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020:背後の異変

 殿下は護衛の兵士を40人連れ、カムイリアンと同盟を結ぶ為に網走湖に向けて出立した。

 馬に乗っても3日はかかるので、それなりに長旅だ。

 しかし国を奪還する為には、絶対に引き下がるわけにはいかないので嫌だとは言ってられない。

 適度に休みながら進軍する。

 そして3日目の昼に入ったところで、殿下たちは荒廃しているものの土地が残っている女満別空港に到着した。



「今日はここで野営をして明日、改めてカムイリアンとの同盟に関する話し合いをしにいきましょう」


「そうだな」



 今から話し合いに行っても夜遅くになるので、今日は野営をして改めようと戸谷郡長は殿下に話す。

 それに殿下も納得して頷く。

 しかし納得した後に殿下は「アレには気がついてるんだよな?」と言葉を伏せながら戸谷郡長に何かを問うた。

 すると戸谷郡長は「はい」と頷いて答える。



「気配しか感じないから、断定はできないが……カムイリアンで間違い無いよな?」


「はい。断定こそできませんが十中八九、カムイリアンの監視役と見て間違いないでしょう」


「アレは放置で良いのか?」


「何もして来なければ、放置するしかありませんね。変に敵対するのは、愚策かと思います」



 殿下や戸谷郡長のような武士たちは、周囲の森から気配を感じ取っていた。

 十中八九、カムイリアンの偵察部隊だろう。

 しかしただ様子を見ているだけで、こちら側に攻撃を仕掛けようとかの意思は感じられない。

 だから放置で良いと戸谷郡長は伝える。

 ならば放置しておこうと殿下は、あえてスルーしておく選択肢をとったのである。


 夜になると殿下は、戸谷郡長を天幕に呼んで最終調整を話し合おうとする。

 部下に呼びにいかせている間、殿下は腕を組んで目を瞑り瞑想を行なっている。

 そして入り口の方からガサガサッという音が聞こえた。

 やっと来たのかと殿下は目を開けると、そこには戸谷郡長は立っていない。

 別の人間が立っていた。


 そこに立っていた人間は、樹皮の繊維で作った独特の刺繍が入っている羽織を着ている。

 殿下は直ぐに「カムイリアンか」と理解した。

 チラッと横目で刀が置いてあるところを確認する。

 勝負は一瞬だと思って、カムイリアンの人間が瞬きをした瞬間、一気に刀に向かって走り出す。

 殿下の動きを察知した人間も走り出した。

 殿下とは異なって、最短距離を走る。

 そして人間は殿下が刀に手を伸ばしたところで、殿下の横っ腹を蹴り飛ばすのである。



「クハッ!? は 速いな……」


「お前が、この軍隊の指揮官だと見た。どうだ、合っているか?」


「あぁ確かに俺が、この軍の指揮官だ……だが、それが分かったから何だ?」


「お前には俺について来て貰おう。さもなければ手荒な方法を使わせて貰う」


「手荒な方法だと? やれるものならやってみろ!」



 その動きの速さに殿下は驚いた、

 どうやら殿下を軍隊の指揮官であると判断し、ここまでやって来たと言うのだ。

 全てを理解した上で殿下は何用かと聞く。

 自分に着いて来いと言って、それでも断るというのならば手荒な方法で着いて行かせると脅してくる。

 殿下は「やれるものならやってみろ」と言い放った。



「そうか、できるなら手荒な真似はしたく無かったが。断られたなら仕方ない……やれ」


「やれ? 誰に言っ……」



 目の前にいる人間が、誰かに指示を出した。

 視線からして誰もいないはずの背後に言ったのだろう。

 誰に言ったのかと殿下は、後ろを振り返る。

 そこにはさっきまでは居なかったはずの大男が、仁王立ちしていたのである。

 いきなりの登場に殿下は反応する事もできず、男に気を失われてしまった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 長野県南部に流れる天竜川に沿って、南北に伸びる盆地である〈伊那谷〉でも反春雷軍と春雷軍の戦いは起こる。

