033:北見侵攻
2118年9月7日。
為臣陛下が率いる大日皇和帝国軍は、北見県を討伐する為、軍を北に向けて進軍させた。
北見県の県庁所在地である北見城は、帝国と面しているのであるが、知事は北見城を捨てて北上した。
そして猿払城に籠城する。
為臣陛下たちは猿払城を目指し道中の城を落城させる。
「為臣陛下に牙を向いた人間たちだ! 戦う意思のある人間たちは 1人残らず、叩きのめしてしまえ!」
『うぉおおおお!!!!!』
為臣陛下たちは最初に北見城を攻めた。
普通ならば県庁所在地となっている城は、落とされないように、それなりに強固に作られている。
普通の守りだったら、落とすにしても何日もかかる。
しかし知事たちは北見城を捨てて逃げたので、ろくな兵士たちがおらず、たったの2日で落城した。
落ちた北見城に為臣陛下は入場する。
「お前たち、ご苦労だったな。まさか北見城を、たったの2日で落とすとは」
「はは! この程度の城を落とすなど、陛下の家臣である我らであれば造作もありません!」
県庁所在地となっている北見城を、こんなにも早く最も簡単に落とすなんて信じられない。
為臣陛下はそう思った。
だが戸谷宰相たちからすれば、こんな相手は雑魚も同然で落城させるのは造作もないと答えた。
その自信の表れに為臣陛下は「ふっ」と笑う。
「にしても太陽殿に、帝都の護衛を任せて良かったのだろうか?」
「さすがに猿払城まで太陽殿たちを連れていく兵糧は、今の我々にはありません……今回は彼女らに守備を任せ、猿払城を落とす事に集中しましょう」
北見攻略を為臣陛下や戸谷宰相が務める代わりに、帝都の守りは太陽たちのカムイリアンが引き受けてくれた。
猿払城までの兵糧が足りないのだ。
だから信用して帝都を任せる事にする。
もちろん為臣殿下も納得している事で、自分たちは自分たちの仕事をしようと為臣陛下は切り替えた。
「ん? 幸政はどうした?」
「幸政でしたら、この城の兵糧を確認しに行きました。ここで兵糧を補給して、さらに先に進むので どれだけあるのかを確認したいのでしょう」
「そうか、なら軍議は幸政が戻ってからにしよう」
この城にある兵糧を貰って、次の城に進む。
どれだけの兵糧があるのかと幸政総司令官は、どれだけの兵糧があって何日持つのかを確認する為に、一足先に兵糧を見に行ったのである。
軍議を開くにも軍総司令官がいなければ話にならない。
なので為臣陛下は、幸政総司令官が帰って来るまで休憩を家臣たちに促した。
そして1時間後くらいが経って、幸政総司令官が「遅れて申し訳ありません!」と走ってやって来た。
為臣陛下は「気にしなくて良いぞ」と働いて来た幸政総司令官を労うのである。
全員が揃ったところで軍議が始まる。
「じゃあ軍議を始めようか。それで次の目的の城は?」
「はい、海岸沿いにある紋別城を攻めます」
「そうか、紋別城か。ならその前に今からでも紋別城に、降伏を促す使者を送れ」
「殿下? それはどういう……」
戸谷宰相は為臣陛下に聞かれた、どこを攻めるのかという質問に紋別城と答えた。
紋別とは北海道地方のオホーツク海沿岸中央部に位置する流氷で有名な都市である。
そこをこれから攻めるのだと為臣陛下は理解した。
全てを鑑みた結果、為臣陛下は紋別城に降伏を促す使者を送るように指示をする。
どうして降伏の使者を送るのかと戸谷宰相は困惑。
「そういう事ですか」
「ん? 幸政、どういう事だ?」
幸政総司令官は何かに気がついたみたいだ。
まだ分かっていない戸谷宰相は、どういう事なのかと気がついている幸政総司令官に聞く。
ちょうど良いから、この場にいる人間に説明する。
「戦の鉄則というのは、まず戦わずして勝つ事です」
「戦わずして勝つ? どうやって戦わずして勝つんだ?」
「降伏を促したり、相手が勝てないという諦めを誘ったりする事が先決です。その上で戦わなければいけない時は、極力こちら側に有利な戦い方をする。そして何よりも敵を知り己をする、これが戦いの基本です!」
幸政総司令官が述べたように、戦いにおいての基本は戦わずして勝つ為の考え方である。
孫子の兵法曰く「戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり」という言葉があり、調略や心理戦に包囲などの要因で相手を戦わずして屈服させる。
これが最も重要であると語っている。
そして続いて敵の戦力や性格に地形、自分の軍の強みと弱みを理解する。
これが敵を知り己を知れば百戦危うからずである。
「そういう事か……さすがは陛下です! 戦いの真髄を、お知りになっているとは!」
「昔から孫子の兵法を見ていたからな。それにこんなところで兵を無駄にはできない」
「はは! ならば早速、紋別城に使者を送りましょう! 無抵抗で投降すれば、全員の命を助けるという事でいかがでしょうか?」
「あぁそれで構わない。こちら側に着きたいというのならば、断る理由など無いからな」
事の理由を知った戸谷宰相は、10歳なのによく知っていると為臣陛下に感服する。
昔から宮本武蔵の本や孫子の兵法を読んでいた事もあって、戦い方の基礎は知っていたのだ。
早速、為臣陛下が言ったように紋別城に使者を送る。
降伏したならば命を助けるという条件を付けて。
早馬で向かわせた使者は、3日後に綺麗な体で戻る。
北見城に戻るなり、為臣陛下の前に参上した。
スタッと流れるような礼をしてから使者は、今回の降伏勧告を伝えに行った事を話そうとするが、その前に「今日はお日柄もよく」と要らない文言を話し始める。
そんなものはいらないと為臣陛下に叱られた。
「も 申し訳ありませんでした! 端的にお伝えしますと紋別城は……無血開城を受け入れました!」
紋別城は戦っても勝ち目は無いと判断し、戦わず無血開城する事を決めた。
それを聞いた為臣陛下は立ち上がって「本当か!」と無血開城を喜ぶのである。
直ぐに為臣陛下は戸谷宰相と幸政総司令官を見た。
2人とも「うんうん」と同じく無駄な戦いをせず喜ぶ。
「戸谷、直ぐに移動するぞ! 長期戦になればなるほど、国財を多く使いすぎる。さっさと猿払城を落として、この戦いに終止を打つぞ!」
「はい! 戦うつもりでしたら もう少し時間がかかるでしょうが、戦わないと分かったら直ぐに移動できます!」
戦わない事が確定したならば、こんなところに居て時間を潰すわけにはいかない。
この時間も国の金を使っているのだ。
戦争というのは金を使う。
国の情勢に大きく関わりかねないので、この北見侵攻を早期決着をつける必要がある。
だから今から直ぐに出発するのだ。
戦うとなったら もっと準備が必要になるが、無血開城で紋別城に入城できるのならば直ぐに移動できる。
為臣陛下率いる帝国軍は北見城を出発し、4日かけて紋別城に進軍した。
4日後の昼過ぎに到着する。
しかしまだ無警戒で紋別城に入城するわけにはいかないので、キチンと武器を放棄しているのかを幸政総司令官たちが調査しに向かう。
もちろん為臣陛下の護衛は丈二が目を光らせている。
指一本も触れさせる事はさせない。
そして十分に調べ終わったところで、為臣陛下の周りをガチガチに護衛しながら入城する。




