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031:待ちに待った

 根室県を平定した殿下は、帝国を離れて根室県に長居をするわけにはいかない。

 水城の切腹が終わった翌日に根室県を後にする。

 5日かけ殿下たちは、大日皇和帝国の帝都にある釧路城に帰城したのである。

 待ちに待った殿下の帰還なので、戸谷は城を飛び出して殿下の前にやって来た。

 そのまま膝を地面に着いて深々と下げる。



「殿下っ! ご帰還を心よりお待ちしておりました、本当に本当にお待ちしておりました……そして根室県との戦いにおいて、圧勝した事を感服いたしました!」


「そっちこそ2時間ほどで、戦いが終わったと言うじゃないか。さすがは戸谷だ」


「おいおい、私たちの存在を忘れていないか?」



 戸谷は目をキラキラさせながら殿下の帰還を待っていたと、愛犬のように尻尾をフリフリしている。

 強いとされていた北見県を2時間で撃破した事を、殿下は戸谷の手柄であると褒めた。

 そのタイミングで太陽たちは笑いながら現れる。

 自分たちの事を忘れていないかと。

 殿下も「はははは」と笑いながら「もちろん忘れていないとも、カムイリアンには感謝している」と感謝する。



「まさか初陣で、こうも完勝するとはなぁ。貴殿もそう思うだろ、為臣殿」


「あぁこんなにも容易く勝てるとは思ってもいなかった。想定外の力も手に入れたのは大きいと思うが……何よりも北見県への不安が無かったのが大きい」


「つまりそれはどういう事かなぁ?」


「ふっ! わかっているくせに、それを言わせようとするなんて、太陽殿は意地悪だなぁ」



 太陽は自分が大きな手柄を取ったと、殿下に認めさせたかって意地悪な聞き方をする。

 もちろんこれは悪意があるわけじゃない。

 何なら親しみを込め、戯れるような意味で言っていて関係が近くなったと言えるだろう。

 2人で笑い合っているところに、戸谷が「さぁ殿下、中でお休みください」と促す。

 しかし殿下は「いや、ちょっと待て」と断る。

 どうしたのかと戸谷は首を傾げた。



「武功を挙げた者たちを、今すぐに玉座の間に集めろ。今から今回の戦いに関する論功行賞を行なう!」


「い 今からですか!? まだ北見県の攻略が終わっていませんが……」


「だから今やるんだ、北見県を一気に攻略する為に武功を褒め称える。そうすれば兵士たちの士気も上がるだろ」


「そ そういう事ですか! さすがは殿下です! 直ぐに集めます!」



 殿下は今から論功行賞を行なうと言った。

 普通は北見を攻略してからのはず。

 しかし殿下は今だからこそ、意味があるのだと戸谷に説明するのである。

 それに納得した戸谷は殿下に感服する。

 自分は今からやるという考えがなかったからであり、考えてみれば殿下が正しいと仕事しに走り出す。

 戸谷の後ろ姿を見た太陽は笑う。



「狂信者も良いところだな、為臣殿の大変そうだ」


「いや、戸谷が居なければ俺は死んでいた……これは謙遜とかじゃない。実際、俺は自害しようと思っていたしな」


「ふっ、そうか。さしずめ戸谷殿は、貴殿の救世主と言うべき存在かな?」


「そうだな、太陽殿のいう通りだ。さぁ貴殿らにも褒賞を渡すゆえ、玉座の間に移動しよう」



 2人は楽しそうに雑談しながら玉座の間に向かった。

 緊急招集なので、それなりに時間はかかったが武功を挙げたとされる人間たちが玉座の間に集結した。

 その上で戸谷の「陛下の御成である!」と宣言する。

 太陽たちカムイリアンも含め、玉座の間にいる人間たちは平伏した殿下が来るのを待つ。

 殿下は威厳を保つ為に、ゆっくりと歩く。

 そして玉座の前に到着したところで、スッと姿勢を皆んなの方に向ける。

 周囲を確認してからスッと優しく玉座に着席した。

 殿下から「面を上げよ」と顔を上げる事を許可し、家来たちはスッと顔を上げる。