 反春雷を率いる将は織田家の家臣《邨井 貞道(むらい さだみち)》と、明智家の家臣《妻城 徳之(つまき のりゆき)》の2人である。

 これに対し春雷軍の主力は、まだ齢18歳の少年だ。



「おらおら! もっと骨のある奴はおらぬのか! これでは佐竹さまに自慢できぬでは無いか!」



 彼の名は《間壁 氏照(まかべ うじてる)》大佐。

 この年齢で実力を認められ陸軍で大佐を任されているという、とてつもない逸材である。

 見た目も端正な顔をしており、一瞬女性かと見間違うくらい整っていて人気者だ。

 しかしあまりにも血の気が多い。

 若いからと思いたいが、まだ何千という兵を指揮するだけの指揮能力が備わっていない。

 そこで氏照大佐には指揮官が付けられている。

 その男は《佐竹 次信(さたけ つぐのぶ)》中将。

 苗字の通り佐竹 寿重陸軍大臣の血縁者であり、実の息子という最高の血筋である。



「こら、指揮官は俺だぞ! 誰が飛び出して敵に斬りかかれと指示を出した!」


「しかしぃ〜! こっちが黙ってても……」


「しかしもクソも無いわ! 指揮官の命令が聞けないのならば、お前を親父のところに戻しても良いんだぞ!」


「ちょ ちょっと待って下さい! それだけはお許しを! そんな事をしたら武功が挙げられないじゃないですか!」


「だから言ってるんだわ!」



 指揮官の無視は、明らかなる軍律違反。

 氏照大佐は寿重陸軍大臣に認められているので、まだ許されている。

 だがこれが氏照大佐以外ならば即刻、打首でもおかしく無い問題行為だ。

 これ以上の無断行為を許さない為、次信中将は問題行為を起こし続けるならば、後方に下げると言い放った。

 戦闘狂である氏照大佐には効く罰を選ぶ。

 やはりこの罰は本人も嫌らしい。

 ならば余計な事はするなと次信中将は、釘を刺して叱責するのである。

 氏照大佐は「はい……」と意気消沈した。



「無論、ずっと黙っていろと言っているわけじゃない。お前の力が必要な時が、この戦いでも必ず来る! その時に力を発揮しろと言っているんだ!」


「おぉさすがは次信中将っ! その時まで、この氏照、静かに力を貯めておきます!」


「うむ、そうしておけ!」


「は! よっしゃあああああ!!!!!」



 テンションが下がったところを、上手く持ち直した。

 こんなにも指揮官とは疲れるものかと、次信中将は頭を抱え「はぁ……」と深い溜息を吐くのだ。

 そんなところに「報告! 報告!」と早馬が来る。

 まだ激しい戦いになっていないのに、次信中将の体力は半分まで減っている。

 その為、早馬の兵士に「なんだ……?」と呟いた。



「邨井・妻城軍の第二陣が動き始めました!」


「そうか、向こうはもう動き出すか……ならば、こちらは左翼と右翼を動かせ。向こうに遅れをとるな、勢い付かせたら面倒だ」


「は! 承知いたしました!」



 ここに来て伊那谷の戦いにも動きがあった。

 次信中将は父親ほどの才覚はないものの、それなりに血を受け継いでいる。

 的確に相手の動きを読んで、動かすところを指示した。

 氏照大佐を動かすという事は、良くも悪くも敵や味方をグチャグチャにするということ。

 まだ戦いが始まったばかりで、そんな事を指示するわけにはいかないのだ。


 この信州の戦いは、諏訪郡の戦いと伊那谷の戦いと長野市の戦いの3箇所で行なわれている。

 信州の戦いでは織田・明智軍が春雷軍と衝突。

 諏訪郡の戦いでは織田・明智軍に加え皇弟親王殿下の連合軍が戦う。

 長野市の戦いでは上杉軍が春雷軍と対峙している。

 どこも激しい衝突を繰り広げる。

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