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028:道東の惨劇

 帝国軍・カムイリアン軍の連合軍の陣形は、最前線の左右翼に各900人ずつ配置した。

 その後ろに帝国兵を400人ずつ配置する。

 本陣には戸谷郡長を守る帝国兵200人、太陽を守るカムイリアン兵200人が守っている。



「本当に良いんですか? カムイリアン兵だけを、最前線に置いたとなると」


「一向に構わん! これで活躍すれば帝国からの褒賞は、それなりに高くなるのだろう?」


「そうですね、まだ領地が少ないので多額というわけにはいかないとおもいますが……まぁ納得して頂けるだけは払えると思いますよ」


「ならば安心して戦える! さぁ楽しい楽しい戦の時間と行こうではないか!」



 最前線には帝国兵ではなく、カムイリアン兵がズラッと並んでいる。

 さすがに自分たちの兵がいないのはダメではと思う。

 しかし太陽は働いた分だけ報酬が貰えるのならば、一向に構わないと男気を見せた。

 それなら任せても良いかと戸谷郡長は考える。


 太陽は拳と掌をパンッと合わせる。

 そして戦いを始めようかと、戸谷郡長に開戦を促すように声をかけた。

 戸谷郡長も了解したと開戦用の太鼓を持って来させる。

 そのまま太鼓を鳴らし開戦を知らせる。

 準備するように音を鳴らしただけで、まだ突撃しろという合図を出していない。

 この合図は太陽が出す。



「お前らぁ! 目の前にいるのは、我が盟友となった大日皇和帝国の領土に侵攻する侵略者どもだ! そんな馬鹿を許すわけにはいかねぇよなぁ!」


『うぉおおおお!!!!!』



 太陽は殿下が皇帝を務める大日皇和帝国を、盟友と大々的に宣言したのである。

 そしてそれだけではなく北見県を侵略者と言い切り、そんな侵略者を馬鹿とも罵った。

 士気は異様なまでに高まっている。

 近くにで見ている戸谷郡長は、あまりの光景に苦笑いして「敵じゃなくて良かったよ、全く」と溢した。



「目の前にいる侵略者どもを蹂躙しろ! 突撃だぁあああああ!!!!!」


『うぉおおおお!!!!!』



 太陽の突撃の合図に、左右に分かれているカムイリアン軍の900人のうち600人の歩兵が突撃する。

 それはそれは恐ろしい雄叫びを上げながらだ。

 本当に敵だったら、全てを投げ出して逃げるほどに恐ろしいと戸谷郡長は体が震える。

 北見軍もそう思われていたが、さすがに戦争経験のある北見軍は怖いからという理由では逃げ出さない。

 槍兵たちが戦闘で、突撃してくるカムイリアン兵を、ジッと迎え撃つのである。



「馬鹿みたいに突っ込んでくる土人を、串刺しにして一掃してしまえ!」


『おぉおおお!!!』



 槍兵を指揮する将は、向かってくるカムイリアン兵を待ち構えて串刺しにする指示を出す。

 向こうが持っているのは手作りの刀だ。

 そんな奴に負けるわけがないと、カムイリアンの人たちを土人だと馬鹿にするのである。

 戸谷郡長も、どこかで槍を捨てさせる作戦を出すはずだと思っていた。

 そうじゃないと本当に一撃で槍の前に倒れる事になる。

 どんな策を出すのかと戦場を見つめる。



「戸谷殿、我らの戦いをよく見ていると良い」


「わ 私の考えが読めるんですか?」


「まぁそれくらい私にだって分かる。でもな、我らカムイリアンは槍なんぞに負けるほど弱い鍛え方はしてない」



 戸谷郡長の考えを読んだかのように、自分たちの戦いを見せてやると宣言したのだ。

 槍なんかには負けないという。

 さすがに槍を構えているところに、刀を持った兵士が突っ込んでも負けるだろうと戸谷郡長は考える。

 しかし実際は、この考えと真逆だった。


 槍が構えられているところに、カムイリアンの先頭に立っている兵が突っ込む。

 そして案の定、胸に槍が刺さった。

 槍兵たちは「やっぱり馬鹿だ」と鼻で笑った。

 だが刺さっているはずのカムイリアン兵は、口から血を吐きながら「へぁ」と不気味に笑う。

 あまりの不気味さに槍兵たちは「なっ!?」と引く。



