第五百二十三話:ガールズトーク
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紬を交えた真也達一団は船へ戻ると当初の話し通りファス、トア、フクちゃんで『赫竜の宿願』と呼ばれるカルト教団の情報を掴みに行くこととなった。フクはいつも通りファスのローブの中へ潜んで周囲を警戒しているようだ。ファスとトアが並んで河の横を歩いていく。
並んで歩く二人の話題は自然と真也のことになっていた。
「つまり、旦那様の新技は順調ってことだなや?」
「えぇ、リザードマンの突進技に魔剣士ハルラ・ルームトロンより伝授された奥義は近々完成するでしょう。カナエやフクちゃんのアイデアが役に立ちました」
「どっちの技も凄いけんど、初めてハルラさんの奥義を旦那様から聞いた時は驚いたもんだべ。まさかあんな技巧者の爺さんが使う奥義があんな力技つーか、とんでも技とはなぁ。ある意味リザードマンより酷いだよ」
船旅の中で真也はパーティーで合わせ技に加え大森林で学んだ二種類の新技を稽古しており、ファスやトアは真也よりその技がどのようなものか説明を受けて習得に協力をしていた。トアの言葉にファスも同意する。
「理屈が単純ゆえに強力です。あの奥義が適切な距離とタイミングで放たれたならば、相手は躱すことも防ぐこともできないでしょう。ハルラさんの奥義は対人用、リザードマンのチャージは魔物に有用です」
「オラが言う事でもねぇけど、使われる相手に同情するだ」
(アノ技、ツヨイ、防御デキナイ)
ファスのローブからフクちゃんがちょこんと顔をだす。
「まだ詰めの段階ですが、私の目で見た改善点を伝えていますから今日も水上で練習していることでしょう」
「旦那様は本当にどこへ行くんだか……まっ、どこでもオラ達は付いて行くだけだべ」
三人が街の水路を遡るように北西へ行くと、それまでとは少し毛色の違う荷を乗せた船が増えていく。
ファスは逐一船の荷を調べて人攫いがいないから見ているようだ。
「目的の場所へ行く途中に他にも集会所として疑わしい場所があるようですし、私の目で確認はして見ましょう。透視では見逃している部分もあるかもしれません」
「まぁまぁ、ファス。そう肩に力入れねぇでのんびりいくだ。ほれっ」
そう言ってトアは船屋台からリンゴのような果実を買ってファスに投げる。
「……甘くて美味しいです」
「その眼は便利だけんど、オラはファスの凄い所は他にもいっぱいあると思っているだよ。鼻も耳も頭も使わねぇとダメだってのはイズツミに教えてもらったはずだべな」
「ふぅ……確かに少し力が入り過ぎですね。眼ばかりに頼るのは注意が必要ですね」
耳がしっかりと隠れるようにフードを被り直し、ファスはもう一口果実を齧ると残りはローブの中のフクちゃんに分ける。
「んじゃ行くだ」
「こうして貴女と歩くのは久しぶりですね。せっかくの機会ですから伝えておきましょう。トアにはいつも感謝しています」
河に掛けられたアーチ状の橋を渡りながら急にそんなことを言い始めたファスにトアは齧っていた果実を噴き出す。
「ぶふっ、急にどうしただ?」
「思いついたことを言っただけですが、何か変なことをいいましたか?」
トアから見るに、本当に思いついたことを言ったようだ。
「そりゃ、急にそんなこと言われたら驚くだ。それに感謝ってならオラの方だべ。オラみてぇなどこの犬の骨ともしれねぇ獣人を仲間にしてくれたことはいくら礼を言っても言い足りねぇだ」
「どこの犬の骨などと、私の大事な家族を悪し様に言わないでください。私もご主人様も貴女のことを心より尊敬しているのです。料理一つとっても本当に私達のことを考えて作ってくれますし、いつもパーティー全体を見てくれています。境遇にも負けずに気高くあります。胸も大変に大きいです」
「最後のはちょっと違うでねぇのけ……この話はこそばゆくて尻尾がムズムズするから止めるだ。ありがとだべ。オラもファスのこと大事な家族と思っているだよ」
目線を逸らしながらそういうトアに対してファスは満足げに頷く。
「そうですか。うん、やはりこういう話は大事ですね。私達はご主人様を中心とする家族なのです」
「……ファスのそういう素直さはオラも救われてるだよ」
(ミンナ、カゾク)
「その通りですフクちゃん。貴女も私の大事な家族で、初めてのお友達なのですよ」
「旦那様はどうなんだべ」
「ご主人様はご主人様です。私の愛する人です」
「ブレねぇだなぁ。まぁこれもオラ達奴隷を家族として迎えてくれた旦那様のせいだべ」
「えぇ、ご主人様のせいなのです」
トアが果実の最後のひとかけらを口に入れる。
二人が歩く道は徐々に広くなり、荷車の量や品物を運ぶ船も増えているようだ。
「この辺から貴族達の物流の拠点のようですね。服装も良いものを着ている人が多いです」
「みてぇだな。地図は覚えているだか」
「えぇ記憶しています。この先の道を進めば倉庫があるはずですが、その手前には事務所があるはずです。地図にはそこも『赫竜の宿願』の集会所の疑いがありました」
「通り過ぎるようにして、中を見てみるだ」
重い荷車が通れるように石畳で舗装された道を進み事務所の横を通り過ぎる際にファスの瞳が建物を見透かす。しばらく歩いて距離を置いてからトアが口を開く。
「どうだべ?」
「部屋の一つに結界が貼ってありますが、防音や人払いの部屋はこういった場所では珍しくないですね。特に誰かが捉えられているという感じでもないです。……いえ、少し待ってください」
ファスの【精霊眼】がきらりと輝く。その視線が一点を捉えた。
「事務所から出た荷の中に中身がわからない物があります。丁度、人が入るほどの大きさの木樽ですね。近づけば中身もわかると思います」
「調べた方がいいべな。樽の行先はわかるだか?」
「えぇ、ルミコがいると地図にある物流倉庫へ向かっているようです」
「都合がいいだな。当たりであることを祈るだ」
(レッツゴー)
こうして三人は留美子が調べていると言う貴族用の物流倉庫へ向かうのだった。
真也君の新技……楽しみです。
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