第十二話:ノヅチ
第十二話
ツチノコはそもそも何なのか。生物だ何だと言われ続けて見つけた時の賞金は年を経るごとに増え続けているらしい。ツチノコの正体は~だった。そんな話もたまに聞く。
一つの節として日本の神話か何かに登場するノヅチと関係あるらしい。ツチノコが成長すればノヅチになるのかはたまたその逆か、ただの呼び方なのか。この答えが見つかるのはツチノコが発見された時だけであろう。
――――――
ツチノコがいると言う裏山に向かって気付く。
「そういえば焔女っていうか気焔さんと会ったのここらへんだった」
「へー、そう」
どうでもいいと言わんばかりの返事だった。
「だからツチノコなんているわけないですよ」
「真っ向から全否定はおかしい。あのゴキブリは焔女を見つけたんでしょう?」
「…それは…そうですけど」
教授は今頃どうしているのだろう。あれが教授じゃないと思いたい。
「それで六花はどうしたの?さっきから声聞いてないわよ」
先を歩く宮本教授が振り返る。
「すぐ後ろに居ますよ」
「もうだめー」
「……本当、役に立たないんだから」
俺の背中に居る真白さんにため息をついてから宮本教授は手近の岩に腰かける。
「さて、と…この山、やっぱり当たりだわ」
「当たり?」
真白さんを下ろして宮本教授へ視線を向ける。
「ええ、相当でかいのがいる。準備はいいわね?でかいの呼ぶわよ」
そう言うと宮本教授は虫網を地面に突き刺した。
「何しているん…」
ですか。その三文字が出てくるよりも先に腹の底に響くような音が辺り一帯に響き渡る。
「な、何ですかこれっ」
地響きは俺が宮本教授に訊ねているあいだも続き、徐々にそれは大きくなっているようだった。まるで近づいてきているかのようである。
「あいたっ…もー、何これ」
真白さんも山登り(正確には丘登り)で消費した体力が戻ったようで辺りを見渡している。
「あれがツチノコよ」
「…」
宮本教授がそう言うと同時に俺たち三人の五メートルほど先、一軒家並みの茶色に黒の縞をもつ寸胴のような蛇が姿を現した。目はなく、人を余裕で呑み込めるほどの口だけがあって淵には毛が生えている。うろこに蛇のような輝きはなく、少し乾燥しているようでどろだらけでもある。
それは啼くでもなく俺たちを見ている…と言うより様子見しているようだった。
「今がチャンスよ、己が拳を叩きこめ青年っ」
「嫌、無理でしょう」
目線を外せば…まぁ、目はないけど…ぱくっと食われるかもしれないので相手から目は放せない。
「うわーへたれだ」
「からかったって行きませんよ。ちっぽけなプライドなんて捨てて俺は全力で逃げる派ですからね」
「なっさけないわねー、六花、見せてあげなさい」
てっきり宮本教授が男気を(わしゃあ漢じゃけぇのぅ的な)見せてくれるものと期待していれば今度は妹の方に矛先が向けられる。
「オッケー任せてっ。Equip!」
『認証しました』
「変身っ」
どこからともなく吹雪がやってきてそれは真白さんを包み込む。
「クールに煌めく正義の味方!スガー只今参上っ」
瞬き一つで彼女は吹雪を纏うスガーへと変身していた。そしてすぐさまツチノコへと突撃していく。
「別にね、あの子…変身しなくてもそれなりに強いのよ」
「へぇ、そうなんですか」
「そうそう…」
「あ、咥えられましたよ」
「…丸のみされているわね」
「足ばたばたさせてますっ。助けなくていいんですか」
「わたし、あの子より弱いから」
宮本教授は首をすくめるだけだった。