「これより論功行賞を執り行う。武功と褒賞の読み上げは戸谷に任せる」



 殿下は全員が顔を上げたのを見てから、視線を戸谷の方に向けて司会進行は戸谷であると紹介した。

 戸谷はペコッと頭を下げてからゴホンッと咳払いする。

 シーンッとして全員が、自分の方を向いているのを確認してから戸谷は喋り始めた。



「これより武功の発表を行なうが、北見軍と根室軍の2つの戦いは評価するのに難儀である! その為、2つの戦いは別物として武功を挙げた者を発表する」



 2つの戦いで武功を挙げた人間の順位を決めたら、それはややこしくなる。

 その為、今回は北見軍と根室軍の戦いを別個にすると説明してから功労者を発表を始める。



「まずは北見県との戦いにおいて最も武功を挙げた、第一功労者を発表する……カムイリアン族、太陽族長っ!」


『おぉおおお!!!!!』



 北見県との戦いにおいて最も武功を挙げたのは、カムイリアン族の族長である太陽だった。

 これは誰も文句は無いだろう。

 太陽の名を呼ばれた瞬間、カムイリアン族の人間たちは歓声を上げて喜ぶのである。

 名を呼ばれた太陽は、歩いて殿下の前にやって来る。



「武功を挙げた太陽族長には褒美として、カムイリアン族を独立国家として認める! 並びに陸軍中将、伯爵の爵位を贈呈する。並びに、これより攻め入る北見県の領地の3分の1をカムイリアンに渡す!」



 太陽の褒賞はカムイリアンを国として認め、さらには陸軍において中将という地位に贈呈し、中将になる為に必要な伯爵という爵位に昇進させた。

 そしてカムイリアンに最も大きいのは、これから攻め入る北見県の領地の3分の1をカムイリアンに渡すのだ。

 ここまでの待遇を貰えるとは思っても居なかった。

 太陽は殿下の前で膝をついて頭を下げようとする。

 その瞬間、殿下が「ちょっと待て!」と止める。

 どうしたのかと全員の視線が殿下に集まり、太陽も殿下の顔をパッと見た。



「太陽殿には、もう1つ地位を与える。それは我ら朝廷を見張り、あらぬ方向に行った場合は討伐する権利を持つ役職……善をなし徳を積む〈善徳目代(ぜんとくもくだい)〉の長官の地位を与える!」


「ふっ……はは! ありがたき幸せ!」



 殿下は戸谷が発表した褒賞にプラスし、朝廷を監視し討伐する権利を持つ善徳目代という組織の長官に任命した。

 まさか本当に任せられるとは思っても居なかったので、太陽は思わず笑ってしまう。

 しかし断る理由もないので感謝をして受け取った。

 そのタイミングで拍手が起こるのである。



「続いて太陽族長の陸軍中将に伴い、カムイリアンの戦士長である《是乃》と副戦士長である《伊万》にも褒賞を与える! 2人とも前へ!」


『おぉおおお!!!!』



 次に呼ばれたのは目立った武功を挙げたわけでは無いのだが、太陽が陸軍の中将になったので2人も昇格する。

 2人は返事をしてから立ち上がった。

 状況を何となく理解している是乃は、スッと太陽のように殿下の前に向かって歩き始める。

 しかし状況が分かっていない伊万は、周りをキョロキョロしながら是乃の後ろを歩いて着いて行く。

 2人は殿下の前で膝をついて頭を下げた。



「2人には各自陸軍大佐と大尉に昇格して貰う。それに伴い、2人には男爵の爵位を贈呈する」


「また止めて悪いが、もう1つ2人に贈呈する!」



 またまた殿下は2人への褒賞に関し、自分の方から渡すモノがあると割って入った。

 何を貰えるのかと2人は殿下の顔を見た。



「是乃には雷道を、伊万には鬼塚の苗字を与える!」


『はははぁ!!!!』



 殿下は苗字を持っていない2人に、そのイメージから似合う苗字を贈呈した。

 苗字を皇帝から貰えるなんて名誉中の名誉である。

 是乃は理解しているので大きな返事をするが、よく分かっていない伊万は、とりあえず返事をした。

 次はいよいよアイツの番だ。

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