032:我々も
是乃と伊万が座っていたところに戻り、座ったのを確認してから戸谷は次の武功者を呼ぶ。
その次の功労者というのが戸谷本人である。
太陽と並んで帝国軍の指揮を通り、実際に北見県との戦いに勝利した実績がある。
そして何よりも殿下を、ここまで連れて来て再起を図るところまで漕ぎ着けたのは戸谷のおかげだ。
「この功績を認め、戸谷には宰相の役職を与える!」
殿下は直々に戸谷を、この国の宰相に命じた。
つまり大日皇和帝国のNo.2である。
任された戸谷は全員に向かって頭を下げ、これからよろしく頼むと挨拶をした。
そして次は根室県との戦いでの功労者を発表する。
「根室県との戦いでの第一功労者を発表する……第一功労者は全軍を指揮し、大勝に導いた《佐々垣 幸政》!」
「は はい!」
まさか自分の名前が呼ばれるとは、幸政は思ってもいなかったのである。
驚きの声を出しながら立ち上がった。
そのまま緊張している足取りで手に取るように分かる。
何とか転ばずに殿下の前にやって来ると、ロボットの動きのように膝を着いて頭を下げた。
「幸政は根室県の代官でありながら、我々の要請に素直に応え降伏してくれた。そして帝国軍の勝利に大きく貢献してくれた」
「この功を労い幸政を、兵務省の総司令官に任命する」
「そ 総司令官ですか!?」
殿下は今回の戦いで大きな武功を挙げた幸政を、陸軍や海軍が入っている兵務省の総司令官に任命した。
降伏したばかりの自分を、軍の総司令に任命して貰えるなんて信じられないと頭を下げ「ありがたき幸せ!」と殿下に感謝を述べるのである。
敵だった幸政が、ここまで偉くなった。
ならば自分たちも実力と結果次第で、上に昇る事ができると期待感でザワザワする。
これも殿下の狙いだ。
敵だろうと自分の下について活躍すれば、どこまでも偉くなれると士気が高まる。
狙い通りで殿下は笑みを溢した。
そのまま論功行賞は進み、最後の最後で特別に2名の功労者に褒賞を与えると殿下は宣言した。
誰なのかとザワザワしている。
戸谷は「丈二、定智」と2人の名前を呼ぶ。
まさか自分たちが呼ばれるとは思っておらず「え!?」と言いながら立ち上がって殿下の前に行く。
「お前たち2人は、戸谷と同様に帝国建国に大きく貢献したと判断した。そこで丈二には、男爵の爵位と近衞団の団長を贈呈する」
「お 俺が男爵で近衞団!? あ ありがたき幸せ!」
丈二は正式に殿下の護衛として近衞団の団長に就任。
殿下は「これからも頼むぞ」と声をかけると、丈二は地面に頭が着くくらい下げる。
「次に定智だが、お前には海軍中将と子爵の地位を贈呈する。これからも海軍の中枢にいる人間として帝国に尽くしてくれ」
「はは! ありがたき幸せ!」
定智は港湾長をやっていた経験を生かし、海軍中将の役職を得る事に成功した。
これで正式に論功行賞が終了する。
最後に殿下は玉座から立ち上がると、玉座の間にいる家臣たちを見渡す。
「まだ北見との戦いが残っている、ここで気を抜かず帝国繁栄の為に尽力してくれ!」
『はは!!!』
まだ北見との決戦が残っている。
帝国繁栄の為に尽力して欲しいと、家臣たちに自分の気持ちを伝えた。
家臣たちは深々と頭を下げ「はは」と面を下げる。
この光景を見た殿下は、久しぶりに自分が皇族であるのを思い出して「以上!」と論功行賞を終了させた。
「軍議を開く、関係者を部屋に呼べ」
「は! 承知いたしました」
殿下は早速、北見県との最終決戦に向けての軍議を開くから関係者を部屋に呼べと伝える。
しっかりと戸谷宰相が頭を下げて返事をした。
他の誰よりも一足先に殿下は部屋に戻るべく、玉座を降りて玉座の間を出ていく。
近衞団である丈二は立ち上がって殿下の後ろに立つ。
「丈二、近衞団として今まで以上の活躍を期待するぞ」
「はい! お任せあれ!」
「あぁしっかりやれよ」
近衞団長に任命された丈二に、しっかりと仕事をしろと優しく微笑みながら声をかけた。
すると安心できる返事が返って来る。
不安は無さそうだと殿下は、スッと正面を向いて部屋に向かって歩いていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
近畿地方の京都府・大阪府・兵庫県を支配領域にしているのは、殿下の叔父である実清親王殿下である。
皇居が陥落されてから1ヶ月が経ったところで実清親王殿下は、ようやく為臣殿下が生きている事を知った。
「なに!? 為臣が生きていただと!?」
「はは! その身を釧路県に移し、そのまま釧路県で新たな大日皇和帝国を建国したとの事です!」
「そうか、為臣は生きておったか……良かったのぉ」
自分以外の皇族が生き残っていて、本当に良かったと実清親王殿下は心から思う。
安心し「ふぅ…」と息を吐いてから、部下の報告で引っかかったところを復唱する。
「国を作った!? それはどういう事だ!」
「は! 殿下は釧路県に お逃げになった後、その地で新たな帝国……大日皇和帝国を ご建国なされたのです」
「さすがは兄上の息子だ、こんなにも追い詰められた状況で新たな国を作るとは。そうと決まれば為臣のところに、こちら側の使者を送れ」
生きていた事に驚きを持っていかれたが、冷静になったところで国を作ったのかと驚く。
改めて説明をして欲しいと部下に言う。
できる限り分かりやすいように説明をすると、実清親王殿下は「さすがは前皇帝の息子」であると感服した。
まさかこんな期間で、生き残るだけではなく国を作るなんて想定外も想定外である。
そうと決まれば殿下のところに使者を送れと指示した。
すると「殿下! 殿下!」と家来が、叫びながら殿下の部屋に入って来る。
落ち着いて話していたのに「騒々しいな」と嫌悪感を表情に出しながら「どうした!」と聞く。
家来は息切れしながら「報告します!」と頭を下げた。
「広島県、松江県、岡山県が挙兵いたしました! そして連合軍が兵庫県に侵攻を!」
「なんだと!? 挙兵した上に侵攻して来ただと!?」
「は! その数は15万です!」
「くそっ! ここに来て中国地方が攻めて来るのか!」
春雷軍との戦いで出せる兵数65万人中の50万人を長野県に派遣していた。
残りの京都府の守護や治安維持を考えれば、殿下が出せるのは残り10万人と言ったところである。
ここに来て実清親王殿下のピンチだ。
「殿下、どういたしますか!」
「こんなところで負けるわけにはいかんのだ! 直ぐに10万を兵庫に派遣しろ!」
「は! 承知いたしました!」
実清親王殿下は、こんなところで討ち取られるわけにはいかないんだと動く。
兵庫県に向かわせられる限界の10万人を派遣する。
それでも中国地方の侍たちは、昔の気風が多く残っているところであり、かなりの気性であふ。
とてもじゃないが苦戦する事は必須だ。
次から次に問題が出て来るので、実清親王殿下が頭を抱える事態に陥るのである。
「こうなったら手段など選んでられん……高知県の長宗我部と福岡県の立花・大友に救援の要請をしろ! アイツらは中国地方の奴らと仲が悪かったはずだ!」
こうなったら負けるわけにはいかない。
実清親王殿下は、中国地方と仲の悪い高知県と福岡県に要請を出して援軍を出して貰おうとする。
それくらい切羽詰まっているのだ。




