第十一話:ツチノコを捜しに行こう
第十一話
前期試験がある連中はその山を乗り越えて夏休みを手に入れる事が出来る。テストが少ない連中は授業も終わっており、夏休み中にテストを受けるような感覚らしい。
俺はテスト期間の前半にテストが集中している為、気付けば夏休みに入っていた。
そして、夏休みと言うだけの理由で俺は宮本教授に呼び出されていた。
「は?ツチノコ探しですか…」
「そーそー、ツチノコ」
見つけた人には二百万と言ういつの時代に書かれたのか定かではない紙を手にしていたりする。
「…二百万が目当てですか?」
「いや、受け継いだあたしとしてはちゃーんとサークル活動を続けようと思ってね。それにゼミ生でもあるし。妖怪探すのがお題目だったんでしょ?」
元は地方の(正確に羽津市の)妖怪を探し、地方とどういった結びつきかを調べるサークルだったはずだ。単なる妖怪捜索ではない。ツチノコはそもそもUMAのはずだ。それは他のサークルがやっている。確か今探しているのは雪男だった気がする。
「真白さんはどうしたんですか」
「いずれ来るでしょ」
それから二分後、真白さんが部屋にやってきた。
「くっそースガーをUMA扱いするとかあのサークル酷過ぎ」
これは面倒だ、私は知らないとばかりに椅子を回して背を向ける宮本教授。仕方がないので俺は口を開いた。
「…どうしたのさ」
「悪者がいたから成敗してたの。そうしたら『雪男だ!』とか言われてこの大学の連中に追いかけられたのっ」
「あ、ああ…そなの…ところで宮本教授、ツチノコがどこに出るかは目星がついてるんですか?」
愚痴っぽくなった真白さんに付き合うと碌な事がない。きっとこの人酒が入ったら更に面倒な人になるんだろうな。こんな時は話題を変えるのが一番だ。
「え、あー…そうね、そこら辺の山を探せば出るんじゃない?」
「超アバウトですね」
「ツチノコ?」
どうやら話を変えるのに成功したようでツチノコに食いついてくる。内心ほくそ笑みながら真白さんにツチノコの手配書を見せる。
「見つけたら二百万だって」
「二百万…」
「もし見つけて二百万手に入ったらどうするんですか?山分けですか」
「あたしも当然もらう権利あるよね?三人で探すなら見つけた人が百万、残り二人が五十万ずつが妥当かな」
一般人ならお金大好きのはずだ。俺だってお金がそれなりに好きである。しかし、宮本教授は違ったようでため息をついていた。
「あのねぇ…設備投資の為にお金がいるの。あのゴキブリの装置を再度作り直さなきゃいけないでしょ」
「…」
「…あーそうね」
焔ノ御神ノ末…現代科学が生み出した人造の神様である。実に面倒な事にこれはただ今俺の家に居座っている状況で機嫌を損ねれば町が消えてしまう程の火力を見せてくれるそうだ。
「一応宮本教授も手助けしてくれるんですね」
「あたりまえじゃないの。あんたらあたしのゼミ生なんだから」
ちなみに宮本教授は古代日本における迎賓館の存在を研究しているらしい。そういった講義は取った事がないのでいまいちわからない。
「それにあれが同じ町内に存在しているだけで体調が悪くなるのよね…」
「そっか、やっぱりあれが原因なんだ」
宮本教授、そして真白さんもだるそうにため息をついた。ついでに俺も最近だるく感じていた。
「圧倒的火力のストーブの前じゃかき氷は一瞬にして水にされるわ」
「……えーと、それはつまりお二人が水になってしまうと?」
「そ、そこまではならないと思うけどこのままだとまずいかも」
「ま、誰だって自分に利益がある…もしくは害をなくそうと思わない限り他人を助けたりしないわ」
そういって宮本教授は立ち上がり、部屋の片隅に置いてあった虫網を手に取った。
「時間が惜しい、だから三日以内に見つけるわよ。さぁ、返事は?」
「おー」
「おーっ」
これまで何人の男が挑み、そして諦めたであろう浪漫の塊…ツチノコ。それに挑戦しなくてはいけないのだ。全ては気焔さんの為に。




