表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェポンスピリッツは未来に継げる!  作者: 古魚
相模灘最終決戦編
334/340

最期の希望

同日、22時20分、横須賀。


「瑞鶴、及び航空部隊。帰還しました」


 ビシッと敬礼を決め、小堀防衛大臣へとそう告げる。


「ああ、お疲れ、瑞鶴。電報は受け取った、航空部隊の出撃は、もう難しそうだな」

「……はい、有人艦載機群の機体もほとんどが損傷し、パイロット自体も半数は出撃不能です。AI操縦の機体も高練度に成長させたものはほとんど残っておらず、補給と多少の整備で出撃できるのは、私だけかと」


 小堀防衛大臣は、顎に手を当て、「うむぅ」と唸る。


「20分ほど前に、『大江戸』との接触が開始され、説得が始まった。それが上手く行けばいいんだが……行かなかった場合――」


 胸のあたりを、一瞬電撃が奔る。嫌な予感がする。

 私の嫌な予感は、大体当たる。


「イージス戦艦『やまと』より電報、交戦状態へと至る。です」

「じゃあ……」

「最悪の事態だな」


 私に続く言葉を、小堀防衛大臣が呟いた。

 あの化け物戦艦と、今世界中の艦艇で編制された連合砲戦艦隊が交戦を開始した。しかし、指揮官によれば、『大江戸』を破ることができる通常兵装は存在しないとのこと。


「指揮官……」


 何か、何か私にできることは……!


「あれが使えるのなら……13時間、いや、『やまと』と『伊403』がいるなら、9時間だ。9時間稼ぐ必要がある」

「通信! 大江戸が三原山ラインに到達するまでは!?」

「現状の速度を維持すれば、後7時間です!」

「間に合わない……しかし、いや……」


 何かあるみたいだ。『大江戸』に対抗できるような切り札が。


「それを、指揮官は知っているんですか?」

「ああ、存在は知っているだろう。しかし、使用できるとは伝えていない」


 指揮官なら、一つの希望さえあれば、それに向かって最善の策を講じてくれるはずだ。


「大臣、やりましょう。何か希望があるなら、それを準備すべきです」

「しかし、あれはまだ撃てると確定できたわけでは……」

「大臣! やる前に決めないでください! すべては、やって見なくちゃ分からないんです!」


 私は小堀防衛大臣に迫る。


「私が居ます! 幸運艦と呼ばれた私が、います! 絶対にその作戦を成功させて見せます! させる自信があります!」


 そんなものない。私は自分の幸運を呪ったことしかない。残され続け、目の前で大切な人を失い続ける。そんなもの、幸運だと思ったことはない。


 だが、今はその運を、この不確定を成功に導く武器としたい。


「……分かった。私は作戦の準備を下命する。君は、指揮官へと私が今から言うことをそのまま伝えてくれ」

「はっ!」




「2230を持って、武御雷作戦を用意する。『大和』『伊403』『やまと』を連れ、三浦半島へと撤退せよ。なお、武御雷作戦の用意は9時間を要し、作戦完遂を0730とする。なんとかしてその9時間を捻出せよ。出し惜しみはなしとし、現時点を持って、一時的に有馬勇儀を桜日軍元帥とし、全ての指揮権を委譲する。明日のために、全力を尽くしてくれ」


 俺の無線には、瑞鶴からそのような言葉が発せられる。


「指揮官。全兵力が、指揮官の指示を待ってる。最後の希望を繋ぐための作戦を、貴方に託す」


 作戦コード『武御雷』。それは、日本が研究を続けていたレーザー兵器の最終系。陽電子加速式粒子光線砲、即ち、荷電粒子砲のことを指す。小堀大臣は、それを使うことを決め、それを撃つ権限を俺に与えたのだ。


「……そうか。分かった」


 あれは、日本中の電力を使用し、一発だけ発射できるか否かの代物であり、かつ実用段階には至っておらず、ドイツから得たコンデンサー技術のおかげで、試製の一門がようやく完成したのだ。


 それでも、確かに撃てさえすれば、そして当たれば『大江戸』だって消し飛ばすことが出来るだろう。


「瑞鶴、無人の艦載機にありったけの爆装を施して、戦場に連れて来てくれ。他に動ける空母は居るか?」

「私が行こう」


 無線機に割って入って来た声の主は、エンタープライズだ。


「プライズ。行けるのか?」

「艦載機群はほぼ壊滅しているが、日本製の機体を積むことはできる」


 ……この際、出し惜しみはなしか。


「分かった、だがティアは置いていけ」

「了解したが、何故?」

「爆撃後、航空機は全て『大江戸』に突っ込ませる」


 俺は、自分でも信じられないことを言っている自覚はあった。隣に立っていた『長門』は凄い形相で俺に視線を向け、瑞鶴、プライズが息を飲むのを感じた。


「何も聞くな」

「「了解!」」


 今だけは、非情になる。全てを無視して、ただ明日にこの国を継げるためだけに命令を下す。それを分かってくれたのか、プライズと瑞鶴はそれだけ返して、無線を切った。


 次に無線を繋いだのは、『B52L』を配置した千葉太平洋基地と横須賀基地だ。


「千葉基地、横須賀基地へ通達。出撃可能な『B52L』全機発進を求める。今すぐだ」

「了解、千葉基地『B52L』13機出撃」

「了解、横須賀基地『B52L』9機出撃」


 次は各対艦ミサイルを搭載している艦艇。


「『やまと』を除く全艦艇に通達、航空編隊の攻撃開始とともに、持ち得る対艦ミサイルを全て『大江戸』へと発射せよ」


 そして『やまと』。


「『やまと』は、大型対艦ミサイルの全弾発射準備を、照準は『大江戸』の後方へ。発射タイミングは私が指示します。それと、『大和』と共に全速で三浦半島へと向かえ」

「何か、策があるんですね? 有馬さん」

「勿論です。一瞬だけ、『大江戸』を弱らせるチャンスがあります」

「了解です。『やまと』、発射準備に取り掛かります」


 必要な指示は出した、後はそれ以外の艦だ。


「全艦に命じる。これより行う作戦のため、全艦全力砲撃を続行。戦艦『大和』、イージス戦艦『やまと』を、たとえ自身が沈もうとも守り通せ!」


 これで用意は整った。


「指揮官、もしそれを命じるなら、貴方はここに居るべきでない。『大和』へと移乗するべきだ」

「だが、この中でどうやって……」

「私に乗っている『二式水戦』を使え。ひとまず空へ退避し、落ち着いたところで、大和に拾ってもらうといい」


 確かに、それなら可能ではあるが……。


「安心しろ。この長門、指揮官がいなくとも戦うことぐらい造作もない。それに、貴方が居るべきなのはやはり『大和』だ。いや、貴方は『大和』に居なくてはならない。兵器のカンがそう告げている」

「なんだそれ?」

「いいから、早く行くといい。有馬勇儀元帥殿」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