「こんなもんでカムイリアンが死ぬとでも? 舐めんじゃねぇぞ、この侵略者どもがぁ!」



 槍が胸に刺さりながらもカムイリアン兵は、グイグイと槍を掴んで後ろに押し返す。

 そしてしまいには、その兵士の方をジャンプ台にして後ろのカムイリアン兵たちが、北見軍の兵士たちの中に飛び込んでいくのである。

 勇敢と言っていいのだろうか。

 まさしく怪物という言葉が当てはまる。

 槍兵たちの背後を取ったカムイリアン兵は、ドンドン敵兵を斬り伏せていく。



「ま まさかあんなやり方が……」


「あんなやり方って、こんなのができるのは私たちだけ。普通の戦略で言えば、間違いなく却下される愚策だ」


「た 確かに私は絶対に指示しませんよ、こんな戦い方」


「でも、それができるのが私たちの強みだ。もっと見ていろ、為臣殿の国に足を踏み込んだ事を後悔させてやる」



 こんなやり方があるのかと、戦場を見つめている戸谷郡長は溢した。

 しかし太陽も理解している。

 こんなふざけたやり方が、他の人間たちにできるわけがないという事を。

 しかも自分の作戦を愚策とも呼んだ。

 だがそれができてしまうのが、自分たちの強さであると太陽は自慢げに語る。

 それだけではない。

 もっと凄いものを見せると、太陽は不敵に笑った。


 目の前に広がっている光景だけでも想像を絶するような戦いぶりなのに、ここからまだ凄い事が起きるのか。

 戸谷郡長は、どんな地獄かとブルブル震える。

 本当に敵じゃなく味方で良かったと心から思った。

 そしてそんな事を考えていると敵最前線は崩壊し、さらに歩兵の後ろからカムイリアンの騎馬隊が突撃して来る。

 戦場には、さらに多くの血が流れた。



「こ これはどうなっているんだ!? どうしてこんなにも……早く立て直せ!」


「し しかし! 前線が崩壊し、立て直すにも時間がかかってしまいそうです!」


「そんなごたくはいい! さっさと歩兵どもの尻を叩いて立て直させろ!」



 北見軍の指揮官たちは、こんなにもボロボロにやられるのはおかしいと現実が見れていない。

 さっさと隊を立て直すようにいうが、既に前線が崩壊しているので、立て直すもクソも無いのである。

 それでも負けるわけにはいかない。

 だから元々は戦わせるつもりでは無かった後方支援部隊を、早々に動かす事にした。



「後方支援の部隊を動かすのか。もうそんなところを動かしたところで……」


「崩壊した戦線は戻って来ない、この戦いは既に決着が着いているんだ。指揮官ならば、これ以上の傷を広げぬようにするのが鉄則……この軍には未来が無いな」



 戸谷郡長は後方支援の部隊を動かしたところで、もう戦いは決まっていると呆れている。

 ここまで崩壊している中で、まだ諦めていないのは指揮官がおかしいと太陽は語る。

 今は傷を広げない事が先決のはず。

 しかし北見軍の指揮官は、負けを認められず傷を広げようとしているのだ。

 そんな北見軍には未来が無いと太陽は蔑む。



「も もう無理だ、これ以上は全滅する。撤退……撤退だぁああああ!!!!!」



 北見軍を率いている北見知事は、もうこれ以上の戦いは不可能であると判断。

 急いで全軍に向かって撤退を指示した。

 ようやくかと言わんばかりに、北見兵は必死になって自分たちの国に撤退していく。



「追いかけろ! 背中を打って全員を皆殺しにしろ!」


「ちょっと待って下さい! 今は背を打つ必要はありません!」


「なに? どうしてだ? このまま相手を皆殺しにしたら良いだろ?」


「このまま深追いしたら、首都を離れる事になります。北見軍を落とすのは、兵を整えてからでも遅くありません」



 太陽は北見軍の背中を打とうとしたが、それを戸谷郡長が止めるように言った。

 どうしてなのかと聞く。

 深追いしすぎて他県に、首都を狙われたら直ぐに帰られないからである。

 今は帰還し、兵を整えようと言う。

 そう言われた太陽は、全軍に対し帰還命令を出した。

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