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転校生

 ある日、朝のホームルームで渡の担任のスタローンが転校生がこのクラスに入ると告げる。


 騒然とする教室。


 スタローンが合図すると、マッシュヘア×刈上げのイケメンが入ってくる。


 女子大歓喜。


 イケメンはチョークで黒板に野宮守と書く。


 野宮守には一〇人のボディーガードが付き従っていた。


 野宮守は唐突に『奇跡の星、地球』と題した講義を始める。


 すると一〇人のボディーガードは、教室の外と守を結ぶように列を成した。


 守は『奇跡の星、地球』の講義を進めながら、必要に応じて化石やゴム製の精巧なサンプルをリクエストする。


 一〇人のボディーガードはそのリクエストを受けて、バケツリレー方式で迅速に求められた物を守のもとまで運ぶのだった。


 四五億年前――原始太陽系円盤の内側で小惑星同士がぶつかり、地球が生まれる


 四〇億年前の隕石重爆撃期――生命の必須要素アミノ酸が宇宙から地球にもたらされる


 六億年前――コラーゲンという共通の体組織をもつエディアカラ生物群が登場する


 カンブリア紀――三葉虫、アノマロカリス


 三億六五〇〇万年前――オオサンショウウオに似た両生類ペデルペスが陸に上がる


 白亜紀――巨大恐竜


 六五〇〇億年前――巨大天体衝突の影響で恐竜が絶滅し、哺乳類繁栄の時代が到来する


 そして今がある。


 地球生命の歴史はこれまで、小惑星や彗星という地球外からの訪問者によって書き換えられてきた。その結果、今の地球環境がある。


 今の地球環境だからこそ、ホモサピエンスという生物種が生まれた。


 ホモサピエンスが生まれたからこそ、今の人類文明がある。


 このように、四五億年という歴史の全期間を通して、すべては途切れることなく続いてきた。


 そういう意味では、地球は昔も今も一貫して、宇宙そのものなのだ。


 野宮守は、『奇跡の星、地球』の講義をそのように締めくくった。




 野宮守は探検部の部室を見学させて欲しいと渡に言ってきた。


 入部を検討しているのか。それとも、何か別の理由があるのか。


 渡は身構えるも、一人でも多く部員を集めて廃部の危機を脱しなければならない今の状況では、見学者のえり好みなどしていられない。


 渡は守を部室に案内する。


 探検先で収集してきた石などに守は興味を示す。


 探検した各所で撮った記念写真にも、守は興味を示した。


「なるほどな」


 意味深なつぶやきをもらす。


「渡辺渡くん。キミの目には今何が見えている?」


「何が見えているって……今見えているのは、この部室と目の前にいるお前だよ」


「そうじゃない。今の自分の思い描く道の先にあるものはなにかという意味だ」


「俺の思い描く道の先にあるもの……」


 渡はつかの間視線を漂わせる。


「目先の目標は探検部を存続させること、将来の目標は飼い犬のハスキーと一緒に極地探検を行うことだな」


「そうか。それはずいぶんと素敵な夢だな」


 穏やかな語調で言ったあと、守はふいに横目で視線を突き刺してくる。


「その道の先に、はやぶささんの姿はあるのか」


「はやぶさ……? はやぶさは……はやぶさの姿はないな」


「ならもういっそ今すぐ離れたほうがいいのではないか?」


「は……? なんでだよ」


「彼女は国を代表する探査機なんだ。同時に国民のアイドルでもある。一人の人間がその価値を無駄に持て余している今の状況が、本来許されることではないくらい、キミとてわかっているだろう」


「それは……でもそれは、はやぶさが……」


「俺なら、はやぶささんを幸せにしつつ、同時に輝かせてあげられる」


「お前が?」


 凪いだ眼差しを渡に向けたまま、守は首肯する。


「俺はキミとは違って彼女の本質を理解しているし、同時に彼女にさせるべきこともよく理解しているからな」



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