を言う…あれ?真白さんは?」
いつもは俺達より先にやってきているのに(気焔さんはあれから何故か大学についてくるようになった)今日は来ていなかった。
「あー、たしか『田原大地の友達です』といった学生の相手をしてもらってる」
鼻声の宮本教授に風邪薬とのど飴を渡す。
「さすがこの部屋の動く救急箱」
「嬉しいような嬉しくないような…」
「ふー、ただいまー」
いたって普通のテンションで若干疲弊した真白さんが姿を現す。
「おかえりースガー」
「スガーやめい…こほん、えーと、よくわからないけど今から古月孝道さんという人の家に行くことになりました」
「は?」
その声を上げたのは宮本教授だ。
「今日は『偉大なる宮本雪教授が居てくれたおかげで世界が救われたパーティー』するっていったでしょ?」
「いや、聞いてないです」
「うん」
「あたしも知らなーい」
「な、何それあんたたち酷過ぎ…」
「あ、あー、今度俺が準備しますってば」
思った以上にへこんでいたので肩を叩いてあげておいた。既にほかのメンツは部屋を出ていたりする。
「俺もこんな扱いうけないよう真面目に生きよう」
「何か言った?」
いえ、何も。




