探娘辞典 金星探査機あかつき
日本中が探査機はやぶさ帰還のニュースに涌いた二〇一〇年、探査機あかつきはまるではやぶさからバトンを受けとるかのように、はやぶさが地球へ帰還する予定日の三週間前に日本初の金星探査機として宇宙へ飛び立っていった。
はやぶさブームの余韻がまだ残っていた同年一二月、あかつきは「次のはやぶさ」としての期待を背負いながら金星に迫った。しかし、金星最接近の数分前に突如メインエンジンが破損するトラブルが起き、軌道投入は失敗に終わってしまう。この失敗は、関係者やはやぶさに次ぐ快挙を期待した国民を大いに落胆させた。
宇宙探査機の歴史上、最初の軌道投入に失敗した探査機がその失敗をリカバリーできた例は一度としてない。
そのような無常なデータがあったにもかかわらず、あかつきのオペレーションチームは最後まで諦めなかった。五年後、この粘りが奇跡を生むことになる。
二〇一五年一二月七日、あかつきは姿勢制御スラスターの逆噴射だけで金星の軌道に入るという、前代未聞の荒業を敢行。結果は成功で、管制室は歓喜に包まれた。
予定の一〇倍も長い遠回りな旅となったが、結果的にあかつきは、史上初めて軌道投入の再チャレンジに成功した探査機として、宇宙探査史にその名を刻むことになった。
というような前世の歴史を反映するように、ヒューマノイド探査機として蘇ったあかつきは、探査機はやぶさの不屈の執念に強い憧れを抱いている。
逆境に立ちむかう精神を受け継いだという意味で、あかつきは自分こそが探査機はやぶさの正当後継機であると主張する。
ヒューマノイド探査機として蘇ったはやぶさと何度か接するうち、自分も含めて世間が思い描いていたはやぶさ像と、実際のはやぶさの間に小さからぬズレがあることをあかつきは理解しはじめる。
はやぶさが宇宙を忌避していることに、他のどの探査機よりショックを受ける。
はやぶさがS級探査機にランク付けされたことに納得していない。格のつけ方への不信感から、ほぼすべての特S級探査機に対して反骨心を抱くようになる。
自分こそがはやぶさの正当な後継機であるとの思いから、はやぶさのことをお姉ちゃんとよぶ。はやぶさ2(さっちゃん)が世間からはやぶさの後継機とみなされている現実を受け入れられず、さっちゃんに対してなにかとつっかかる。
一人称は「あかちゃん」
語尾は「~でしゅ」
目の下のくまは苦労人の証。
エゴイストで野心家。
探査機ちゃんきっての熱情家気質。
「境遇後継者」なだけあって、はやぶさ同様、感情の起伏が激しい。




