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いつも一歩手前で 〜間一髪の不思議体験〜

私は昔から、危ない目にあいそうで、なぜか助かる。

それは偶然なのか、たまたまなのか――それとも、何かに守られているのか。

自分でも説明できない「間一髪」の出来事が、人生の中で何度もあった。


この物語は、その中でも特に印象に残っている出来事を少しずつ書き留めたものだ。

読んで、「こんなこと本当にあるの?」と思ってもらえたら嬉しい。

そして、もしかしたらあなたにも似たような経験があるかもしれない。


これは、偶然だったのだろうか。それとも、たまたまか。

その時はよくわからなかった。

けれど、その後いくつもの不思議な体験をしていくうちに――

あれも、そのひとつだったのだと気づくようになった。



学校の帰り道。

私はいつものように、漫画の本を開いたまま歩いていた。

読み始めると、周りの音がすべて消える。

鳥の声も、車の音も、人の話し声も――全部、遠くへ追いやられてしまう。


その日も、自分だけの世界にすっかり入り込んでいた。


気がつくと、踏切の中を歩いていた。

今なら歩行者側にも遮断機があるけれど、当時は車道側にしかなかった。

赤いライトや金属の棒に塞がれることもなく、私は線路に足を踏み入れていた。


その時、理由もなく、足が止まった。

ページをめくろうとしていた指が宙で止まり、顔がゆっくり上がっていく。


視界の先、巨大な影が迫ってくる。

耳を裂くような警笛。

次の瞬間、轟音と共に風が体を押しのけ、髪を乱した。

頬に当たる風は熱く、鉄と油の匂いが混じっていた。


ほんの一歩。

いや、半歩でも前に出ていたら、私は確実に巻き込まれていた。


周りの人が何かを叫んでいた気がする。

でも、耳には入らなかった。

私はただ、電車が通り過ぎるのを待ち、何事もなかったようにまた歩き出した。

そして、恐ろしさを隠すように漫画に顔をうずめ、家に帰った。


――なぜ、あの時、止まったのだろう。



似たようなことは、他にもあった。


ある日、止まっている貨物列車の下をくぐって向こう側に渡った。

その瞬間、背後で重い車輪が動き出した。

鉄がこすれ合う低い響きと、地面から伝わる振動。

振り返ると、列車はもうゆっくりと進み始めていた。

その光景を見ていた人に、恐ろしく怒鳴られた。

けれど私は、なぜか恐怖よりも「間に合った」という安堵だけを感じていた。



台風の日。

雨風がゴーゴーと唸り、車のボディを叩きつける。

ワイパーが全力で左右に揺れても、視界は白くかすむばかりだった。

耳には風と雨の音しかなく、自分のエンジン音すら聞こえない。

それでも私は家まで走り切った。


翌日、車を見て息をのんだ。

その姿は、今では細かく思い出せないが、とても走れる状態ではなかった。

牽引車で修理工場へ運ばれるのを見送りながら、

――もしあのまま走っていたら、と背筋が冷えた。



思えば、私は自分が気づかないうちに、何度も危険のすぐそばに立っていた。

それでも、なぜかいつも“その直前”で止まっている。


誰かに守られているのだろうか。

それとも、危険を避ける力があるのだろうか。


ある友達が言った。

「あなたは、世の中に危険があるなんて考えたことがないんじゃない? 自分にそれが降りかかると思ったことがないんでしょ」


もしかしたら、それが答えなのかもしれない。

危険を危険と思わないから、危険が私を素通りしていく。

反対に、「もしかして危ないかも」と思った瞬間、危険は足元に近づいてくる――そんな気がするのだ。


あとがき


書きながら、あらためて思った。

あの時あの場所で、ほんの数秒違っていたら――私はここにいなかったかもしれない。


人は「偶然」と呼ぶだろう。

でも私の中では、その偶然はあまりにも多すぎて、偶然とは思えなくなっている。


誰かがそっと背中を引いたのか、見えない糸が私の足を止めたのか。

その答えは、きっと一生わからない。

けれど、もし本当に守ってくれている何かがあるのなら、私は感謝しかない。

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