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047:雪解け

 皇和暦2年(西暦2119年)1月13日。

 大日皇和帝国は十勝県・胆振県・天塩県との間に、協力関係を示す同盟を組んだ。

 その見返りに石狩県との戦後に3県は帝国に入る。

 正式に3県が帝国に入るのは先になるが、この同盟が確定した時点で事実上の併合である。

 十勝県の相馬知事は暫定左大臣、天塩県の花沢知事と胆振県の比石知事は参議を言い渡せられた。



「ただ同盟関係と言えども、指揮系統は1本化した方が迅速に動けて良いだろう。まだ帝国には兵務大臣がいない、そこで皇帝である俺が軍権を所有する。この決定に異論ある奴はいないか?」


『はは!!!』



 同盟関係にあるとは言えども事実的に、3県が帝国に配合されたのは周知の事実だ。

 変に指揮系統が数箇所もあったら、いざって時に戦いづらいと為臣陛下は言う。

 混乱を招かないように指揮系統を1本化する。

 そしてその権限を持つのは陛下自身である。

 3県を併合する事により、北海道のほとんどを大日皇和帝国が掌握する事になるだろう。

 しかし兵力は、まだまだ石狩県の方が上だ。



「向こうの兵力の方が圧倒的に上だろう。そこで雪が積もり身動きが互いに取れないうちに、どこを攻めるかを明確にしておこう。作戦の提案は全員でして貰いたいが、出し合った作戦をまとめるのは幸政がやれ」


「はは! 承知いたしました」


「相馬も左大臣として、戸谷と共に帝国内の政に関して運営していけ。必要とあれば俺も動く」


「は! 左大臣という重き役職に置いて頂き、なんと感謝をすれば良いか……戸谷宰相をお支えします!」



 まだ北海道地方には雪が積もりに積もっており、軍隊を動かすには無理がある。

 冬が終わる前に、どこを攻めるかの軍議を何度も行う。

 その軍議を取り仕切るのは兵務省の司令部で総司令官をやっている幸政だ。

 為臣陛下は自分の権限の少しを幸政に与える。

 わざわざ自分のところを通さずに、俊敏に動かす為に権限を与えたのだ。

 しかしやるべき事は戦だけでは無い。

 内政もやらなければいけないので、戸谷宰相を筆頭に暫定左大臣の相馬知事が3県の併合に向けて話し合う。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 雪解けを待って戦の準備をしているのは、帝国や三国たちだけでは無い。

 戦いの相手である石狩県も準備を着々と行なっている。

 しかし今の帝国にとって格上の石狩県とて、大国ゆえの大変さを噛み締めているところだ。



「健臣さま、どうやら雨竜郡と夕張郡の郡長たちが兵を出すのを渋っているらしく……」


「何故だ! 郡長ならば知事である俺の指示で、兵を出すのは至極当然の話だろ!」


「はは、それはごもっともなのですが。向こうにも向こうの言い分があるらしく……」


「言い分だと? ふざけた事を、そんなのはただの言い訳に過ぎないだろ!」



 国が大きく人がたくさん居れば、健臣知事の意見に合わない人間が少なくともいるだろう。

 今回は戦いとなっている県と接している雨竜郡と夕張郡の郡長が出兵を拒否した。

 自分の指示に従わない部下に健臣は怒りを露わにする。

 言い分があるみたいだが、それは言い分ではなく言い訳であると一蹴する。

 しかし理由を聞かなければ対応できない。

 健臣は溜息を吐いてから「それで理由は?」と聞く。



「郡長たちには2つの言い分があるらしく。1つは国境が面している自分たちに対するアガリが少ないと」


「なんだと!? 目先の利益しか見ていないのか、この馬鹿どもが! それで2つ目は?」


「こ 皇族で皇位継承権をお持ちになっている陛下と……戦うのは反対だと」



 2人の郡長は国境線を守るのに、必死になってボロボロになるまで戦っている。

 しかしこの働きに対してアガリが少ない。

 これでは戦っていてもマイナスになるだけで、一向に民が苦しんでいると言うのだ。

 そしてもう1つの理由は、今は正式な皇位についてはいないが大和帝国の皇族である為臣陛下と戦うのは、武士道に反するゆえという事だった。



「武士道に反するだと? それこそただの言い訳だ、今のアイツには皇位なんぞアリはしない! それなのに戦いたく無いと言っているのは、ただ権威に怯えているだけだ」


「はは、しかし郡長らの言葉も理解ができ無いわけではございません……」


「理解できぬわ! お前と話していても仕方がない、時間の無駄だ! 雨林を呼んで来い!」


「はは! 承知いたしました!」



 色々とストレスが溜まった健臣知事は、目の前の部下と喋っていても時間の無駄だと感じる。

 詳しい話をする為に副知事である《秋野 雨林(あきの うりん)》を直ぐに呼んで来いと指示を出す。

 部下はスッと頭を下げてから走って知事室を出る。

 このまま呼んで来るのが遅れたら、また叱りを受ける。

 部下は急いで雨林のところまで行って、健臣が呼んでいる事を伝えた。

 身なりを整えてから雨林は知事室を訪れた。



「雨林、馳せ参じました。健臣さま、ご用件は何でございましょうか?」


「ようやく来たか。雨竜郡と夕張郡が出兵を拒否した」


「それは……健臣さまに対する侮辱でございますな、どう致すおつもりですか?」


「どうするもこうするもあるか! 今からでも雨竜郡と夕張郡に行って、郡長どもを説得して来い!」



 雨林副知事はやって来たところで、深々と頭を下げて挨拶をしてから何用であるかと聞いた。

 健臣知事の口から雨竜郡と夕張郡が出兵を拒否し、困っているという事を聞く。

 少し考えるような表情を浮かべてから非礼だと言った。

 ならばどうするのかと健臣に問う。

 ここに来て怒りが再熱し、雨林に2つの群へと赴いて説得して来るように指示を出す。

 ピクッと眉を動かし、少し間を置いてから「それは」と前置きを置いて口を開く。



「あの者たちは頑固者ゆえ、私が説得に行ったところで応じるとは思えません」


「なんだ、お前も俺の指示を無視するというのか? 優秀だからと、この地位まで引き上げてやったのは誰だと思っているのだ! この戦いだけは絶対に負けられないんだ、為臣にだけは絶対……」


「分かりました。私にどこまでできるかは、分かりませんが尽力してみます」



 恐怖政治で石狩県をまとめていた健臣知事の催促を、真っ向から断るような雨竜郡と夕張郡を説得するのは無理であると雨林副知事は断った。

 しかし健臣は口答えするのかと拒否したのを一蹴。

 何より雨林が副知事の地位まで成り上がったのは、健臣が優秀がゆえに引き上げたからだ。

 だが、このタイミングで持ち出すのはズルい。

 雨林は小さく何度も頷きながら尽力すると言って、雨竜郡と夕張郡に説得に向かった。


 雨林副知事による説得は難航する。

 何度も雨林は雨竜郡と夕張郡の郡長のところに足を運んで、健臣知事の意向について話し合った。

 この話し合いは一向に前に進まない。

 そのうち2月、3月、そして4月を迎える。

 そうこうしているうちに季節は春に移り変わり、帝国・同盟軍は石狩県に向け侵攻を開始した。

 

 為臣陛下・相馬知事が率いる連合軍は、約1万4000人の大軍を率いて美瑛城に攻め込む。

 胆振県は、約1万1000人を率いて北広島に侵攻。

 天塩県は、約1200人を率いて幌加内に侵攻。

 本格的に石狩県への攻略に動き始めた。

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