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彼女と彼氏であるようでない。  作者: シャルロ
彼女と彼氏になりました?
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第十四話 初デート・下

 

「広いね、ここ」


「ついでに新しいな」


 商店街を後にした二人がいるのは、去年できたばかりの大型ショッピングモールだ。内装はとても綺麗で、多くの人で混雑している。親子連れが特に多いように思える。


「じゃあ、買い物付き合ってね」


 そう言うと、綾菜は颯太に寄りかかるようにして、腕を組んだ。綾菜の白く細い腕は少し温もりを感じる。

 颯太は突然の事に驚いた。綾菜の方を向くと上目遣いで微笑んでくる。ふと、颯太は心臓の高鳴りと全身に熱を帯びた感覚に気付いた。これまでにないほど。


「さぁ、行こう!」


「ちょ、ちょっと待て」


 颯太の有無を言わさず、そのまま店に向かおうとする綾菜。外から見れば完璧にカップルだ。


「古賀、こんな事して良いのか?」


「だって、私達は一応恋人同士なんだし、これくらいしなきゃね」


 照れているのか、綾菜の顔が赤らんでいるのが分かる。そんな一面を見て、かわいいと思ってしまう颯太。


「別に良いけどな……急にされると驚くからやめてくれ」


「ごめん、ごめん。次からは気をつけるよ」


 結局、二人は腕を組んだまま店へ向かう事になってしまった。

 まず、綾菜が見たいと言っていた洋服屋に向かう事になった。季節は夏なので、店頭にはワンピースやTシャツなどが並べられている。

 綾菜は腕を組むのをやめ、洋服に引き寄せられるかのように店内へ入っていった。颯太も綾菜を追いかける。


「ねぇ、これなんかどうかな?」


 綾菜が見せてきたのは黒色のTシャツだ。颯太には女子のファッションはよく分からないので、


「良いんじゃないか?」


 と言っておいた。

 綾菜は目に留まるものがある度に、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、忙しい。

 一店舗目は十五分ほどで見終わり、二店舗目に向かう事に。


「これとこれなんかどう?」


 次に綾菜はデニムパンツと、水色のふんわりフェミニンな雰囲気のトップスを見せてきた。

 颯太はよく似合っていると思い、


「良いんじゃないか?」


 と綾菜に言っておいた。

 綾菜の方を見るとが不機嫌そうな顔をしている。


「さっきから、『良いんじゃないか』しか

 言ってないけど、本当に思ってる?」


「もちろん。僕はそんなにボキャブラリーが豊富じゃないからな」


 と、颯太はなんとなく誤魔化しておいた。


「ふーん、そう」


 すると、綾菜が笑い出した。


「颯太って、曲がらないね」


「どういう事だ?」


「普段と全然変わらないなって」


「僕はずっとこのままだ」


 そんな会話をしながら二店舗目も見終わり、三店舗目へ足を運ぶ。

 この繰り返しを合計八回行ったところで、綾菜は満足したらしく、モール内にあるフードコートに行く事にした。

 颯太は携帯をポケットから取り出し、時間を確認すると午後四時半を示している。颯太と綾菜は約二時間モール内の洋服屋を回っていた事になる。

 綾菜は結局見るだけで、何も買っていない。


「本当に買わなくて良かったのか?」


「良いの。見るのが楽しいから」


 以前、明里と買い物に行った時も同じようなことを言っていたことを颯太は思い出す。

 颯太にはあまりよく分からないが、綾菜が楽しそうだったので、良いということにする。


「そういえば、買い物に付き合わせちゃってごめんね。疲れてない?」


「全然平気だ。妹がいつもこんな感じだからな」


 よく明里と一緒に買い物に行く時は、三時間程付き合わされたり、するので颯太は耐性がついている。明里との長い買い物が役立つとは颯太は微塵も思ってもいなかった。

 実際、颯太はは少し疲れているが明里の買い物よりは全然マシだ。


「少し休憩したら、僕の家に行くぞ」


「はーい」


 エスカレーターを使い、二人は二階に上がり休憩できる所を探す。一番近いのはフードコートらしく、そのままフードコートへ向かった。

 二人が到着すると、親子連れなどで賑わっており、席が空いていない。


「どうする? もう僕の家に行くか?」


「私は平気だし、颯太がいいならいいよ」


「じゃあ、家に行くとするか」


 そう言って、ショッピングモールの外に出て、近くのバス停まで歩く。ここから颯太の家まで行くのに、今の少し疲れた状態では大変なのでバスを使う事にした。

 颯太と綾菜はバス停の前に到着し、時刻表を確認する。次のバスは四時五十三分で、携帯電話を見ると、現在は四時五十一分を示している。


「ギリギリセーフだな」


「もう少しで来るところだったね」


 そうしていると、少し早くバスが到着した。二人は料金を払いバスに乗り込む。

 中に入ると人はあまりおらず、杖を持ったおじいさんや、三人組で話が盛り上がっているおばさま達がいるくらいだった。

 しっかりとクーラーが効いており、外とは別世界のように思える。


「一番後ろの席に行こうよ」


 綾菜がそう言ってきたので、颯太は一番後ろの長い席の端に詰めて座った。その隣に綾菜が颯太との間を詰めて座る。

 窓の外を見ると、少し傾いてきた眩しい日の光が、厚い積乱雲の間から射し込んでいる。


「今日は買い物付き合ってくれて、ありがとね。すごく楽しかった!」


「日頃と嘘のお礼だ」


 ゆらゆらとバスに揺られていると、颯太に少し眠気が襲ってきていた。ショッピングモールを忙しなく歩き回っていたからだろう。

 寝まいと奮闘していると、颯太の肩あたりに柔らかい感触が。何かと思い、その方向に目を向けると、綾菜の顔がすぐ近くに。

 よく見てみると綾菜は颯太に寄りかかって、目を閉じて、静かに寝息を立てている。


「まぁ、あれだけ歩き回ったら疲れるよな」


 駅前の商店街を見て、ショッピングモールで約二時間歩き回って、疲れないはずがない。

 そんな綾菜の寝顔を見ていると、可愛いと思えてしまい、なんだか本当の恋人なのではないかと、颯太は思ってしまった。

 これが現実ならと考えてしまうと、自然と颯太の心は悲しみに染まってしまう。この状況は嘘の塊なのだから。どっちつかずの颯太の気持ちには(もや)がかかっているようだった。現実と嘘が相見えるこの状況に颯太の気持ちは追いついていなかった。

 バスが大きく揺れ、その振動で綾菜が目を覚ます。


「……ん、あ、ごめん、寝ちゃってた?」


 綾菜は目を擦り、眠たそうにしている。


「ああ。まだ到着まで時間あるから、寝ててもいいぞ」


「じゃあ、お言葉に甘えて」


 そう言うと、また綾菜は颯太に寄りかかって寝てしまった。


「彼女と彼氏って、こういうことなんだろうな」


 バスの中で颯太は一言呟いた。

前回のお詫びとして二本投稿しました。

楽しんでいただければ幸いです。

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